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KON675「ソフトバンクグループ・ZARA・リユース業界・ファーストリテイリング ~独自の物流・製造システムを持つZARAの圧倒的な強さ」

2017年5月26日 ZARA ソフトバンクグループ ファーストリテイリング リユース業界

本文の内容
  • ソフトバンクグループ Tモバイルにスプリントとの統合提案へ
  • ZARA 自前主義で一人勝ち
  • リユース業界 リユース業界の悲鳴
  • ファーストリテイリング 若者の留学支援へ

ソフトバンク・ビジョン・ファンドに見るサウジアラビアと孫正義氏の思惑


日経新聞が11日報じたところによると、ソフトバンクグループが米携帯電話3位のTモバイルUSに、米子会社で同4位のスプリントとの経営統合を提案する見通しが明らかになりました。近いうちに、親会社である独ドイツテレコムに申し入れる方針で、実現すれば統合新会社は契約者数でベライゾン・コミュニケーションズ、AT&Tの米2強に匹敵する規模となります。

最近のソフトバンクには大きな動きが見られます。Tモバイルとの統合の話に加え、中国でウーバーを駆逐したディディ・チューシンに約5500億円を出資しました。ソフトバンクは、インドやシンガポールでも同様の企業に投資していますが、中国でもウーバータイプの事業展開を狙っています。そして、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの出資募集が完了しました。

これだけ大きな動きを見せているソフトバンクですが、セグメント別の業績を見ると、特にスプリントの売上は大きいものの、利益はさほど出ていません。有利子負債の金額は、スプリントを買収した時期から膨れ上がり、14兆円規模になっています。

米国の携帯電話の契約数では、ベライゾンとAT&Tは順調に毎年契約者数を伸ばしています。Tモバイルとスプリントが統合すれば、AT&Tとほぼ同じ規模になり、シナジー効果も期待できます。ただし、Tモバイルの買収は巨額な投資になります。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドでは、サウジアラビアから約4兆5000億円の出資を取り付けました。大きな金額だと感じる一方、トランプ大統領が訪問し、あっさりと約12兆円規模の兵器売却でサウジと合意したのを見ると何とも複雑な気持ちです。その他、アブダビ、UAE、シャープ、アップル、クアルコムなど様々な出資が決まり、全体として10兆円ファンドがようやく立ち上がりました。

ファンドの主導権をめぐって、サウジアラビアとの調整に苦労したと聞いています。サウジアラビアとしては、油がなくなったあとの産業を視野に入れて役立つ投資をしたい、という気持ちが強くあります。ですから、極端なことを言えば、21世紀型の新しい産業でなくても、サウジアラビでやってくれるなら古い産業であってもいい、という気持ちだと思います。

一方、孫正義氏の想いは純粋に21世紀型の産業に役立てるという点にあり、その孫正義氏への牽制の意味もあり、サウジアラビアと孫正義氏の間で主導権をめぐって交渉が繰り広げられたそうです。



独自の物流・製造システムを持つZARAの圧倒的な強さ


日経新聞は12日、「ZARA 自前主義で一人勝ち」と題する記事を掲載しました。流行をとり入れつつ低価格を誇るファストファッションは伸び悩みが指摘される中、「ZARA」ブランドを展開するスペインのインディテックスが力強い成長を維持していると紹介。トレンドの小さな変化を逃さず、機動的に生産量を調整することで高利益率を生み出すとともに、情報発信の拠点と位置づける店舗のデザインも自社で担うなど徹底的な自前主義が強みの源泉としています。

世界のファストファッションをリードするZARAを展開するインディテックス。次ぐスウェーデンのH&M、日本のユニクロ、いずれも田舎から始まった企業です。インディテックスは売上も利益率も断トツで、ZARA以外にもブランドを抱え、時価総額は13兆円を超えています。スペインの片田舎で創業し、大きくなった今でもそのままです。創業者はビル・ゲイツに次いで世界で2番目の大富豪としても有名です。

ZARAの強さは、自社でデザインから物流までをこなすシステムを構築していることです。ターンアラウンドタイムの速さも見事です。東京でこういうファッションが流行しているという情報をキャッチしてから、約2週間でそれが製品化されます。全世界7000店舗の店長らが待ち行く人の気になるファッションを写真で撮影し、本社へ送ります。それを本社ではデザイン化し、製品ラインにのせていくのです。

ユニクロは、来年の春用のファッションを大量に1000万着作る、という手法です。これは「外れた」ときの損害が大きいのですが、ZARAのシステムだとこのリスクがほとんどありません。ここがユニクロとの違いであり、独自の物流システムと製造システムを持つZARAの強さです。



リユース業界がメルカリに食われるのは必然だ


東洋経済オンラインは8日、「メルカリに食われる、リユース業界の悲鳴」と題する記事を掲載しました。ハードオフコーポレーションやトレジャー・ファクトリーなどリユース・大手の低迷が続くと紹介。フリマアプリ・メルカリの拡大で、個人間取引が実店舗からネットへシフトしていることが要因で、急成長を遂げるメルカリとリユース業界がどのように戦うのか、正念場を向かえているとしています。

私は、正念場を向かえたのではなく、すでに戦いは決していてリユース業界は淘汰されていくことになると思っています。リユース業界は、洋服10着まとめて3000円で買取り、売る方も何とかお金になったからよかった、というモデルです。ある意味、中古品の収拾業者的な役割もあります。

それに対してメルカリは、欲しいものが見つかれば個人間で売れます。3万円で購入したものが1万円で売れる、というのもよくある話です。洋服10着を回収的な意味もあって、3000円で買い取る業者と、個人間のニーズをマッチングさせて1着1万円で売買できるようにしたメルカリ。現在メルカリは国内で3500万ダウンロード。100万件規模の出品があり、半分は売れるということです。

リユース業界にとっては「悲鳴」ではなく「絶命」でしょう。中古品に価値を認めないというこれまでの業界構造が崩れ去る、それが是正されていく流れです。淘汰されていくのは、当然の結果だと私は思います。


留学生支援なら、何かしらのプレッシャーをかけるべき


「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が、私財を投じて若者の米大学への留学を支援する一般財団法人「柳井正財団」を設立しました。ハーバード大やエール大など指定大学の学士課程の合格者37人を対象に、ひとりあたり年間7万ドル(800万円)を4年間支給するもの。「多様性の中で日本人の良さ、長所を発見してほしい」と語りました。

私なら大学に限定せず、ベトナムやネパールなどに数年間行って学んでくるというのも選択肢に加えるかも知れません。柳井氏のプロジェクトで注意すべき点は、せっかくお金を出すなら、学生がバケーション気分で終わらないように、何かしらの強いプレッシャーをかける必要があると私は思います。

来日している留学生を見ても、親がお金持ちの学生のほうが勉学に集中していないように感じます。柳井氏が親にかわって資金を提供してくれたら、それだけでちゃんと勉強するのか?というと、疑問だと私は感じます。単に「(お金を提供してくれて)ありがとう、柳井さん」で終わってしまっては意味がないので、何か仕掛けを考えると良いでしょう。




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※この記事は5月21日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?



今週は、ZARAやリユース業界の話題を中心にお届けしました。

情報のキャッチから製品化まで約2週間という
ターンアラウンドタイムの速さが圧倒的な強さになっているZARA。

このように、市場での競争力を上げるためには、
選択した市場セグメントや差別性に
最適な事業構造を作り上げることが非常に重要です。

他のファストファッションと違い、
ZARAは自社でデザインから物流までをこなすシステムを
構築しているからこそ圧倒的な強さを実現しています。

このように競合と違う事業構造を作りこむ際は、
違う市場のモデルを参考にすることが大切です。

自分の業界だけをみるのではなく、
この事業構造は自社にも使えるのでは?という目線で
他の業界で成功している企業を見る必要があります。


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