大前研一「ニュースの視点」Blog

KON707「2017年の人気記事をピックアップ~ロシア情勢/英EU離脱/ブレグジット/トヨタ/自動車産業」

2018年1月9日 トヨタ ブレグジット ロシア情勢 自動車産業 英EU離脱

本文の内容
  • ロシア情勢 危険度増すプーチン大統領の「奇妙な戦争」
  • ブレグジット イギリスのEU離脱交渉
  • トヨタ 電動化で揺らぐ3万社のピラミッド
  • 自動車産業 EVや自動運転の時代に主役が変わる

国家に対するサイバー攻撃を仕掛けるロシア


※2017/11/24 KON701で解説した記事を一部抜粋し編集しています。

ロシアは、旧ソ連の時代からスパイや宣伝工作員を使って他国の政治を動かそうとしてきており、情報操作の技術を発達させています。

ロシアは軍事力だけでなく、フェイクニュース、サイバー戦争などを仕掛けています。

ロシアとドイツの例を見ても、これは明らかです。メルケル首相も対応し、プーチン大統領に警告を発しています。

知らないうちに潜り込んで情報を抜き出すスパイウェアや他者のデータベースやプログラムを意図的に操作したり、相手の国の選挙に干渉して自分たちに都合のよいリーダーが選ばれるように世論を操作したりすることもできます。

例えば、英国の欧州連合(EU)離脱を決めた昨年6月の国民投票で、ロシア政府とのつながりが疑われるツイッターの多数のアカウントが離脱を支持する投稿を繰り返していたと報じられています。また、英紙タイムズもロシア関連の15万以上のアカウントが自動投稿の仕組みを使い、離脱投票の呼びかけを行っていたと報じています。

ロシアとしてはEU弱体化を狙い、英国に離脱してもらう方が得策だと感じたのかも知れません。かなり本格的な情報操作が行われています。

ロシアトゥデイやスプートニクニュースなどを使いながら、対象国のシンクタンクに資金拠出し、クレムリンの意向に沿った見解を流布。また映像も大いに活用しつつ、SNSやフェイクニュース作成集団を使い、マルチメディアでクレムリンを利する情報を浸透させ、自分たちに有利な政治議論が起こるように仕向けていると言われています。

米大統領選挙においても暗躍したように、ロシアは相手の情報に入り込んで操作するのが非常にうまいと思います。

日本の対ロシア感情は必ずしも好意的ではありませんから、日本に対する情報操作はそれほど上手く機能していないようですが、欧米ではかなり成功していると言えるでしょう。


メイ首相は、自分の認識間違いに気づき、やり直せ


※KON668(17/4/7)、KON679(17/6/23)、KON701(17/11/24)で解説した記事を一部抜粋し編集しています。

2016年6月23日にイギリスがEU離脱、ブレグジットを選択した国民投票から1年が経過しました。

離脱の手順についてはEUの基本条約であるリスボン条約の50条に規定されていますが、2017年3月29日にメイ首相はEUのドナルド・トゥスク議長にブレグジットを正式通告。

ここから2年のうちに離脱交渉がまとまれば円満離脱、交渉が難航して脱退協定が締結できなければ、離脱通告から2年でEU法が適用されなくなり、自動的にイギリスはEUから切り離されます。

メイ政権は一度崩壊して、もう一度国民投票をやり直すべきでしょう。再度国民投票を実施すれば、EU離脱に反対の国民が過半数以上いるということが判明するのではないかと思います。その結果をもって、EUも胸を撫で下ろすというシナリオを私は予想します。

そもそも、英国民はEUの離脱について正確な情報を知らされないまま投票してしまった、というのが実情です。「EUに帰属していることで、難民が来る」「その結果、自分たちの職が奪われている」というような「デメリット」ばかりを伝えられていました。結局のところ、現在の英国は完全雇用に近い状況であり、こうした情報も事実ではありませんでした。

移民問題を取り上げていますが、これもメイ首相の認識間違いです。欧州の若者の失業率を見ると、スペインやイタリアは20%近くの高い水準にありますが、英国はEU内で低い部類なのです。「移民が仕事を奪ったために失業率が高くなっている、ゆえにブレグジットが必要だ」というのは政治のレトリックであり、正しい認識ではありません。

客観的に見て、メイ首相がいう「ハード・ブレグジット」はまず実現不可能です。もし、EUから離脱するにしても、移民問題だけは条件付きで認めてもらいつつ、他の貿易などの条件は現状のままでなければ、交渉が成立することはないと思います。

EU離脱に伴い発生する莫大な手切れ金のことや、多数の外資系企業が、英国がEU離脱するなら国外へ出ていくということなど、EU離脱に伴うマイナス情報を知らされないまま投票した人がほとんどだと思います。


トヨタは全方位ではなく迷走している/急速なEV化は日本の自動車産業の裾野を破壊する


※KON686(2017/8/11)、KON692(2017/9/22)で解説した記事を一部抜粋し編集しています。

トヨタ自動車とマツダは資本提携を正式に発表しました。電気自動車(EV)の共同開発や米国内で新工場の建設を今後検討するとのことで、自動車技術や排ガス規制など競争環境が大きな転換点を迎える中、トヨタは全方位の提携で生き残りを図る考えです。

私は今、トヨタは迷走していると感じています。ハイブリッド車が成功したので、現状は悪くありませんが、将来に懸念を感じます。電気自動車の開発で遅れを取り、自動運転、水素自動車の分野では、さらに遅れています。テスラが新モデルを発売するなど、電気自動車市場で躍進し、すでにこの分野では勝負あったという状況です。では、将来の水素自動車はどうするのか?未来を考えなくてはいけません。

今さら電気自動車で、マツダと提携して共同開発では遅すぎます。トヨタはハイブリッド車が上手く行き過ぎて、電気自動車の開発が遅れたことが今になって影響が出ています。全方位戦略と言えば耳あたりは良いですが、私に言わせれば「方向感覚」を失っていると思います。

今後のトヨタにとって大きな課題、考えるべきことは大きく3つあります。1つは「電気自動車」について、どう考えるか。もう1つは「シェアリング・アイドル」で、自分で持たない市場が大きくなると、自動車販売台数は3分の1程度になると予想されます。この需要の減退について、どう考えるか。そして最後は「自動運転」で、レベル4の自動運転が実現すると、同じく自動車の数は激減すると思います。スマホで予約して自動運転の車が来てくれる、という世界になるからです。これをどう考えるか。

さらに言えば、電気自動車になると使用する部品の数も大きく減ります。モーターと電池のシンプルな仕組みで動くEVは、極端に言うと、10分の1程度になり、3000点の部品で済むため、コストや組み立て工数は激減します。この部品需要の激減に対して、トヨタを頂点とした3万社はどう対処すべきか。トヨタはどう責任を取るつもりなのか。

また、中国政府がガソリン車やディーゼル車の製造・販売禁止の検討を始めたことが分かりました。フランスと英国が2040年までに禁止を表明したことに追随し、導入時期の検討に入ったものです。EVを中心とする新エネルギー車に自動車産業の軸足を移し、環境問題などに対応する考えです。

中国の自動車産業は今でも2500万台規模ですが、仮にこれが実現すれば中国の電気自動車は世界最大規模になるでしょう。カリフォルニア州と中国は、EVのみを許可するとも言われていますが、中国はフランスと同じようにプラグインハイブリッド車も認めるのではないかと私は見ています。

EV化の波は、2017年に急速にトレンドが形成されました。日本も対応を誤ると、大変な事態を迎えることになると思います。ただ厄介なのは、EV化対策に成功し、上手にシフト出来た場合にも、日本が世界に誇る部品産業が大打撃を受けるという課題があります。EV化は数十年かけてやるくらいで考えないと、日本にとっては自動車産業の裾野の部分が大きく壊されるリスクがあると私は感じています。


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※この記事は昨年のクリックアンケートで反響が大きかった号をピックアップし編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、2017年の人気記事をお届けいたしました。

今回ピックアップした記事以外でも、
世界のニュースでは、「アメリカ第一主義」の姿勢を強調する
トランプ米大統領の就任やトランプ政策の話題、
5年ごとに開かれる共産党大会で、2期目に入った習近平体制
に関する解説が人気記事でした。

また、国内の注目ニュースでは、
「働き方改革」「人手不足」の話題、
「豊洲市場移転問題」「衆院選」や「希望の党」
の話題が人気記事となりました。

大前は、1日500本、1週間3500本のニュースをチェックし、
国内外のメディアを通じて常に新しい情報や知識をインプットしながら、
いま世界で何が起きているのかを分析しています。

業績の好調な企業は何をやっているのか?
優れた経営者というのはどのように意思決定し、
その人たちはどんな特徴を持っているのか?など、
自分なりに考えたり推測したりすることで、
情報感性や読み筋を鍛えることができます。


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