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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON193 原油高で小麦を使ったパンが値上がりするのはナゼ?

2007年12月21日

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 米国経済
 ダウ平均 1万3339.85ドル
 インフレ懸念で利下げ観測後退
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●米国インフレを招いた構造的な理由とは?


14日、ニューヨーク株式市場では、ダウ工業株30種平均
(ダウ平均)の終値が前日比178・11ドル安の1万3339・85ドルと
大幅反落して取引を終えました。


同日発表された11月の消費者物価指数(CPI)は
1年5ヶ月ぶりの大幅上昇となり、インフレ圧力の高まり、


また米連邦準備制度理事会(FRB)が、インフレ圧力の
高まりから追加利下げ方針を転換するのではないかとの
観測から、売りが先行しました。


金融事情の不安定なところから考え、金利を下げることで、
ローンを借りている人も、銀行も、楽にしてあげよう
というのが、今のバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長の
基本主張で、先週も0.25の利下げがあったばかりです。


ですが、こちらにばかり注目をしていたら、食料品・油が
高くなるといった米国が最も恐れるインフレ傾向に
なっている状況です。


金融機関が不況的な要素を示していることに加え、
実際にはインフレが起こってしまっているという今の
アメリカの状況は非常に危険性を孕んでいます。


このインフレについては非常に特徴的なことがあります。


今回のインフレの一因としてエネルギー問題が挙げられます。


詳しく説明すると、現在、原油高が原因となり人々の関心が
一斉にバイオ燃料へと向かっています。


そして「これからはバイオ燃料だ。」ということになると、
ブラジルはじめ、世界中の農地が買いあさられ農地が
小麦からとうもろこしに転作されています。


そうすると、小麦の値段が上がり、米国でいうと小麦を
原料とするようなパンなどが値上がりするような
事態を招きます。


今回のインフレは、油と、生活用品等の価格が殆ど同じ理由で
同時に上昇したという特徴があります。



●97年の経済危機に匹敵するほどの先の見えない状況


アメリカという国はインフレに対して非常に繊細な国です。


今回もガソリンは多少値下がりしたにも関わらず、
そのガソリンの値上りから想起されたインフレ懸念により、
米国は「先行きが暗い」という判断につながり、
米国株が売られるという構図になっています。


私が記憶する限り、アメリカ発の経済危機を心配しなくては
ならない事態というのは初めてのことです。


ずっと続いているユーロ高といった要素も含め、
来年早々から、バーナンキFRB議長にとっては非常に難しい
舵取りを要求されることになると思います。


また、日本にとっても、このアメリカ発の経済危機という事態は
重く受け止めて、慎重に対応するべき事態です。


かつて、アジア通貨危機の余波で韓国経済が破綻し、
国内では北海道拓殖銀行や山一證券が破綻するという
前代未聞の事態に陥った1997年にも似たような状況であると
認識し、新しい年を迎える必要があるのではないかと
私は見ています。


経済がどちらの方向に向かうのか、まるで分からないような
状況です。


誰かが雷管を踏んだら、一気に爆発する危険性を孕んでいます。


今後のバーナンキFRB議長の対応には、期待とともに、
いくら注意を払っても払いすぎるということは無いことを
あらためて強調しておきます。


                            以上


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