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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON221 さまよえる世界の投資資金6000兆円、その受け皿が日本にある。~大前研一ニュースの視点~

2008年7月25日

■┓ 日本国債:海外投資家の保有額 50兆2205億円
┗┛ 前年同月比20.6%増
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●「安全な投資を求める」ポートフォリオが
                  日本国債を求め始めた


 海外投資家の日本国債への投資が増えてきています。


 日銀の資金循環統計によると、海外投資家の日本国債の
 保有額は今年3月末時点で前年同月末比20.6%増の
 50兆2205億円となり、初めて50兆円を突破したとのことです。


 最近では世界のお金がほとんど集まらず世界経済から
 孤立していた日本に、ここに来てお金が流れてきている
 というのは、非常に面白い現象だと思います。


 日本国債などつい最近までは、日本国民以外は
 誰も手を出していなかった金融商品です。


 少しニュアンスは違うかもしれませんが、
 これは「残り物には福がある」的な意味合いが強い
 と私は思います。


 今、世界の投資家にとっては、非常に頭が痛い時期だと
 思います。何に投資してもすぐにマイナスになってしまう、
 あるいは、せっかく上手く利益が出ていると思っても
 下振れリスクに悩まされるという状況が続いているからです。


 そのような状況で、特に魅力的な投資商品だったのが原油です。
 しかし、原油にしても世界の投資家が抱える6000兆円もの
 投資資金を吸収するには、受け皿としては小さすぎます。


 加えて、この1週間で16ドル近くも値が下落してしまい、
 大きな損失を被った人も大勢いたのではないかと思います。


 ここまでくると、利幅としての魅力が大きくない商品
 であっても、取り敢えず、下振れリスクが少ない商品に
 投資しておく、という発想になるのは理解できます。


 そして、その条件に合致したのが、
 利回りは1%後半~2%前半という水準ではあるものの、
 大量に発行されていて安定感のある日本国債ということです。


 同じ国債であれば、確かに米国債も歴史的に絶大な信頼を
 得ている国債ですが、今の米国経済の状況からすると、
 米国債であっても下振れリスクが出てくる可能性がある
 と私は思います。


 サブプライムに端を発する各金融機関の問題解決に当たって、
 結局、当局による米金融機関の救済措置が
 どこまで拡大するのか、図りかねている状況だからです。


 こうした諸々の状況から、10年前には10兆円強に過ぎなかった
 海外投資家の日本国債への投資額が、ここにきて30兆円、
 40兆円と拡大し、遂には50兆円を突破したというわけです。


 世界の投資資金の総額6000兆円という規模からすると
 50兆円では微々たるものですが、


 「利回りが低くても安全な方がいい」
 という投資戦略の変化と、その結果日本に資金が流れる
 という構図には注目するべきだと思います。


※「海外投資家の日本国債保有状況」チャートを見る
→ 


 日本国債は、世界の投資資金の「安全な投資を求める」
 ポートフォリオの一部の受け皿として機能し始めている
 ということです。


●さらに、日本の土地にも
         世界の投資資金が流れてくる可能性がある


 さまよえる世界の6000兆円の投資資金は、日本国債以外には、
 他にどんな受け皿が考えられるでしょうか?
 これは、もう1つしか答えはありません。


 それは「土地」です。


 世界的に見渡しても、「土地」以外には
 考えられない状況だと思います。


 その土地についても、これからは「日本の土地」が投資対象
 として注目される可能性があると私は見ています。


 世界の土地の値段を見てみると、例えば香港などは土地価格が
 行き着くところまで上がっている状況です。


 一方、日本の土地は昨年くらいから低迷し始めています。
 今の日本国内の土地価格は、世界の主要都市の土地価格と
 比べると、他のどの都市よりも安くなっていますから、
 絶好の投資のチャンスと見る人も出てくるでしょう。


 さらには、日本国内では、銀行が不動産投資への融資を
 手控えている状況になっていますから、海外からの投資資金が
 流れてくる可能性は非常に高いと思います。


 私の見込みでは、来年くらいまでに世界の土地物件を見回して
 魅力的な物件が見当たらないなら、世界の投資資金が
 一気に日本の土地に流れてくるのではないかと思います。


 実は、3年ほど前にも同じような状況がありました。


 その時には、米大手投資銀行のモルガン・スタンレーが、
 日本国内に1兆5000億円の資金をつぎこんで、次々と
 土地・不動産を買っていきました。


 その代表的事例だったのがANAホテルズですが、
 今でも覚えている人は多いのではないでしょうか。


 当時は、特にその用途が明確でなくても、まずは日本の土地・
 不動産を買ってしまえばいいという風潮になっていました。


 兎にも角にも土地・不動産を買うこと自体が目的だったと
 言えますが、今、行き場を失っている世界の6000兆円の
 投資資金にも同じことが起こる可能性があると思います。


 皮肉なことですが、これまで投資対象として世界から
 相手にされなかった日本だからこそ、
 今のこの状況においては、国債や土地が評価され、
 投資対象として一躍注目を浴びようとしています。


 メディアを見ていても、こういう指摘をしているエコノミスト
 は殆ど居ないようですが、これがお金の論理だと私は思います。


 俗に言う「お金の臭いがする」というような
 嗅覚が備わってくると、こうした舞台裏の事情も
 理解できるようになってきます。


 世界経済の大きな流れを把握するには、
 こうした感覚を身につけることも大切だと私は思います。


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