大前研一「ニュースの視点」Blog

KON689「中国ファーウェイ/中国ネット市場/米スプリント/ローソン/小売提携 ~世界トップ10に名を連ねる中国企業の実力は本物」

2017年9月1日 ローソン 中国ネット市場 中国ファーウェイ 小売提携 米スプリント

本文の内容
  • 中国ファーウェイ 2018年初にアメリカでスマホ販売開始
  • 中国ネット市場 止まらぬ中国ネット2強
  • 米スプリント 一人負けスプリント、Tモバイルと「5G再編」の現実味
  • ローソン ローソン成長てこ入れ不可欠
  • 小売提携 資本業務提携を発表

世界トップ10に名を連ねる中国企業の実力は本物


フォーブスは7日、ニュースメディアの報道として中国のファーウェイが米国のAT&Tとの販売契約を固め、2018年初頭に米国でスマートフォンの販売を開始すると発表しました。ファーウェイの世界シェアは約10%に達していますが、現状売上の大半は中国と欧州で、提携が実現すれば、サムスンとアップルの2強体制を揺るがすことになります。

ファーウェイの経営者が中国共産党、軍との関係性を疑われていたため、長い間米国に受け入れてもらうことができませんでした。スリーコムを買収しようとしたこともありましたが、今回はAT&Tと提携し、AT&Tに米国内で販売してもらう形です。AT&Tがファーウェイの携帯電話を見て、その質の高さから商品として受け入れることを許諾したと言われています。

今後のファーウェイの米国市場での展開は注目したいところです。ファーウェイを含め、中国企業の強さが目立つようになってきています。

日経新聞は先月19日、「止まらぬ中国ネット2強」と題する記事を掲載しました。年初来、株価はアリババ集団が85%上昇、テンセントが74%上昇し、時価総額はそろって4000億ドル(約44兆円)を超えたと紹介。中国政府が事実上、ネット市場から外国企業を締め出す中、両社は守られた市場で膨大な利用者を取り込んでおり、買収や出資で素早くサービスを増やして
収益を拡大する戦略に陰りは見られないとしています。

世界トップ10に匹敵するのは、アリババだけだと思っていたら、ゲーム事業を中心にしたテンセントも頭角を現し始めました。両社は株価も上昇し、投資も順調です。テンセントは米テスラ株を約17.8億ドル購入し、同社の5%の株を保有しています。アリババはEコマースとして東南アジア最大のLAZADA(ラザダ)に約10億ドル投資しています。

上場企業の時価総額ランキングでも、アリババとテンセントがトップ10に食い込んでいます。10年前は日本企業として唯一、トヨタが名を連ねていましたが、今トップ10入りしている日本企業はありません。かつても中国企業がトップ10入りしたことがありましたが、その時は国営企業でした。アリババもテンセントも純粋なICT企業であり、両社が競いやって成長してきました。一昔前の中国企業とは全く状況が違います。


スプリントは黒字転換しても、いまだにソフトバンクにとっての重荷


日経新聞は先月17日、「一人負けスプリント Tモバイルと「5G再編」の現実味」と題する記事を掲載しました。

米国の携帯電話事業者の2017年第2四半期決算が出そろい、スプリントが3年ぶりの黒字を計上したものの、新規獲得数は前年同期比の約10分の1に減少したと紹介。一方、業界では次世代モバイルサービス「5G」の整備競争を念頭に、衛星放送との提携・買収も加速しており、こうした背景からスプリントの経営統合の相手としてTモバイルUSが候補として上がっているとのことです。

5Gはものすごくお金がかかりますが、一度プラットフォームが出来上がってしまうと、携帯やスマホでサクサク映画を観られるようになるので、非常に魅力的です。5Gが実現すると、通話で稼ぐのではなく、5Gというプラットフォームの上で動かすことができるプログラム・コンテンツで稼ぐことが主流になります。

それゆえに、ベライゾンはアメリカンオンラインやヤフーを買収し、AT&TはディレクTV、タイムワーナーを買収したのです。ベライゾンもAT&Tも、順調に勢力を拡大している状況です。

つまり、5Gの導入により投資がいっそう大変になります。新しい帯域に対応する必要があるので、免許の獲得も必要です。そして5Gを生かせるコンテンツがないと意味がありません。ちょっとしたコンテンツであれば、今の携帯・スマホでも十分ですから、5Gだから動かせるコンテンツが必要です。スプリントがその投資を行うのか?スプリントは経営改善の結果、黒字にはなりましたが、大きな課題が残っていると言えます。

ソフトバンクの孫正義社長はコンテンツを獲得するため、ケーブルテレビと交渉していると言っていましたが、どうやらその買収の交渉は破断したようです。今後、Tモバイルと合弁で5Gを展開するのか。その場合、コンテンツをどのように用意するのか。問題は山積しています。スプリントの買収は、ソフトバンクにとって未だに重荷の状態から脱していないと私は見ています。



ローソンを経営できない三菱商事と、ドンキを上手に活用した伊藤忠の手腕


サンケイビズは先月22日、コンビニエンスストア3位のローソンが今年2月に三菱商事の子会社となってから、ほぼ半年が経過したものの、今のところ目立った成果は出ていないと指摘。三菱商事グループのスーパーとの連携強化やコンビニ4位のミニストップとの経営統合観測も浮上する一方、目に見えたせいかを示せなければ、個人株主を含め社の内外から三菱商事への風当たりも強くなるとしています。

新浪氏、玉塚氏を追い出して、三菱商事は自社から役員を派遣したわけですが、成果を出せていません。ローソンの業績推移をみると、営業利益は伸びていますが、純利益が伸び悩んでいます。

三菱商事全体で見ると、そこそこ利益は出ています。セグメント別には金属で大失敗したのを除けば、それほど大きな損失はありませんが、逆に大きく伸びているものもありません。結局、ローソンの経営もうまくいかないとすると、何のためにローソンを支配しているのか?と言う話になるでしょう。私は何度か指摘したことがありますが、成城石井を買収しておきながら、ローソンと相互関係がないというのも問題です。ローソンの中に成城石井コーナーを作るなど、打てる手立てはいくらでもあるはずです。

三菱商事には小売業界を理解できている人がいません。同じ商社でも、アパレルや小売を理解できている人が多い伊藤忠と大きく異なる点です。その伊藤忠の手腕が発揮されたのが、ドンキホーテとユニーの提携です。

ドンキホーテホールディングスとユニー・ファミリーマートホールディングスは、資本・業務提携すると発表しました。ドンキホーテがユニーの株式40%を取得し、ユニーの店舗をドンキホーテなどに転換するもので、商品の共同開発や仕入れ、人事交流にも取り組み、競争力の強化を図る考えです。

これは業界としても驚きの提携でした。ドンキホーテはユニークな商品を沢山持っているので、それをユニーのテコ入れに活用しようという、伊藤忠の戦略だと思います。



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※この記事は8月27日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?



今週は、中国の企業の話題を中心にお届けいたしました。

ファーウェイやアリババ、テンセントなど
中国企業の強さが目立つようになり、
一昔前の中国企業と状況が変わってきていると
大前は記事中で指摘しています。

戦略の基本的な手法として3Cがありますが、
インターネットの普及とそれに続くデジタル化や
グローバル化など経営を取り巻く要素が非常に複雑になり、
今まで見えてない競争相手がはいってくるなど、
3Cはより流動的なものになってきています。

安定していた競争相手、安定したお客さん、
ビジネスモデルが確立している安定した会社、
というモデルから大きく変わり、
3Cは常に変転しています。

このような今だからこそ、
本当の「カスタマー」というのは誰なのか?
自社にとっての本当の「競合相手」というのは誰なのか?
ということを新たに考える意味でも、
この3つのCというのはより一層重要になってきています。


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