大前研一「ニュースの視点」Blog

KON700「米ブロードコム/米スプリント/韓国サムスン電子 ~クロスボーダーの合併を成功させる重要な要因とは?」

2017年11月18日 米スプリント 米ブロードコム 韓国サムスン電子

本文の内容
  • 米ブロードコム 米クアルコムの買収を検討
  • 米スプリント アルティスUSAとの提携を発表
  • 韓国サムスン電子 「リチウム空気電池」開発へ

ブロードコムのホック・タンCEOの豪腕ぶりは健在


米国の複数のメディアが報じたところによると、米半導体大手ブロードコムが同業の米クアルコムの買収を検討していることがわかりました。東芝メモリの買収にも名乗りを上げたブロードコムのホック・タンCEOは積極的に買収を仕掛けることで知られており、クアルコムへの逆風を察し、再び動いたと見られています。

ブロードコムのホック・タンCEOは非常にアグレッシブな人物として知られています。アバゴ・テクノロジーのCEOだった2015年、アバゴよりも大きなブロードコムを370億ドル(約4兆6000億円)という半導体業界で過去最大の金額で買収したのは、
記憶に新しいところです。

そして、今回はさらに大きな米クアルコムを飲み込もうというのですから、豪腕ぶりは健在です。もし実現すれば、半導体業界のトップ3に躍り出ることになります。トランプ大統領と会談したホック・タンCEOは、トランプ大統領の意向に沿うように本社をシンガポールから米国に移す方針を伝えたと言われています。この巨大な買収は、米国を含め規制当局から独禁法絡みで調査を受けることは必須でしょう。その規制をかいくぐるために先手を打って、トランプ大統領とディールを成立させたという形だと思います。


クロスボーダーの合併を成功させる重要な要因とは?


米スプリントは5日、米CATV大手アルティスUSAとインフラ事業で提携すると発表しました。アルティスがスプリントの回線を借り、米国で携帯電話サービスを提供するということで、合わせてソフトバンクはスプリント株を買い増す方針を明らかにしました。

これはTモバイルとの合併が破綻してしまったことの照れ隠し、化粧直し程度の施策でしかないと私は感じます。アルティスを買収するわけでもなく単なる提携で、スプリント株の買い増しといっても数%程度です。

以前から私は、ソフトバンクとドイツテレコムが合併するなら、50対50で株式を保有し合うのではなく、お互いに48対48ほど保有して、数%を有識者の集まり・賢人と言えるような第三者に保有してもらう形を提案しています。

これは日本とドイツという国を超えたクロスボーダーの合併を成立させるために、重要なことだからです。例えば、世界最大級の石油会社であるロイヤル・ダッチ・シェルは、英国とオランダの石油持株会社でした(2005年からは単一の事業法人に変更)。

この仕組みが、2つの国の間で喧嘩もせずに、世界トップレベルの石油会社を経営できている1つの大きな要因だと私は思います。ユニリーバも、英国とオランダの合併企業ですが似たような形態をとっています。

Tモバイルとスプリントが合併し、日本とドイツのクロスボーダーを実現しようとするなら、中立的な立場の米国人などを入れるなど、ロイヤル・ダッチ・シェルやユニリーバの事例を参考にするべきだと思います。


十数年先を見据え、サムスンがリチウム電池の開発着手


日経新聞によると、韓国サムスン電子は現行製品の2世代先となる「リチウム空気電池」の開発に着手したことがわかりました。これは、1回のフル充電で走行可能な距離を現行のリチウムイオン電池の2倍近くに増やすもので、トヨタ自動車が2020年前半の実用化を目指す全固体電池の先の世代で世界標準を狙う考えです。

現在のリチウムイオン電池には、電解質の液体があり、これが様々な問題を引き起こしています。トヨタが開発している全固体電池には、液体がありません。密度が高くなり、問題も発生しにくくなります。

今回、サムスン電子が開発着手を発表した「リチウム空気電池」は、さらに軽量化・小型化が可能なものです。実用化は10数年先になると見込まれていますが、実現すれば現在のEVが抱える問題の多くが解消できます。サムスンは、10年以上先を見据えて、取り組みを開始したということだと思います。

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※この記事は11月12日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、注目企業の話題を中心にお届けいたしました。

アルティスUSAとの提携を発表した米スプリント。

Tモバイルとスプリントが合併し、
日本とドイツのクロスボーダーを実現しようとするなら、
ロイヤル・ダッチ・シェルやユニリーバの事例を
参考にするべきだと大前は指摘しています。

昨今、どの日本企業にとっても、
M&Aは事業成長のための一つの選択肢として検討すべきテーマです。

M&Aというと、大企業の経営戦略というイメージがありますが、
市場が先細りする時代において、中小企業にとっても、
M&Aは重要な成長戦略のひとつとなります。

国内外のM&Aの成功事例を参考に、
いかに自社にノウハウを積み重ねていくかが
重要なポイントとなります。


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