大前研一「ニュースの視点」Blog

〔大前研一「ニュースの視点」〕KON192 テレビは漫画と同じ様なものだ

2007年12月14日

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不適切報道問題
マクドナルド報道で謝罪 テレビ朝日「報道ステーション」
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●テレビ報道に真実の欠片などない


テレビ朝日「報道ステーション」で、古舘伊知郎キャスターが
謝罪しました。


これは、先月27日の放送で、マクドナルドの元店長代理の
女性が、マクドナルドの店員の制服を着用し、
「店長代理」の名札をつけ、一部商品の調理日時の改ざんが
あったと証言したものについて、


放送を見た視聴者から「辞めた人が制服を着ているのはおかしい」
などの指摘が寄せられたことを受けたものだということです。


ただ、私に言わせれば、このことが記事になること事態が
「何を今さら言っているの?」という印象を拭えません。


というのは、テレビの報道に真実の欠片などないということを
私は多くのテレビ経験の中で学んできたからです。


例えば、一般的にも「ついに!初めて人類が足を踏み入れた
土地!」などというテレビ番組がありますが、


それが本当に人類初なのかと疑問に思うことがあります。


実際、私もテレビに出演していた頃、ディレクターや
プロデューサーから私が本当に言いたいことではなく、
「これを言ってくれないと困る」と強制され、番組自体を
打ち切ったことがあります。


テレビ報道の実態から言えば、多少の違いこそあれ、
全てのテレビ番組の本質は似たようなものです。


対談番組だというから出演してみれば、私が議論において
相手をやり込めていると、突然、議論の流れを無視して
CMに切り替えられることもしばしばありました。


また、私が元マレーシア首相のマハティール氏に会いに
行く時に、単に私に同行しただけなのに、それが
「マハティール氏独占単独インタビュー」というような
番組になってしまったこともあります。


私は、こんなことを数多く経験しながら、もはや相手にするのも
馬鹿らしくなったので、テレビ業界からはとっくに足を洗って、
今は自分の番組(スカイパーフェクTV ! 757ch)で
自分の主張を展開しているというわけです。


●テレビは漫画と同じようなものだと考えるべき


テレビ業界の問題をひと言で言えば、
業界全体が「自分の頭で考えない」人たちで溢れかえっていて、
節操のない体質が染み付いていることだと私は思います。


自分で取材することができず、自分でストーリーを作ることが
できないのです。


だから、ネタの持ち込みがあると安易にそれに飛びつきます。


挙句、視聴率ばかりに重点を置いた脚色と演出によって、
事実を誤解されるような番組ばかりが制作されています。


この種の体質は、民放・NHKを問いません。


NHKでも、1時間のインタビュー内容を私に相談することなく、
25秒ほどに縮めて放送されたことがあります。


確かに、「やらせ」にはならないでしょうが、
私が言いたいことが正しく伝わらず、全く別の解釈をされて
しまうという意味では、本質は同じだと私は思います。


このような状況ですから、私たち国民としては
「所詮、テレビとはそういうものだ」と思うことが大切です。


漫画を読んで本当のことだと思わないのと同様、
テレビを見ても本当のことだと思わない、
というレベルで考えるべきだと思います。


数十年に渡って染み付いたテレビ業界の体質が変わるのを
待つのは非現実的です。


そして、何度もこのコラムの中で主張していますが、
私たち国民一人ひとりが、あらゆる情報を鵜のみにすることなく、
自分の頭で考える習慣をつけることが、あらゆる問題に対して
重要なのです。


テレビなどに惑わされない自分の考えが持てるようになって
もらいたいと思います。


                          以上


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