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KON698「経営者調査/三越伊勢丹HD/エイチ・ツー・オー・リテイリング/米IBM ~5年後に不安を覚える経営者。座して死を待つ企業が多い日本の実態」

2017年11月3日 エイチ・ツー・オー・リテイリング 三越伊勢丹HD 米IBM 経営者調査

本文の内容
  • 経営者調査 国内企業の7割超が今後5年の見通しに懸念
  • 三越伊勢丹HD 三越伊勢丹フードサービス売却へ
  • エイチ・ツー・オー・リテイリング そごう神戸店で示す百貨店の未来図
  • 米IBM 「ワトソン」無料提供を開始

5年後に不安を覚える経営者。座して死を待つ企業が多い日本の実態


日本能率協会が先月18日まとめた企業経営課題に関する調査で、国内企業の7割超が現在の主要事業の5年後の見通しがつかないと考えていることが分かりました。ITの急速な進展など、経営環境の変化に危機感を持つ経営者が多い実態が示されました。

調査結果を見ると、3年なら何とかなると思う人とそうではない人の割合が同じ位です。5年になると、このまま通用すると思う人の割合はわずか15%です。そして、10年になるとほとんどの経営者が、今の事業では見通しがつかないと感じています。

今の世の中で起こっている大きな変革を考えると、経営者はその実態をよく理解していると言えると思います。問題なのは、現状を理解した上で、対応できるように勉強しているのか?ということでしょう。おそらく「座して死を待つ」という企業が大半です。

若い人にとってはそのような企業にいること自体、不安を感じるはずです。その不安を払拭するために、「自分にやらせてくれ」という態度で積極的に動ければ良いのですが、残念ながら日本を見ていると、そうはなっていません。


クイーンズ伊勢丹を手放すのは、三越伊勢丹に経営力がない証拠


日経新聞が先月22日報じたところによると、三越伊勢丹ホールディングスは子会社で高級スーパー「クイーンズ伊勢丹」を展開する三越伊勢丹フードサービスの株式の大半を、三菱グループ系の投資ファンドである丸の内キャピタルに売却する方針を固めたことがわかりました。三越伊勢丹フードサービスは16年3月期から債務超過に陥っており、第三者に売却することで本体の財務負担を軽減する考えです。

クイーンズ伊勢丹は、成城石井とほぼ同じ業態で、やや規模が大きいお店です。私はかつてエブリデイドットコムの経営に携わっていた頃、クイーンズ伊勢丹と提携していました。生鮮食品を取り扱っていたので、クイーンズ伊勢丹から持ってきて、
それを販売する流れを作っていました。商品的には申し分がないものを持っているので、三越伊勢丹にクイーンズ伊勢丹を経営する総合的な力が不足していた、ということでしょう。その上、丸の内キャピタルに売却するというのは、さらにみっともない話だと私は思います。

丸の内キャピタルは、ローソンに出資をして経営再建に成功したと言われていますが、当時の状況からすれば、セブンイレブンという良い先行事例があり、新浪氏という経営者がいたことが大きかったと思います。

丸の内キャピタルに再建の手腕があったとは私は感じません。そのローソンの成功からも時間が経過し、今丸の内キャピタルにクイーンズ伊勢丹を再建させる力があるとは、なおのこと思えません。

三越伊勢丹は赤字で事業撤退をするというのが恥ずかしいので、少しだけ資本を残しつつ経験のある丸の内キャピタルに売却するという、体裁を整えるためのシナリオを作ったのだと思います。非常にみっともない話だと私は感じます。


阪急うめだ本店の成功要因。阪急沿線、梅田と神戸を抑える利点


日経新聞は先月20日、「そごう神戸店で示す百貨店の未来図」と題する記事を掲載しました。百貨店の阪急、阪神を傘下に持つエイチ・ツー・オーリテイリングが1日、セブン&アイ・ホールディングスから「そごう神戸店」の経営を引き継ぎました。訪日外国人客の利用増加などを追い風に、阪急うめだ本店が好調なことを踏まえ、そごう神戸店も今後数年で「来て楽しむ百貨店」への建て替えを視野に入れるとしています。

阪急うめだ本店は建て替えによって、イベント型、ショールーム型とも言える百貨店に変身し、それが成功を収めている大きな要因になっています。エルメスの職人をフランスから呼んできて、作業しているところを見せるようにするなど、「見て楽しめる」空間を上手く演出しています。

今回、そごう神戸店の経営を引き継いだことで、梅田と神戸を抑えることになります。これは面白いかもしれません。阪急沿線も高齢化が進んでいます。その端にあるのが梅田と神戸です。坂道が多く、店舗に出ていくのも避けたいという人がたくさんいます。そういう人たちに外商をからめながら、両端から攻めていくというのは上手くいくかもしれません。今後の展開を見守っていきたいと思います。


追い込まれるIBM。ワトソンを無料提供の次の展開が鍵


米IBMは11月から主力製品である人工知能(AI)「ワトソン」の無料提供を開始すると発表しました。
「会話」「翻訳」「文章を基にした性格分析」など6つの基本機能を無料で提供するものです。これによりこれまでの大企業などだけでなく、中小企業はもちろん個人として活動するソフト開発者にまで利用者の裾野を広げることで、新たなサービスの開発を促す考えです。

IBMとしては、競合が無料サービスを展開しているので、やむを得ない施策だと思います。
全体としての売上も利益も減少傾向で、何か手を打たなければいけないという状況です。事業領域別の売上・利益を見ると、
労働集約型のコンサルティング関連事業の利益率が低い一方で、クラウド領域は利益率が高く、ワトソンを要するコグニティブ領域の利益率はさらに高くなっています。

IBMとしては戦略的にこの領域を拡大して行かなくてはならない、ということでしょう。そこで無料サービスを展開する競争相手に対抗するために、IBMもフリーミアム戦略で入り口を大きく広げる狙いです。これにより、ある程度のボリューム増加は見込めると思いますが、問題は次の展開です。無料サービスから有料サービスに転換するための仕掛けをうまく機能させないと、無料でサービスを提供して終わってしまいます。無料で使い始めた人を、どれだけ高額のサービスにつなげていけるかが課題です。

上手く立ち回らないと、グーグルのような広告モデル(別の収入源)を持っている企業に寝首を掻かれる可能性は大きいと思います。その点では慎重に進める必要がありますが、IBMとしては、そのようなリスクを承知の上で、無料にせざるを得ない状況に追い込まれているというのが実情でしょう。

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※この記事は10月22日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、注目企業や経営者課題の話題を中心にお届けいたしました。

企業経営課題調査で、ITの急速な進展など、
経営環境の変化に危機感を持つ経営者が
多い実態が示されました。

それに対して大前は、経営者はよく実態を理解しているが、
問題なのは、現状を理解した上で、
対応できるように勉強しているのか?と指摘しています。

経営トップは常にアンテナを高くして、
自社や業界がどれだけの危機にさらされているのかを
正確に知覚し、正しい経営判断につなげていく必要があります。

そうすることで、環境変化の予兆を早く感じることができ、
いざその時が来た際に迅速に行動に移すことができます。


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