大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON199 G7共同声明に感じる「スカスカ感」の何故?

2008年2月15日

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G7
世界経済に下方リスク
日米欧主要7カ国の景気がそろって減速
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●G7に固執することなく、世界経済のバランスを考えるべき


9日、都内で開いていた7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は、
共同声明をまとめて閉幕しました。


共同声明は世界経済について、「世界はよりチャレンジングで
不確実な環境に直面している」と表明し、世界経済の不確実性が
増していると指摘。


「経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は引き続き堅固」
としながらも、足元で「成長は短期的に減速する」という
見込みとのことです。


G7の共同声明ということですが、今回のG7についての
私の率直な感想を言えば、ポールソン米財務長官が一人で
熱く語っていましたが、全体として空回りしている印象を
受けました。


ポールソン米財務長官は「アメリカの銀行は一刻も早く増資を
して資本を安定させなければ危険だ」としきりに主張して
いましたが、そもそもその原因を作ったのも米国ですし、


正直なところを言えば、世界に主張する前に、
米国がもう少し頑張ってくれと言いたいところです。


これは私だけに限ったことではないでしょう。


他の出席者を見ていても、明らかに米国との間には
温度差があったように、私は感じました。


このような問題の根本的な原因となっているのは、
現在のG7という会議体そのものが、世界経済のバランスから
すると、非常に片寄った参加国のものになっているからだと
私は思います。


現在、世界経済の中でも影響力が著しく大きくなっている
中国やインド、英国やフランスは中国・インドのG7への参加を
主張していますが、両国は未だG7への参加が許可されていません。


特に、中国やインドを参加させられないような大きな理由は
見当たりませんが、例えば中国について言えば、アジア唯一の
G7参加国として日本が反対しているという噂もあります。


これは逆に、安保・常任理事国への日本の参加を中国が反対し
続けているのと同じ理由でしょうが、両者共にあまりに
子供じみた態度だと私は思います。


中国・ロシアの参加は当然のこととして、
将来的には、BRICsの国々やナイジェリアといった国々まで
視野に入れて考えていくべきでしょう。


世界経済のバランスを考えれば、当然のことであり、
いつまでもG7という既存の枠にこだわってしまうから、


今回の会議のように、議論の中身がすかすかで、
インパクトもないといった状態になってしまうのだと思います。



●米国内では、サブプライムローン問題への対策が具体化


さて、そのG7が懸念している世界経済の
下振れリスク要因の一つである米サブプライムローン問題ですが、
米国国内でもかなり調査や議論が具体的に進んできたように
思います。


2月4日号のBusinessWeek誌の記事の中に、
米国の政策は「Too Big to Fail(大きすぎて潰せない)」
というものがありました。


これは、サブプライムローン問題に直面している
米国の銀行について、今後政府管掌の可能性がどのくらい
あるのか、という点について考察しています。


具体的には、ムーディーズの格付け等から推測して、


Bank of America (バンクオブアメリカ)、
Bank of New York (バンクオブニューヨーク)、
Citigroup(シティバンク)、
JP Morgan Chase(JPモルガン・チェース銀行)


等の銀行が危機に陥った際は、政府による救済措置が取られる
可能性が「非常に高い」と推測されています。


今のところは、アラブマネーなどによってかろうじて
支えられていますが、これらの大きな銀行は政府が保証して
流動性を確保しなければ危機を乗り越えられない可能性が
あるということでしょう。


もちろん、政府が銀行のオーナーになって救済に乗り出す
というのは、異常事態です。


だからこそでしょうが、これまでもサブプライムローン問題に
ついては数多くの記事がありましたが、米大手銀行が
政府の救済を受ける可能性に言及している報道は
珍しいと思われます。


また、2月11日号のBusinessWeek誌では、一面に大きく
「Housing Meltdown(住宅メルトダウン)」という記事が
載りました。


これは、住宅価格が下落するという最悪期はまだ迎えておらず、
住宅問題が本格化するのはこれからだと示しています。


この記事によると、住宅価格は、この数年で大きく上昇してきた
わけですが、今の段階で住宅価格がすでに下がり始めてきたと
不安を感じている人は、西海岸と東海岸という両岸に
大きく分布していることがわかります。


また、現在のところは住宅価格の下落割合は、
7%~10%といったところですが、この水準が20%前後に
なってくると大きな問題になると示唆しています。


これは、私が以前から提唱している通りのことです。


今後、普通の住宅価格が20%前後下落してしまうと、
この1~2年で住宅を購入した人のうち、3分の2程度の人の
住宅では、住宅価格の時価が購入価格を下回ることになり、
住宅の抵当能力が低下します。


つまり、サブプライムローのような変動金利でローンを
組んでいる場合、住宅の資産価値下落による抵当能力の
低下のため、返済金利が上昇し、ローンの返済が滞るケースが
増加すると考えられます。


また、住宅を担保にした借り入れによる消費も制限される
ことになります。


同誌は、こうした点について、しっかりと考察していると思います。


米サブプライムローン問題への対策は、
未だ米国内における対策も、それを受けた世界経済全体の対策も、
問題が山積しています。


このような状況だからこそ、これまでのG7に固執することなく、
世界経済全体に目を向けて、世界経済に影響力がある国を
随時参加させ、今後G10・G11などへの発展を見据えた対応を
してもらいたいと感じます。



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この大前研一のメッセージは、2月10日に
BBT757Chで放映された大前研一ライブの内容を編集したものです。


BBT757Chのサイトでは、他にも大前のメッセージが ハイライト映像として
視聴(無料)できます。


他のメッセージを視聴する
→ http://bb.bbt757.com/news-bbt757.html
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