大前研一「ニュースの視点」Blog

KON629「小売業界・ベンチャー集積地・東京都知事選~都知事に立候補するなら、東京都の問題分析くらいしてほしい」

2016年7月8日 ベンチャー 小売業界 東京都知事選

本文の内容
  • 小売業界 「値下げの夏」の予感
  • ベンチャー集積地 フィンテックは大手町、医薬は日本橋、新VB集積地
  • 東京都知事選 長島昭久氏に出馬要請 

小売業界 「値下げの夏」の予感


日経新聞は1日、「値下げの夏」の予感と題する記事の中で、良品計画やニトリなど、これまで高付加価値商品で業績を伸ばしてきた企業が価格戦略を見直し、この夏以降、低価格帯に注力する方針を示していると紹介しました。

消費低迷の長期化に加え、円高で仕入れ価格が低下する可能性を受けたものとのことです。

つい最近までは、グレードが高い高価格帯へ傾いていましたが、すっかり風向きが変わってしまいました。

ニトリやしまむらも、値上げをやめて、低価格・お手頃感を前面に押し出しています。
ニトリの国内売上高推移を見ると、客数は増えている一方で、見事に客単価が低迷しています。
大塚家具のレベルに手を出せる人は、かなり少なくなっています。

このような状況を見て、安倍首相はどう感じているでしょうか。アベノミクスが上手くいったと言えるかの?と問い質したくなります。


ベンチャー集積地には、混沌とした出会いが必要


日経新聞は2日、「新VB集積地」と題する記事を掲載しました。
ベンチャーの集積地といえば東京渋谷や六本木という、これまでの地図が変わりつつあります。

近年は、フィンテックは大手町や丸の内、医薬関連は日本橋、インターネットは五反田という形でベンチャーが集積しており、地の利を活かした新たな成長を模索し始めていると紹介しています。

私は好ましくない状況だと思います。
業務領域ごとに地域が別れるのではなく、IPOアドバイザーもいれば、弁護士もいれば、ベンチャーキャピタルもいる、というように「総合的に集まっている」ことが重要だからです。

シリコンバレーを見ても、ボストン周辺のケンブリッジを見ても、様々な業種の会社、多種多様な人たちが存在しています。

定番のランチの場所があって何かあればそこで話ができるくらいの身近さがあり、3軒両隣との出会いで大きく変化が訪れることもある、そんな環境が大切なのだと思います。

業種などで上手く整理できるものではなく、混沌としたところから「出会い」は生まれます。

今回の日経新聞の記事は、少しエスタブリッシュメントに迎合しすぎていると感じます。


都知事に立候補するなら、東京都の問題分析くらいしてほしい


東京都知事選(14日告示―31日投開票)をめぐり、民進党の都議会会派が長島昭久衆院議員に出馬を求める要請文を手渡していたことが分りました。

民進党は2日、都連の選対委員会を開いて、自民党の検討状況をみながら候補者選びを急ぐ方針を確認しています。

民進党の枝野氏は、長島氏を支援するのは反党行為だと述べているそうです。
一方で、枝野氏は蓮舫氏を推しており、完全に民進党は分裂状況だと言えるでしょう。

私としては、依然として前総務事務次官の桜井氏を望んでいます。
家族に迷惑がかかるとの理由で前向きではないのは、残念です。

自民党は元岩手県知事の増田氏を推薦していますが、あまりに安易です。
岩手県知事時代の実績を見ても、東京一極集中に反対している政策提案にしても、納得しづらいものがあります。

自民党としては、3連続で推薦した人が途中で都知事を辞める羽目になっています。本来なら候補を擁立できる立場ではありません。

政治家は多かれ少なかれ、舛添氏のような問題を抱えている可能性があるので、増田氏に声をかけたというところでしょう。

小池百合子氏は「何があってもやりぬく覚悟」があると出馬表明をしているそうですが、何の準備もなく突然手を上げられるのが私には信じられません。

私がかつて都知事に立候補した際には、東京の問題点を分析して政策集にまとめるのに1年かかりました。
東京都が抱える問題は、根が深い問題が多く、当時からそれほど変わっていません。
立候補する人には、もう少しまじめに東京都の本質的な問題の解決にあたってもらいたいと思います。

オリンピックを控えているから、英語が堪能な小池氏というのは、あまりにも短絡的に過ぎます。

東京都に対して何をしてくれるのか?東京都をどうしていきたいのか?真剣に考えていただきたいところです。

都知事選の後、私は「大前研一 敗戦記」をまとめました。そこで東京都が抱える問題についても指摘しています。

例えば、「23区3多摩の格差問題」があります。この格差是正は非常に大きなテーマです。

あるいは、都内の「横方向のモビリティ」改善。
東京の中央にいるとわかりづらいのですが、東京都は外から内へ入る道路ばかりで横方向への移動が非常に不便です。立体交差や開かずの踏切など、解決しなくてはいけないものがあります。

都知事に立候補するというのなら、せめてこの本を読むくらいの準備をしてもらいたいものです。

もはや全ての問題解決は望みません。
例えば、開かずの踏切だけで約900ありますから、それをなくすだけでも良いでしょう。

大変残念なことに、青島氏以降、東京都知事は何1つ実行してくれていません。たった「1つだけ」でも良いですから、徹底的に実行してほしいと思います。


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※この記事は7月3日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


東京都知事選に関する議論が活発になっています。

大前は、立候補者には東京の問題点について調べたうえで、どう解決していきたいのか真剣に考えてもらいたいと主張しました。

問題解決のアプローチにおいて最初に取り組むステップが「本質的問題の発見」です。
ここをしっかり押さえていない限り、良い解決策を導くことはできません。

また、大前がかつて都知事に立候補した際に1年かかったと述べている通り、問題発見から解決策の立案までには数多くの情報収集や分析が必要となります。

徹底的に考え抜いて解決策をつくり、実行する姿勢が、問題解決者に求められます。


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