大前研一「ニュースの視点」Blog

KON687「ソフトバンクグループ/米ウーバーテクノロジーズ/三菱商事/エールフランスKLM ~スカイチームの提携強化で変わること」

2017年8月18日 エールフランスKLM ソフトバンクグループ 三菱商事 米ウーバーテクノロジーズ

本文の内容
  • ソフトバンクグループ 米ウーバーへの出資を検討
  • 米ウーバーテクノロジーズ CEO候補にジェフ・イメルト氏
  • 三菱商事 イギリスで海底送電線を取得
  • エールフランスKLM 英ヴァージン株31%を取得

ソフトバンクがウーバーに投資しても、他国への相乗効果は期待できない


米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは先月25日、配車サービスを展開する米ウーバーテクノロジーズにソフトバンクグループが出資を検討していると報じました。ソフトバンクは中国で配車大手の滴滴出行に加え、インドのオラなど複数のライドシェア(相乗り)関連の企業に出資しており、今回の出資が実現すれば、ソフトバンクがアジアで事業運営を統合するよう働きかける可能性があると伝えています。

私はソフトバンクが事業運営を統括することになる可能性は薄いと見ています。ソフトバンクは、中国の滴滴出行、インドのオラ、シンガポールのGrabに投資していますが、この種のサービスは国をまたいで投資しても相乗効果はそれほど期待できないからです。ソフトバンクがウーバーに出資することになっても、中国やインドで大きな変化が起こるとは思えません。

カラニック氏がウーバーのCEOを辞任し、誰がウーバーの舵取りをするのか?ということですが、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは先月28日、トラビス・カラニック氏の後任候補の1人として、ゼネラル・エレクトリック(GE)のジェフ・イメルトCEOを検討していると報じています。

7月末でGEを退任したイメルト氏。パワハラ問題などで社内はぐちゃぐちゃのウーバーでも、イメルト氏なら何とかしてくれるという期待が持てるのでしょう。私がイメルト氏の立場であれば、ウーバーのCEOは受けません。検討する余地もありません。ただ、もしイメルト氏が引き受けたなら、ソフトバンクの孫社長はイメルト氏と旧知の仲ですから、出資に好影響が出るかも知れません。


海底送電線への投資をするなら、もっと戦略的に


日経新聞は先月26日、三菱商事は英国で洋上風力発電から地上に電気を送る海底送電線を1億8000万ポンド(約270億円)で取得すると報じました。風力発電は安定的に電力を供給するのが難しいとされますが、発送電の分離が進み今後も需要がある英国を中心にノウハウを蓄積し、欧州全域を網羅する再生エネルギーの発送電網構築を目指すとのことです。

商社は潮流発電など、様々なものに投資をしていますが、その1つが今回の海底送電線への投資です。この電源は、おそらく3000ボルト以下のものでしょうから、サハリンから日本へ送り込むような高圧直流は必要ありません。

欲を言えば、高圧直流を研究して、ウラジオストクから新潟へ送電する、あるいはサハリンから日本へ送り、さらに福島に残っている送電網へつなぐなど、もう少し戦略的に投資すると良いのではないかと思います。




スカイチームの提携強化で変わること


仏蘭航空大手エールフランスKLMは先月27日、英ヴァージン・アトランティック航空の株式31%を取得すると発表しました。同時に米デルタ航空と中国東方航空から出資を受け入れると発表。北米、欧州、アジアの3地域にまたがる航空ネットワークを構築し、競争力を高めるのが狙いとのことです。

スカイチームの提携関係を整理すると、次のようになっています。エールフランスとKLMが2004年に経営統合しました。エールフランスKLMは、アリタリア航空の業績が良くないときに支援をした仲間です。今回の記事によると、エールフランスKLMがデルタ航空と中国東方航空から10%ずつ出資を受け入れ、さらにヴァージン・アトランティック航空に31%出資をすることで、提携関係を大きく広げることになります。ただし、ヴァージン・アトランティック航空はスカイチームメンバーではありません。

ヴァージン・アトランティック航空にはデルタ航空がすでに49%出資しているので、チーム全体で見れば、ヴァージン・アトランティック航空の株式を80%以上保有し、完全にコントロールできる状態です。これにより、欧州、米国に加えて、中国、アジアなどが一体化して、スカイチームが強くなる構図です。

航空業界にはいくつかのアライアンスがありますが、ここまで提携関係が強くなった例は他にありません。そもそも中国東方航空がメンバーに入ったのも初めてです。アライアンスを組むことで、マイレージの共通化、乗り継ぎの融通などができるようになるはずです。そのためにはオペレーションを改善していく必要があります。

デルタ航空には、4月に暴力問題で炎上したユナイテッド航空とは違うところを見せて欲しいと思います。今後、オペレーションがどのように改善されていくのか見守っていきたいと思います。




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※この記事は8月6日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?



今週は、注目企業の話題を中心にお届けいたしました。

北米、欧州、アジアの3地域にまたがる航空ネットワークを構築し、
競争力の強化を狙うエールフランスKLM。

運航頻度が競争力に直結する航空業界では、
エリアや拠点のカバレッジを拡大することで、
提携外の競合に対する競争優位を獲得することができます。

スカイチームの提携関係について
「ここまで提携関係が強くなった例は他にないと」
と大前は記事中で指摘していますが、
提携先は有限だということを認識し、
優良な提携先を先取りする必要があります。


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