大前研一「ニュースの視点」Blog

KON642「成田空港・傾斜マンション問題 ~新滑走路を作ったところで成田空港が上向かない理由」

2016年10月7日 傾斜マンション 成田空港

本文の内容
  • 成田空港 新滑走路建設案を了承
  • 傾斜マンション問題 傾いていない棟も含め全4棟の建て替えを決議

新滑走路(第3滑走路)を作ったところで成田空港が上向かない理由


国と成田国際空港会社、千葉県、地元自治体で構成する「四者協議会」が開かれ、空港の南東側に長さ3500メートルの新滑走路(第3滑走路)を建設する案が了承されました。

また、夜間の飛行制限時間帯も短縮する方針も確認され、今後本格的な協議を経て合意した後、具体化に向けた手続きに着手する方針です。

今さら3500メートルの滑走路を作ることができるなら、今まで何故着手しなかったのか?
これまで成田空港の問題として取り上げられたことは何だったのか?という気持ちになります。

しかも、夜間の飛行時間もわずか4時間増えるだけ(午前1時~5時)という中途半端さ。
世界の主要な空港は、当たり前のように24時間体制です。

もともと成田空港の建設にあたっては、「羽田空港の拡張」「東京湾の真ん中に新空港建設」「成田に新空港建設」という3つの候補がありました。

東京湾の真ん中よりも成田のほうが、建設コストが50億円ほど低いという理由で、最終的に成田が選ばれました。私に言わせれば、全く理解できないフィージビリティです。

東京からの距離などを考えれば、50億円のコストは無視できるレベルの金額です。
そんなこともわからずに、成田空港の建設を決定した人には大いに責任があると思います。

しかし、小池都知事の言葉を借りれば「空気が決めた・・・」ということで、成田空港の建設についても責任者は不明確です。

成田に限らず、日本の空港行政は目に余るものがあります。

例えば、伊丹空港と関西国際空港の問題です。
伊丹空港を建設したものの騒音問題などで反対運動もあり、伊丹空港を潰す前提で関西国際空港の建設が始まりました。

ところが実際に関西国際空港が完成しても、伊丹空港はなくならず、そのまま利用されることになりました。

反対運動をしていた人たちの中にも、騒音対策費などの補助を求めて、伊丹空港の存続を希望する人がいたようですが、何よりも大阪の財界が手の平を返しました。

あれだけ関西国際空港をプロモートしていたのに、結局、自分たちが東京に行くときに関西国際空港だと不便だということで、伊丹空港の存続に動いたのです。

責任者が不明確なままで許される問題ではないと私は思います。
少なくとも、昔の運輸省にいた責任者と言える立場の人間には出てきてもらいたいところです。

羽田空港は滑走路を順調に広げて、第4滑走路まで保有しています。
これはアジアの空港でトップです。この段階にいたって、ようやく成田空港はお尻に火がついて焦り始めたのでしょうが、私はそもそも成田空港が上手く行くイメージが持てません。

成田空港にはLCC専用の第3ターミナルがあります。私はここを使うと、「人生の悲哀」を感じます。
第2ターミナルからの距離も遠く10分以上歩かなければなりません。全体として質素で、中にある飲食店なども明らかに他のターミナルとは違います。貧相というと大げさかも知れませんが、そういう印象を与える設計だと感じます。

他の空港でもLCCの場合、ボーディング・ブリッジが用意されず、タラップを直接自分で降りる必要があったりします。それでも、歩く距離はたかが知れています。
重たいスーツケースを持たせて10分以上歩かせるようなことはまずありません。

ようするに、「こういう神経」の持ち主が成田空港を運営している限りは、第3滑走路を作ったところで大きく改善していくことはないと私は思います。

単に滑走路の数の問題ではなく、空港会社としての実力において世界の空港と比べて圧倒的に競争力が不足していると思います。


傾いていない棟まで建て替えはやや理不尽だが、将来の抑止力となる


横浜市都筑区の大型マンションが傾いている問題で、マンションの管理組合は傾いている1棟を含む全4棟の建て替えを決議しました。

来年4月にも解体作業を始め、約3年半で完成する計画です。
工事費用の約400億円は、三井不動産レジデンシャルと三井住友建設などの事業主側が負担する考えです。

以前にも似たような事例がありましたが、それは決着まで約10年かかりましたから、今回1年で片がついたのは画期的だと言えるでしょう。
関わった企業が、三井不動産レジデンシャルなど資金的に余裕がある企業だったのも大きな要因だと思います。

工事費用400億円とのことですが、これ以外にも建て替え期間中の代替住まいの手配などもあるので、さらに高くつく結果になるはずです。かなりの負担にはなるでしょうが、今後手抜き工事が行われないために、いい教訓になると思います。

ただ傾いていない棟まで建て替えるというのは、やや理不尽にも感じます。おそらく日本以外の国ならばあり得ない決定です。
逆に言えば、これも「少しでも手抜きがあると大変なことになる」という抑止力となるでしょう。

今後マンションに住む人にとっては、これらのお金が上乗せされていくことになります。


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※この記事は10月2日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は成田空港に関する話題をお届けしました。

大前は、同空港は空港会社としての実力において、世界の空港と比べて圧倒的に競争力が不足していると指摘しました。
その要因を探るためには、今現在の事象で判断するだけではなく、長い期間で振り返ってみることも重要です。
なぜ現在の状況になってしまったのか、昔の意思決定にまで踏み込んでいくと、過去と現在がつながり、問題の本質がみえてきます。


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