大前研一「ニュースの視点」Blog

KON708「世界10大リスク/中国情勢/日中関係~中国はまだ「大国」としての立ち振る舞いが板についていない」

2018年1月12日 世界10大リスク 中国情勢 日中関係

本文の内容
  • 世界10大リスク 2018年の首位は「中国の影響力拡大」
  • 中国情勢 新年メッセージで大国の責任果たす考え
  • 日中関係 与党、中国の「一帯一路」協力に前のめり

中国はまだ「大国」としての立ち振る舞いが板についていない


米調査会社ユーラシア・グループは2日、2018年の世界における「10大リスク」を発表しました。それによると1位は、「米国不在の間隙をついて中国が影響力を拡大すること」で、AIなど最新テクノロジー分野において中国が世界的に影響力を行使する機会が増えると予測。また2位は、「偶発的なアクシデント」で先進国の影響力が弱まっている中、北朝鮮やシリアなどで国際的な紛争が起きるリスクが高まっていると指摘しました。

このユーラシア・グループによる発表は毎年恒例のもので、昨年の上位は「我が道を行くアメリカ」「中国の過剰反応」「弱体化するメルケル」などでした。トランプ米大統領に対する中国の過剰反応はそれほどではありませんでしたが、他の2つは比較的予測しやすいもので、予測通りの結果だったと言えます。

今年の予測にある「偶発的なアクシデント」というのは、その通りですが、北朝鮮を含めてこうしたアクシデントは常に存在するものだと私は思います。かつてジョージ・W・ブッシュ元大統領は「悪の枢軸」として、北朝鮮・イラン・イラクを名指しで批判しましたが、イラクが収束すればシリアで同じような問題が発生しています。

対米国という意味では、メキシコも見逃せない状況です。国を挙げて全面的に米国と対立することはないでしょうが、選挙においては国民感情も候補者も「反米」の姿勢を見せていますし、不安定要素になっています。

今年の1位である「中国の影響力が拡大する」という予測については、衆目の一致するところでしょう。中国の南シナ海における進出経緯に如実に現れており、新植民地政策の様相を呈しています。

その中国においては、習近平国家主席が先月31日、国民に向けた新年のメッセージを発表し「責任ある大国として国連の権威と地位を断固として守り、果たすべき国際的な義務と責任を積極的に履行する」と述べました。国連重視の姿勢を示し、北朝鮮への対応で軍事力の行使をちらつかせるトランプ米大統領をけん制するねらいがあったとみられています。

私の中国に対する率直な感想は、「巨大な経済力と人口を抱えながらも、大国になりきれない国」というものです。大国としての立ち振る舞いがまだ板についていないという印象です。例えば、二酸化炭素の排出量問題についても、パリ条約は守ると宣言しているものの、未だに中国の二酸化炭素排出量は増加し、飛び抜けた数字になっています。

米国や日本はすでに対策を打っており、今後爆発的に二酸化炭素の排出量が伸びることはないでしょう。かつて60年代~70年代の日本は今の中国と同じような状況でしたが、投資をして、その状況を打開しました。

もちろん対策を講じるとなると、経済的には業界に大きな負担になりますが、「大国」として中国にはそれを実行することが求められます。現状では、住民が公害状況について告訴し、それを国が認めると、必要に応じて罰則を課す、あるいは工場の閉鎖などを指示しています。

中国では住民が公害に対して非常に敏感になっているので、住民主導で住民がガードマンの役割を果たすという形態になっています。その結果として、数十万人規模で逮捕者が出るなど、一定の効果が出ています。この動きは昨年1年間でかなり前進したと感じます。


中国の一帯一路は、新植民地政策そのもの


産経新聞は先月28日、「与党、中国の「一帯一路」協力に前のめり」と題する記事を掲載しました。
これは自民党の二階俊博幹事長が12月に日本の財界関係者を引き連れて中国を訪れ、習近平国家主席と面会したと紹介。5月に続く2回目の面会で、与党の幹事長としては異例の厚遇を受けたものですが、安倍総理は透明性の確保を協力の条件とするなど、慎重姿勢を崩しておらず、政府・与党間で温度差が生まれているとのことです。

私は二階幹事長が前のめりの姿勢を見せるのは、大いに問題だと思っています。
一帯一路の本質は新植民地主義です。鉄鋼などの自国で生産キャパシティに余りがあるものを、他国に買い取らせようとするものです。このとき、多少のお金が上乗せされることもあり、世界中で約100カ国が期待して、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に加盟しました。しかし、とても機能している状況とは言えません。

さらに中国は、その間隙を縫って、パキスタンやモルジブなど軍港として利用できる箇所に次々と楔を打っています。この点に特に私は問題を感じています。

したがって、日本が前のめりになって中国に同調するのは話が違います。二階幹事長が前のめりになると、中国にあらぬ期待を抱かせることになりますし、大きな失望を招く可能性も大いにあります。二階幹事長は勝手な行動を控えるべきだと私は思います。


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※この記事は1月7日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、世界10大リスクの話題を中心にお届けいたしました。

今年の1位である「中国の影響力が拡大する」という予測については、
中国の南シナ海における進出経緯に如実に現れており、
新植民地政策の様相を呈していると大前は記事中で指摘しています。

現代社会では、自然災害、テロなど、
起こる確率が低いと思われた想定外の事態が次々と起こっています。

このようなリスクを最小限に抑えるためには、
現在世界中で起こっていることや、今後起こりそうなことに注意を払い、
重要な変化を迅速に認識し、変化に適応することです。

もちろん、これは経営においても同じです。

事前に複数のシナリオを想定し、
どの状況にも耐えうるようにすることで、
想定外の出来事でも慌てずに意思決定を行うことができます。


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