- 本文の内容
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- 日米経済対話 3分野で具体的成果めざし
- トヨタ自動車 1500億円の追加投資発表
- 米中関係 中国を為替操作国に指定するわけがな
米国が狙う2国間協定は断固拒否すべき
日米両政府は18日、2月に安倍首相とトランプ米大統領との会談で合意した日米経済対話を行い、貿易・投資ルールなど3つの分野で具体的な成果を目指す方針で合意しました。対話後、ペンス米副大統領は「TPPは過去のもの」と述べ、2国間の貿易交渉に軸足を置く方針を改めて表明。経済対話が将来的に日米FTA交渉に発展することに期待感を示しました。
日本は米国を除く11カ国でTPPの継続を進めようとしています。米国としてはこれを阻止し、「米国対日本」「米国対韓国」というような2国間協定に持ち込みたいという狙いでしょう。
例えば、食肉の輸入を見ると、国内に流通しているものは輸入品が国産品よりも多くなっており、その輸入量では米国よりも圧倒的に豪州が優位に立っています。もしTPPが実現していても、米国は豪州の牛肉には及ばなかったでしょうが、さらには豪州と日本は先行的に2国間協定を締結していて、関税が10%低いというコスト競争力があるので米国としては全く歯が立たない状況です。
米国の狙いは、2国間協定に持ち込み、最悪でも豪州と同じ条件、願わくば豪州よりも有利な条件を引き出したいところでしょう。かつて20年間にわたって日米貿易交渉を見てきた私に言わせれば、米国との2国間協定は絶対に進めるべきではありません。TPPを反故にしたのは米国なのだから、はねつけてほしいと思いますが、安倍首相の態度を見ていると何とも懸念を感じてしまいます。
トヨタ自動車は10日、米国ケンタッキー州の完成車工場に13億3千万ドル(約1500億円)を追加投資すると発表しました。米国で、今後5年で投じる100億ドルの計画の一部で、これまでトヨタのメキシコ工場建設を批判してきたトランプ大統領も、一定の評価を示すコメントを寄せています。
ケンタッキーの工場というのは、トヨタが世界に保有する工場の中でも最大規模の工場です。実際のところ、追加投資をしたところで雇用はそれほど増えないでしょうが、トヨタとしてはケンタッキーやインディアナなどで、トランプ政権にアピールをすることが重要です。
これまでは、特に発表などせずに投資をしてきたものを、あえて大体的に公表しています。これは表面的な意味でのトランプ政権への対応です。トランプ大統領に批判されたと言っても、メキシコの工場も閉鎖していませんし、トヨタは自分たちのペースで淡々と物事を進めています。
自動車業界では、「SUV」によって勝ち組と負け組が明確にわかれる結果となっています。セダンは軒並み落ち込んでいて、SUVで出遅れたメーカーが負けています。米国自動車メーカーはSUVに弱く、苦戦しています。機能的な側面だけで言えば、東京でSUVに乗る意味はないですし、ましてBMWやポルシェのSUVとなるとなおさらでしょうが、「SUV=カッコイイ」という流行ができあがっています。
中国問題と北朝鮮問題は全く別もの
トランプ米大統領は16日、北朝鮮が日本海側の東部・新浦付近で中距離とみられる弾道ミサイル一発を発射後、初めてツイッターに投稿し、「北朝鮮問題で我々に協力してくれているというのに、なぜ中国を為替操作国に指定するというのか。指定するわけがない」と述べました。北朝鮮への圧力強化へ向け、中国の役割に改めて期待を示した形です。
トランプ大統領は、中国に対して100日間の猶予を与えたので、その間に北朝鮮問題で貢献しろというスタンスですが、米国民でトランプ大統領に投票した人は、一体どう感じているでしょうか?
選挙期間中、あれだけ「中国は為替操作国ナンバーワン」だと言っていたのに、北朝鮮問題に協力してくれたら為替操作国ではなくなる、とはおかしな話です。そもそも、中国の問題と北朝鮮の問題は全く別ものであり、関係性がありません。私には全く理解できません。
シリア攻撃の背景にイバンカ氏の存在
英フィナンシャル・タイムズは「トランプ大統領にまだバノン氏が必要な理由」と題する記事を掲載しました。これは、バノン首席戦略官は、トランプ政権内で戦略的な頭脳に近いものを持っている唯一の人物と紹介。NSCからはずれたものの、シリア攻撃には反対したというバノン氏の本能は健全としています。
全体を通してトランプ戦略は成り立たせるためには、
バノン氏は不可欠な存在でしょう。悪いところはたくさんありますが、バノン氏がいなくなれば、オバマ政権と何ら変わらないものになるという指摘です。これは一部正しいと思いますが、私はバノン氏を排除するのが正しいと思っています。
トランプ大統領の娘婿ジャレッド・クシュナー氏が、バノン氏とナバロ氏を排除する方向で動き、日に日にその役割が大きくなってきています。大きな事業も持っている人物ですから、コンフリクトが起こらないように、事業と政務を切り離すことが必要でしょう。
一方、トランプ米大統領の最初の妻の次男であるエリック・トランプ氏が英テレグラフ紙のインタビューに応じ、シリア攻撃に踏み切った大統領の決断の背景に長女イバンカ氏の後押しがあったのは確実との見方を示しました。
イバンカ氏が「子供がやられている、赤ちゃんにサリンなんてとんでもない」という類いのことを言って、トランプ大統領に決断を促した、とも一部のメディアで報じられています。もちろん、イバンカ氏の発言に決定的な証拠があったわけではないでしょうから、恐ろしい話ですが、米国は同じようなことを過去にも行っています。
イラクによるクウェート侵攻後、イラク軍兵士が保育器に入った新生児を取り出し放置して死に至らしめた、とクウェートの少女に証言させました。これが湾岸戦争の大きな布石にもなりましたが、後年、この少女は駐米クウェート大使の娘で、証言は捏造だったと判明しています。
今回もアサド側が本当に化学兵器を使用したのかどうか、判断できません。そもそも、シリアをそれほど重要視していないと語っていたトランプ大統領が、急に方針を変更して動き出したのは腑に落ちません。エリック・トランプ氏が言うように、イバンカ氏の影響があったというのは、頷けます。
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※この記事は4月23日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は、米中関係の話題をお届けしました。
トランプ大統領は、北朝鮮への圧力強化へ向け、中国に対する期待をツイッターで示しました。
これに対して大前は、中国の問題と北朝鮮の問題は全く別ものであり、関係性がないと指摘しています。
今回のトランプ大統領のメッセージの根拠を冷静に読み解くと、納得できるものではありません。
このようなニュースを目にしたときは、「このメッセージは論理的か?」「万人に正しいと主張できるか?」「誰が言っても、何度言っても、同じ答えが出るか?」
と自分のアタマで考えることが重要です。
また、自分のアタマで考えるためには、「ことばのすじみち」を正しく理解し、使いこなすことが必要です。
これらを日々繰り返し訓練をしていくことで、自らの頭脳の働きで、より正しい発想や決断を導くことが出来ます。
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