大前研一「ニュースの視点」Blog

KON623「日立製作所・シャープ・富士重工業~ブランド名と社名の統一はグローバル化の第一歩」

2016年5月27日 シャープ ブランド 富士重工業 日立製作所

本文の内容
  • 日立製作所 2018年度に営業2万人増
  • シャープ 次期社長に正呉氏で調整
  • 富士重工業 社名を「SUBARU」に変更

2万人の営業を採用するのではなく、買収するのが正解


日立製作所は2018年度をめどに海外を中心に営業人員を2万人増やし、13万人とする見通しが明らかになりました。

米ゼネラル・エレクトリックがIoT技術を活用し、航空機エンジンや医療機器の稼働効率を高めるサービス化で先行しており、日立もコンサルティング型サービスの人材を育成し、この事業に経営の軸足を移す考えです。

営業人員を2万人も採用すると言いますが、一体どこから誰を採用するつもりなのでしょうか?

もし全くの新規で採用するとなると、全く日立について詳しくない人ということになります。そのような人材が営業をして、上手く機能するのか?私には疑問です。

かつてIBMは同じような事業を展開するにあたり、巨大なコンサルティング会社を買収しました。日立の製品以外にも精通し、マルチベンダーのトータルシステム提案ができる人材となるとめったにいません。

新規で採用するのは非常に難しいと思います。また給与の問題もあります。日立の給与体系とコンサルティング会社のそれでは大きく異なります。おそらく日立の給与体系で募集をしても、誰も応募してこないのではないかと思います。

私はIBMと同じように「買収」という選択肢がもっとも現実的だと思います。単に営業人員を2万人増加しても、IBMと同じようなことをやるのは非常に難しいでしょう。


経営陣の残留、リストラなし、は日本側が勝手に解釈しただけ


シャープは11日、同社を買収する台湾の鴻海精密工業の戴正呉副総裁を次期社長に迎える方向で最終調整に入りました。

日本語が堪能な戴副総裁は鴻海で郭台銘董事長に次ぐナンバー2で、10月初めを期限とする出資金が払い込まれた後に就任する見通しです。

「高橋氏を始めシャープ経営陣の変更はなし」「リストラはしない」と報じられていましたが、幹部は総退陣に追い込まれ、3000人規模のリストラが実施される状況です。

「約束」が違う、と騒ぎ立てる人もいるでしょうが、実際にはマスコミで報道されたようなことは「約束」されていないはずです。少なくとも「契約書」には一切記載されていないと思います。

勝手にシャープ側が解釈したのか、マスコミが解釈したのか。いずれにせよ鴻海からすれば、契約書の中に記載されていなければ、経営権を握れば全く問題はないはずです。

今回、鴻海がナンバー2の戴正呉氏を送り込んできたのは、すばらしい人事だと思います。日本語が堪能なだけでなく、鴻海で30年以上日本企業とやりとりをしてきた経験もある人です。

また、戴正呉氏以外にも取締役候補を数人送り込む計画をしているようですが、その中には東京大学の機械工学の名誉教授も含まれています。この人は金型の権威者で、これまでも鴻海にアドバイスをしてきた方です。

鴻海は非常によく日本企業を研究し知り尽くしています。人事に関しても、間違った人事をしていないと思います。

一方、シャープは損失隠しが発覚し、もはや何も言えない立場になりました。高橋氏も辞めろと言われれば、素直に従うしかないでしょう。

ここから先は鴻海の言いなりになるしかありません。鴻海のお手並み拝見というところでしょう。


グローバル化の第1歩。ブランド名と社名を統一する。


富士重工業は12日、社名を2017年4月1日付で「SUBARU(スバル)」にすると発表しました。創業100周年を機に、ブランド名と社名を統一するとのことです。

これは私の「ブランド戦略」「世界化戦略」の初日に講義する内容です。グローバル化にあたって、社名とブランド名が異なるのはNGです。早急に変える必要があります。

東京芝浦電気は「TOSHIBA」、東京通信工業は「SONY」に統一しました。松下電器産業は、NATIONAL、PANASONICなど多くのブランド名を持っていましたが、ようやく「PANASONIC」に統一しました。

松下の場合には、ブランド名への統一が遅れたため、1兆円以上を無駄にしていると思います。
日産も今でこそ落ち着いていますが、かつて米国で「ダットサン」というブランドで大きく展開していました。これは非常にいいブランドとして定着していたため、ブランド名を「NISSAN」に統一するにあたって、かなり大きな損失を出したはずです。

富士重工のブランド名への統一も、率直に言えば、遅すぎます。
富士重工の事業を見ると、ほとんどが自動車と航空宇宙です。航空宇宙事業は前身が「中島飛行機」でした。この事業が残っているため、SUBARUという車のブランド名に統一するのをためらったのかも知れません。

遅すぎたとは思いますが、社名を「SUBARU」に統一するのは正しい判断だと思います。すでに浸透しているブランド名を社名に変更するのは、浸透するのも楽ですし、それほどお金もかかりません。

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※この記事は5月15日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は日立・シャープ・富士重工の話題をお届けしました。

創業100周年を機に、ブランド名と社名を統一することを発表した富士重工。大前は、企業のグローバル化にあたって、社名とブランド名の統一は早急に取り組むべきと解説しています。

今回大前が述べたように、成功要因(勝ちパターン)を理解しておくことは必須事項です。

グローバル市場の原理原則とはどのようなものか?
グローバル化に成功している企業の成功要因は何なのか?

問題解決においては、このような視点を持ち、解決策を考えていくことが求められます。

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