大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON196 株価を下げる大きな要因「日本の鎖国主義的な政策」

2008年1月25日

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 外国人投資家
 「日本株買い」半減
 外国人投資家の買越額 4兆1419億円(48.9%減)
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●日本の株価が上がるも下がるも、外国人投資家の影響が大


16日、財務省が発表した2007年の対内・対外証券投資
(指定報告機関ベース)によると、
外国人投資家の日本株の買越額は4兆1419億円になりました。


前年比48.9%減少で、米国のサブプライムローン問題を
背景にした世界的な金融市場の混乱で、年後半は
売り越し傾向が鮮明だったとのこと。


最近の日経平均株価の下落について、
なぜ日本の株価が下がっていくのか?という質問を受けますが、
むしろ「これまで何故上がってきたのか?」と質問して
もらいたいところです。


答えは、「外国人による買い」です。


もし外国人投資家がおらず日本人だけだったら、日経平均は
せいぜい12000円が上限ではないかと私は考えています。


すなわち、最近の日経平均の下落は、これまで日本株を
買い進めていた外国人投資家の資金が日本以外の市場に
流出したからです。


実際、去年全体で見れば外国人投資家による投資額は
買い越しが上回っていますが、夏以降の後半になってからは
完全な売り越し基調で、約2.4兆円の外国人投資家の資金が
日本の市場から流出しています。


※「外国人投資家の日本株買・売越し状況」チャートを見る


そもそも、かつて8000円弱だった日経平均株価を押し上げて
くれたのも、紛れもなく外国人投資家だったのです。


つまり、これまで日本の株価が上昇してきたのも、
今になって下落しつつあるのも、日本の実力うんぬんというより、
外国人投資家の動向によるところが大きいということを
認識するべきです。


※「日経平均株価の推移」チャートを見る


日本株は日本人によって上がっていた訳ではない。


外人買いにつられて日本のトレーダーが入ってきただけであって
外人が抜けてしまえば元に戻ってしまう。


これが日本の実力です。


このような状況を作り出しているのは、日本の政治家や役人が
国際感覚に欠けた鎖国主義的な経済政策を展開しているから
だと思います。


もし、日本市場における外国人投資家の重要性を理解していれば、
例えば、米系投資ファンドのスティール・パートナーズによる
ブルドックソースの買収に干渉するような動きを
するはずがありません。


日本の政治家や役人の見識不足には呆れるばかりですが、
今こそ事実をしっかり見つめて認識を改めてもらいたいと
思います。



●実力不足の日本経済。
世界経済の勢力図はどう変わっていくのか?


このような事実に目を向けず、日本の株価が上昇したのは
日本の実力によるものだと勘違いし、


あまつさえ、今になって下がってきたのは米国の
サブプライムローン問題の影響だなどと解説している人が
いますが、大きな見当違いをしていると言えるでしょう。


実際、昨年の世界主要52市場の株価騰落率を見ると、
日本の実力不足は一目瞭然です。


※「主要52市場の株価騰落率の上位と下位10位」チャートを見る


上位は、ナイジェリア、スロベニア、インド、ブラジル、
トルコ、中国、ペルー、エジプトと続きます。


一方、下位は米国、英国、ニュージーランドと続き、
日本はマイナス6.5%で52ヶ国中51位。
アイルランドに続く低い水準になっています。


最下位のアイルランドは、日本を大きく下回る19.6%という
水準ですが、実はこの数字はそれほど悲観視する必要はないと
私は見ています。


アイルランドは、EUの中で米国などからのビジネスプロセス
アウトソーシングなどを数多く引き受ける立場として、
コールセンターや商品開発などの事業で成功し、
急成長を遂げていました。


しかし、EUの拡大に伴い、中東欧の国々が加盟するにつれ、
アイルランドが請け負ってきたコールセンターなどの業務が
チェコのようなさらに労働賃金が安い中東欧の国に流れるように
なってしまいました。


結果、これまで成功してきた分だけ、EU拡大のネガティブな
要素の影響を最も受け、成功の反動として大きくマイナスに
転じているのがアイルランドの現状です。


この点について、日本は大きく事情が異なります。


日本の場合には、特に何かの反動ということではなく、
単に世界経済の中での影響力や存在感が薄らいできていて、
その結果、この低水準に甘んじているという何とも気の毒な
状況なのです。


そして、まさにこの低水準な日本市場の株価に
今の日本経済の実力が現れていると言えるでしょう。


また、日本に限らず年始からの世界株安について
「資金を株から何に投資すればよいか」といった質問を
頂きましたが、全面的に世界中の株が下がっているわけではなく、
株価が堅調な市場もあります。


ですから、まだ株価を維持している側にシフトしていく
というのが、基本的な考え方でしょう。


今後の展開としては、換金性のあるコモディティにシフトして
いくことになると思いますが、いくつか留意しておくべきことが
あります。


例えば、アルミなど製造が比較的容易で、希少価値が高くない
ものは今後も価値が上がらないということです。


また、原油高で注目を集めているバイオ燃料の原料となる
トウモロコシですが、トウモロコシそのものではなく、
トウモロコシ農地が値上がりするだろうということです。


トウモロコシ農地は、石油で言うところの油田に相当します。


しかも、油田とは違い、地面を掘ることなく、高い確立で
収穫物を得られる点で、その農地そのものに価値があるわけ
ですから、農地高騰は必至でしょう。


実際、今、特にブラジルの農地は非常に高騰しています。


このような世界経済の中で、日本はどのような強みを持って
世界に貢献していくのか、あるいは世界の国々と
伍していくのか、という点について不安を感じざるを得ません。


まずは現状をきちんと認識し、そこから目をそむけないこと。


そして、鎖国主義的な愚かな政策をやめること。
政治家・役人の方は大きく意識を変えていただきたいと思います。


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この大前研一のメッセージは、1月20日に
BBT757Chで放映された大前研一ライブの内容を編集したものです。


BBT757Chのサイトでは、他にも大前のメッセージが ハイライト映像として
視聴(無料)できます。


他のメッセージを視聴する
→ http://bb.bbt757.com/news-bbt757.html
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