大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON202 日本の貯蓄率伸長 呆れた日本人の貯蓄癖

2008年3月7日

■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
 家計金融資産
 一世帯あたりの平均保有額1259万円 前年比12.5%増
 投資資産残高
 昨年12月末の契約残高167兆円 9月末比2.5%減
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■


●未だに増え続ける日本の預貯金・保険の割合


27日、金融広報中央委員会は、
2007年の「家計の金融行動に関する世論調査」を
発表しました。


それによると、一世帯あたりの金融資産の平均保有額は
前年より12. 5%増え、1259万円(金融資産無保有世帯を
含む平均額)となりました。


これは、預貯金が12.9%増と伸びたため。
年金に対する不安や食料品などの価格上昇で
貯蓄を進める家計の姿勢が明確になってきたようです。


昨年、私は心理経済学という本を上梓しました。
その中では、1500兆円の莫大な個人金融資産という
水ガメに貯まった水を流出させるにはどうすればいいのか
という点について触れたわけです。


しかし、そんなことを言っている間にも、
日本の貯蓄率が伸びたというのですから、日本人の
貯蓄癖には、さすがの私も呆れてしまいます。


約20年の主な家計金融資産額の推移を見てみると、
バブル崩壊から失われた10年といった不況の時代も
ありましたが、結局は増え続けてきています。


2005年以降になってくると、やや株式・投信などの比率が
増えてきているのが見て取れますが、預貯金・保険の
割合が最も高いことに変わりありません。


結局は、非常に低い金利の預貯金が資産の5割を
占めるという、信じがたい結果になっているのです。


※「主な家計金融資産額の推移」チャートを見る
 


別の観点からの家計の金融資産の状況として、
家計保有の金融資産額セグメントの推移を見てみます。


1992年と2007年を比べてみると、金融資産の平均で
1992年の1259万円(金融資産無保有世帯を除く平均額)
から
2007年の1624万円へと約400万円増加しています。


2007年になって、金融資産3000万円以上の割合が
増加している一方、金融資産100万円未満も増加
しているという特徴的な部分も見られます。


しかし、総じて、日本人は貯蓄志向が強いことを
改めて認識させられる結果だと言えるでしょう。


※「家計保有の金融資産額セグメントの推移」チャートを見る
 


●今は、日本の投資信託に手を出すべきではない


年金基金などから資産運用を請け負う投資顧問会社の
昨年12月末の契約資産残高が、同9月末に比べて
2.5%減り、167兆円になりました。


これは、日本証券投資顧問業協会が26日に
発表したもので、減少は2四半期連続。


米国サブプライムローン問題の影響で世界の多くの
株式市場で混乱が生じていますが、政治の混迷等も
相まって、特に日本株相場が低迷し、投資顧問会社の
受託資産残高が時価ベースで目減りしたことに加え、


海外年金基金を中心に海外投資家が日本株への
契約額を減らしたことなどが原因と考えられます。


先ほど見たように、家計が保有する金融資産の額は
増えてきているにもかかわらず、今の日本の投資市場
としては、日本の株式などを組み込んだ投資商品は
避けられる傾向が見られます。


※「投資顧問の契約状況」チャートを見る


国内外の投資家が積極的に日本株に投資できない
理由として、将来的な成長性があげられます。


もちろん日本人の金融資産が貯蓄・保険に余りにも
片寄りすぎているのは問題だと感じますが、


だからといって人口が減少し、経済規模が相対的に
縮小する日本の将来を考えた場合、日本株を中心とした
運用では、将来大きなリターンを期待することは難しい
可能性があります。


なかでもインデクッスに準じた投資では、リターンは
限定的なものになる可能性が高いと考えられます。


つまり、市場全体を対象とした投資ではなく、低成長の
日本にあっても将来性がある企業の個別株の選択に
成功しない限り、大きな利益を出すのは難しいでしょう。


そのため、投資先を日本だけに限定するのではなく、
将来的に高い成長を期待できる投資先を世界に広く
求めることも重要になってくるでしょう。


例えば、高い成長力を誇る新興国への投資等を検討する
ことも、今後の資産運用上重要になってくることでしょう。


つまり、ボーダレス経済の進展とともに、投資の機会も
拡大しています。大事な資産を守り、増やすために、
広い視野で世の中を見ることが益々重要になるのです。


                          以上


================================
この大前研一のメッセージは、3月2日に
BBT757Chで放映された大前研一ライブの内容を編集したものです。


BBT757Chのサイトでは、他にも大前のメッセージが ハイライト映像として
視聴(無料)できます。


他のメッセージを視聴する
→ http://bb.bbt757.com/news-bbt757.html
================================


問題解決力トレーニングプログラム

問題解決力トレーニングプログラム

大前研一 ニュースの視点 Blogトップへ

  • メルマガ

    ニュースの視点メルマガ登録

最近の投稿記事

ニュースの視点メルマガ登録

ブログの更新情報

バックナンバー

  • facebook
  • twitter

各種ソーシャルメディアで様々な情報をお届けしております。

大前研一 ニュースの視点