- 本文の内容
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- 朝鮮半島情勢 韓国をリスクにさらさない
- 米トランプ大統領 北朝鮮、イランなどを「ならず者国家」と批判
- 北朝鮮核開発問題 新たな経済制裁を発表
米国が恐れているのは、韓国に駐留する米軍への打撃
米国のマティス国防長官は18日、北朝鮮を巡る危機対応について、韓国を大きなリスクにさらさない方法での軍事行動の選択肢もあるとの考えを示しました。また朝鮮半島に核兵器を再配備する案について、韓国側と協議したことも明らかにしましたが、具体的な検討項目については言及しませんでした。
韓国をリスクにさらさないといっても、昔から北朝鮮は、ミサイル攻撃でソウルを火の海にできると公言していますし、確かに技術的には可能なのです。
そして、その被害は甚大です。
もちろんその場合、韓国の報復により、次の瞬間には北朝鮮も火の海になっているでしょうから、必然的に全面戦争に突入します。第3次世界大戦の可能性すらあるかもしれません。
米国本土への北朝鮮からの遠距離ミサイルについていえば、実はそれほど被害は大きくありません。それでもなお、米マティス国防長官が韓国を含めた危機対応について発言をしたのは、米国内の世論への対応の意味が大きいと私は見ています。
ソウルにミサイルが撃ち込まれれば、駐留している米軍も被害を受けますから、他人事として片付けることはできません。
一般的に、北朝鮮の危機対応においてソウルをリスクにさらさない方法などないと言われてきました。あえてそれをひっくり返すような発言をせざるを得ない状況なのでしょう。
北朝鮮と一触即発の状況。米軍は大々的な戦争を避けたい考え
トランプ米大統領は19日、国連総会で北朝鮮やイラン、ベネズエラなどを「ならず者国家」と呼び、対決姿勢を鮮明にしました。また、弾道ミサイル発射を繰り返す金正恩委員長を「ロケットマン」と呼び「自殺行為をしている」と批判。
「米国と同盟国を守ることを迫られれば、北朝鮮を完全に破壊する以外の選択はない」と強調しました。
かつてジョージ・Wブッシュ元大統領(息子)が、北朝鮮、イラン、イラクを悪の枢軸と批判したのを思い出させます。今回トランプ大統領はベネズエラまで含め、「ならず者国家」と批判しています。
そして、トランプ大統領は北朝鮮を完全に破壊すると発言しました。そもそも北朝鮮の金正恩委員長は体制の完全崩壊を恐れて、せめて自分と身内だけでも守るための保障の手立てとして水爆やICBMを利用してきました。しかし、もし今トランプ大統領が言うように、米軍が完全に北朝鮮を破壊する行動に出たら、北朝鮮としては手も足も出ないでしょう。
それゆえ、金正恩委員長自ら、直接声明を出して猛烈に反発しています。一触即発という状況で、いつ軍事行動が開始されてもおかしくないと思います。
トランプ大統領は「口だけ」だとも指摘されていますが、有事の際、実際どこまで行動力を発揮するのか読めない部分もあります。ただ、軍事関連のことについてはマティス国防長官が仕切っていますから、トランプ大統領とは言え、何でも好き勝手にできるわけでありませんので暴走しすぎることはないでしょう。
もし軍事行動に出るとしても、おそらく大々的な戦争は避ける方向で動くと思います。個人的に金正恩委員長を狙うような、ピンポイント爆撃などが現実的なところでしょう。最近、米軍が爆撃機を北朝鮮のすぐ近くまで飛ばしているのは、「金正恩をピンポイントで狙うこともできるのだ」という布石になっていると私は感じています。
国連の場では隠していた中国の本音とは?
トランプ米大統領は21日、安倍首相、韓国文在寅大統領とニューヨークで会談し、「致死的兵器を開発する北朝鮮の資金源を絶つ」と述べ、北朝鮮と取引する海外企業・銀行や個人に新たな経済制裁を科すと発表しました。また、「中国の中央銀行が他の銀行に対し、北朝鮮とのビジネスを直ちに止めるよう伝えた」とも述べ、中国の対応を称賛しました。
国連で決議された制裁はもう少し緩やかでしたが、今回のトランプ大統領が発表したものは米国独自の制裁です。中国とも話し合いをしていて、実は中国が8月ごろから同じような制裁を開始していたことが判明しました。
中国としては、自国内にいる制裁対象となる企業や個人に対して、先んじて自分たちが手を打っていたということです。これは中国全体として米国の銀行が使えなくなるのを避けるためです。
世界の基軸通貨は米ドルですから、米国の銀行を利用する必要があります。万一、米国から制裁を受けて、全体に影響が及んでしまうと、中国としても非常に困ってしまいます。その事態を避けるために、国連の決議以上に厳しい制裁を個別に始めていたということでしょう。
トランプ大統領は中国を賞賛していますが、私には言わせれば意外に中国もずるいところがあると思います。国連の場には米国を嫌っている国も多いですから、厳しい制裁には反対の態度を示しておきながら、裏では米国からの制裁を避けるために先駆けて動いていたということです。ロシアも中国も、おそらく北朝鮮以上に米国からの制裁は絶対に避けたいと思っているでしょう。
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※この記事は9月24日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は、朝鮮半島情勢の話題を中心にお届けいたしました。
北朝鮮ミサイル問題に対する緊張感が日々高まり、
各国の次の動きに注目が集まっています。
緊急事態こそ、正しい意思決定が求められてきます。
意思決定を行うにあたっては、正しく問題を認識し、
問題を解決するための具体的な行動案を設計し、
その効果や影響を評価し選択します。
このように、影響の連鎖の探求やリスク許容限界の設定などを
行ったうえで、意思決定を行っていきます。
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