大前研一「ニュースの視点」Blog

KON702「東芝/三菱航空機/三菱マテリアル/日本ペイントHD ~塗料メーカーとして世界トップレベルを目指す日本ペイント」

2017年12月1日 三菱マテリアル 三菱航空機 日本ペイントHD 東芝

本文の内容
  • 東芝 約6000億円の資本増強を決議
  • 三菱航空機 MRJ、7年前の痛恨
  • 三菱マテリアル 子会社3社で品質データ改ざん発覚
  • 日本ペイントHD 米アクサルタに買収提案

40年間「東芝ブランド」使用許諾は、致命的な失態


経営再建中の東芝は、先月19日、約6000億円の資本増強を実施すると発表しました。海外の投資ファンドなど60社を対象に第三者割当増資を行うもので、旧村上ファンド出身者が設立した「エフィッシモ・キャピタル・マネジメント」が11.34%を保有し、筆頭株主になる見通しです。

旧村上ファンドと表現されていますが、今でも村上氏も大きく影響しており、村上氏の娘が運営しています。

そのファンドが東芝の筆頭株主としてトップに踊り出てくることになるのか、その理由の1つには、このファンドが最近ゴルフ関連企業絡みで潤沢なキャッシュを手に入れ、資金があるということです。

また東芝の再建にあたり非常に懸念しているのが、中国ハイセンスに対して映像関連機器における東芝ブランド使用権を許諾期間40年間として付与したことです。レグザ(REGZA)ブランドのみなら理解できますが、なぜ東芝ブランドを40年という長期間使用許諾を与えることにしたのか、信じられない気持ちです。

今後東芝が復活を遂げるときが来ても、東芝(TOSHIBA)ブランドを全然系統の違う企業が使い続けているという状況を認めなければいけません。米国におけるシャープブランドを美的集団に売却してしまったのと同様、将来痛い目をみる可能性が高いでしょう。

IBMはパソコン事業の譲渡にあたり、「IBM」ブランドの使用許諾は5年に設定し、その後はレノボ(lenovo)ブランドを使用させるという形をとりました。これが通常の対応だと思います。なぜ40年という長期間を設定したのか、未だに信じられません。


三菱マテリアル子会社の不正が、三菱グループ全体に影響を与える怖さ


日経新聞は、先月22日「初のキャンセル濃厚 MRJ、7年前の痛恨」と題する記事を掲載しました。これまでに計450機を積み重ねてきたMRJの受注が初めて減少する可能性が濃厚とのことです。

7年間にあれだけ延期を繰り返せば、このような事態になるのもやむを得ないでしょう。経産省としては全面的にバックアップしてきたので、体面上はまずいと思いますが、それも致仕方ないという事態です。個人的にはMRJが日の目を見るのかどうかさえ、疑わしい状況だと感じています。

三菱には、さらに逆風が吹いています。三菱マテリアルは先月23日、三菱電線工業、三菱伸銅、三菱アルミニウムなど子会社の3社で検査データの改ざんなどの不正があったと発表しました。不正に出荷した顧客は258社以上にのぼると見られ、国内の素材業界の品質管理が改めて問われそうとのことです。

三菱マテリアルの不正そのものは、それほど驚くべきことではありません。しかしこのニュースを伝えている海外の報道を見ると、今後の影響が懸念されます。というのは、海外のメディアでは「Mitsubishi subsidiaries faked data」というタイトルで報じているからです。

すなわち、三菱マテリアル、及びその子会社の話ではなく、三菱自動車も含め三菱全体の不正として認識されるような報道になっているのです。これはかなり、インパクトが大きいと思います。

かつて東芝機械ココム違反事件があったとき、米国で東芝のラジオを議員がハンマーで破壊するという事態を招きました。東芝と(問題を起こした)東芝機械は、随分前に別れた会社であり、別々に上場している「全く別の会社」だったにも関わらず、東芝はその悪影響を受けました。

ほとんど縁もゆかりもなく、株の持ち合い比率も低いのに、社名に同じ名前を冠するというのは、世界的には非常に珍しいことです。通常は、全く違う社名にします。ところが、日本企業はこの点に甘く、今回の事件も三菱全体に影響してしまう可能性があります。

国内で事業を展開するだけなら、「三菱」という名称を冠するのは良いですし、それほど問題もないでしょうが、世界に展開する際には会社名の付け方は、もっと慎重に大事に考えるべきでしょう。三菱からすれば孫会社でも何でもない会社の不正について、世界規模で悪影響を受けてしまうというのは、馬鹿馬鹿しい話です。


塗料メーカーとして世界トップレベルを目指す日本ペイント


ロイター通信は先月21日、日本ペイントホールディングスが米塗料大手アクサルタ・コーティング・システムズに全額現金による買収を提案したと報じました。アクサルタの時価総額は82億ドル(約9200億円)で、日本ペイントは提案が合意に至るかは不透明としています。

日本ペイントは、取締役を務めているゴー・ハップジン氏によって、アジアにおけるポジションを確立することに成功しました。ゴー・ハップジン氏は日本の大学出身で、日本語も非常に堪能な人物です。

おかげで日本ペイントはアジアでは強くなれましたが、まだ米国では弱いという課題を抱えています。世界の塗料会社の売上高を見ると、米国のPPG、オランダのアクゾ・ノーベル、そして米国シャーウィンが日本ペイントよりも上位にいます。世界レベルで見ると日本ペイントも、低迷しているという状況です。

今回9200億円もの大金を使うのは、アクサルタ・コーティングを買収することで、せめてシャーウィンを上回るくらいの規模なりたい、ということでしょう。ただ、シャーウィンも日本ペイントに次ぐ規模であるバルスパーの買収を決めているので、3位と4位のポジションはさらに入れ替わるかも知れません。いずれにしても、買収が成立すれば確固たる世界トップ4の位置は確実だと思います。

関西ペイントの方が国内では強かったのですが、ゴー・ハップジン氏のおかげで世界的には日本ペイントが上回り、今回もさらに上を目指して大きくなろうとしています。

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※この記事は11月26日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、注目企業の話題を中心にお届けいたしました。

塗料業界では合従連衡が相次ぎ、
世界大手によるM&A(合併・買収)が加速しています。

記事中、大前が指摘しているように、
海外市場に進出するにあたって、M&Aは有効な手立てとなり、
その地域で必要となる顧客基盤・事業基盤を持つ企業を買収することで、
海外事業の強化をすることができます。

しかし、その一方で、巨額の資金調達が必要となったり、
これまで買収した企業の買収額と純資産の差額である
「のれん」も積み上がることとなります。

とりあえずM&Aをしようという考え方ではなく、
M&Aのためのノウハウを蓄積したり、
統合後にシナジーを生むための経営力や実行力を
鍛えていく必要があります。


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