大前研一「ニュースの視点」Blog

KON663「世界海外旅行者数・民泊・決済サービス ~4000万人対応には民泊を活用せざるを得ない」

2017年3月3日 世界海外旅行者数 民泊 決済サービス

本文の内容
  • 世界海外旅行者数 2016年で約12億3500万人
  • 民泊 年間営業日数の上限を条例で制限
  • 決済サービス 2020年までに日本の決済システムが激変

4000万人対応には民泊を活用せざるを得ない


国連世界観光機関(UNWTO)は、2016年の国際観光客到着数は、前年比3.9%増の12億3500万人と発表しました。
テロの影響で外国旅行を手控える動きが一部に出たものの、世界的な経済成長とグローバル化の進展を背景に7年連続のプラスで過去最高を更新しています。

将来的に2020年までに4000万人の外国人が来日すると言われていますが、それでも世界の12億人という人数から考えれば小さ過ぎると私は思います。

旅行産業というのは 今最も成長が確実な産業といえます。
人々は豊かになると車を買って乗るという生活スタイルから卒業して、観光・旅行にでかけるという時代になってきています。
旅行先としての一番人気はフランスで、年間約8000万人です。
昨年テロがありましたが、おそらくそれでも激減はしないと思います。
フランス以外にも、スペインイタリアなど欧州は人気が高い地域です。
アジアで見ると中国やタイといった国が日本よりも人気があります。

日本は4000万人の外国人観光客に対応するとなると、民泊を使わざるを得ない状況です。
すでに1900万人で既存の旅館やホテルは年間稼働率が80パーセントで満杯状態。全く予約が取れません。
このままで、一体どうやって4000万人に対応するというのでしょうか。

このような状況の中、民泊をめぐる法整備について、政府・自民党は先月8日、年間営業日数の上限を地域の実情に応じて制限する調整に入りました。
国土交通・厚生労働両省は昨年12月、上限を180日にする妥協案を決定しましたが、これに対し、旅館業界や自民党の一部が「長すぎる」と反発。
生活環境の悪化などを招く場合、地方自治体が営業日を減らす条例を定められるようにする方針です。

昨年1900万人の外国人観光客でホテル旅館は満杯になったため、実際には370万人はエアビーアンドビーを使っていたことがわかっています。
もしこれがなかったら、4000万人どころか昨年の2000万人レベルでも対応できていないということです。
それにも関わらず、未だに民泊を制限しようと動いています。
これは既存のホテルや旅館の人たちが働きかけています。
私に言わせれば、「そんな権利があるのか?」と、問いただしたくなります。

民泊に関する様々な問題(納税や自治体への届け出等)は、積極的にエアビーアンドビーが対応して解決に向けて動いています。
これは非常に良いと思います。
しかし一方で、180日制限などを受けると、既存の空きスペースならいいでしょうが、新築だとペイしない、あるいは鍵の管理などに人を雇うのもむずかしくなるなどの問題があります。

お役所仕事なので、完全に自己矛盾に陥っています。
国は民泊を制限するということで4000万人の受け入れをあきらめるのか、それとも4000万人を受け入れるために民泊を活用していくのか。どちらか方針を決めるべきです。


世界標準はアリペイ。すでにほぼ勝負はついている。


日経新聞は先月8日、2020年までに激変する日本の決済システムを予測する記事を掲載しました。
記事によると、QRコードを使うなど新たな決済サービスが普及、非接触IC決済端末が国際規格に対応、FeliCaが国際的に普及など3つのシナリオが考えられるということで、それぞれの最新動向も交えて解説しています。

日経新聞は上記のように書いていますが、実際にはすでに「終わって」います。
QRコードを使いスマホだけで決済が完了(銀行口座から直接引き落とし)するアリペイ、ウィチャットペイが圧倒的です。
日本もフェリカで対抗しようとしていますが、香港などで多少使われているに過ぎず、国際的には約10億人が利用するアリペイ、ウィチャットペイで決まりでしょう。

もともと、Edyはソニーが開発した技術でした。
ユーロ、ドル、円という主軸通過を不要にするという非常に優れた発想と技術でしたが、当時のソニー経営陣は単なる「部品」としてこの技術をJR東日本に売ってしまいました。
このとき国際標準になる千載一遇の好機を逸してしまいました。

現在、アリペイ、ウィチャットペイの利用者は約10億人。
5億人くらいは重複していると思いますが、それでも圧倒的な数字です。
QRコードで読み取るという方式が世界標準になっていくと私は思います。
すでに日本でも、免税店ではない3000の小売店がアリペイやウィチャットペイ対応をせざるを得ない状況であり、他のお店も追従するでしょう。
楽天ペイもありますが、5億人が使う決済システムの実績とシェアには勝てないと思います。


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※この記事は2月26日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、民泊の重要性に関する話題をお届けしました。

4000万人の外国人観光客対応には民泊を活用せざるを得ない状況の中、年間営業日数の上限を地域の実情に応じて制限する調整に入った政府・自民党。

これに対して、民泊の制限で4000万人の受け入れをあきらめるのか、受け入れるために民泊を活用していくのか方針を決めるべきと大前は指摘しています。

大前が観光客の人口数を挙げて指摘しているように、定量的なデータを意識しなければ、本来打つべき施策とは異なる方向に進んでしまいかねません。

問題解決にあたっては、ありたい姿を定量的にしっかりと定義しておくことが大切です。


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