若者の給料をあげても、日本の景気は回復しない
2016年春の労使交渉で、主要企業が16日、賃金水準を底上げするベースアップや一時金を労働組合に一斉回答しました。
これを受けて日経新聞社が経営者を対象に行なった緊急アンケートによると、最高水準が相次いだ2015年度に比べるとベアが縮小する企業が約6割で、賃金を決める際の理由については、半数近くが「業績の先行きが不透明」をあげたことがわかりました。
安倍首相からの圧力もあって、企業側の対応も大変だったと思います。ベアは一時金と異なり構造的に残るものですから、今回はかなり腰が引けたことでしょう。
安倍首相など政府が期待するのは、「給料を上げる→使うお金が増える→景気が回復」という回転ですが、そもそもこの考え方が根本的に外れています。
今の日本でお金が余っているのは高齢者であって、勤労所得者ではありません。勤労所得者の給料を2%程度上げてみても、ギリギリの生活を送っている層ですから、消費に回ることはほとんどないでしょう。
私は何度も指摘していますが、働いていない高齢者が握っている家計金融資産1700兆円の大部分を消費につなげるように、安心して使えるようにしない限り、日本の景気は良くなりません。日本の景気とベアとは全く関係ないと考えるべきです。
安倍首相にしても、そのアドバイザーにしても、この点を理解していないのか、ずっと的はずれです。
民泊が変えるキャッシュフローモデルの未来図
フィデリティ投信の調査結果によると、30歳代で老後に備えた資産形成を始めている人が62%に上ることがわかりました。特に保有資産が100万~500万円の層が64%と前年比5ポイント上昇しています。
フィデリティ投信としては資産運用に促したいのでしょうが、残念ながら「運用益がプラス」になっている人は少ないのが実態でしょう。
私に言わせれば、このような発表をするなら「この投資は大丈夫だ」というファンドの1つでも示して欲しいと思います。
若い頃から老後に備える、というのは心配症の日本の国民性でしょう。若いころなら、保険のほうが適していると私は思います。一か八かという形になりますが、運用益が出ない可能性が高い資産運用よりも、万一のことがあったとき、保険があれば家族が路頭に迷わずにすむからです。
老後に備えた資産運用という意味でいうなら、「不動産からキャッシュを生む」「キャッシュを生む不動産」に注目すべきです。REITも戻ってきていますし、エアビーアンドビーの影響もあって、今後ますます期待できると思います。
銀行預金の金利があまりに低い日本ですから、銀行に預けていても老後に備えることはできません。つまり、キャッシュを金利で回すのは難しいということです。そうではなく、(不動産という)資産をキャッシュに変えていく、という発想です。
例えば、蓼科にリーズナブルな別荘を買うとします。週末は蓼科で過ごし、その間都心の自分の家を貸し出します。すると、別荘のローン分を都心の家の家賃で稼ぐこともできたりします。そして、老後は引退して蓼科で暮らせばいいのです。都心の家はずっと稼ぎ続けることができます。
こういう「運用」ができるかどうか。自分が持っている資産で、ローンを上回る稼ぎが出せる時代になっています。この時代の流れを抑えて、老後に備えていくべきだと私は思います。
民泊が認められるようになって、従来のキャッシュフローモデルから大きく変化しようとしています。キャッシュと不動産を組み合わせて、資産がキャッシュを生み、キャッシュが不動産を購入し、その不動産が再びキャッシュを生む。
このサイクルを回し始めることが、非常に重要だと私は感じています。フィデリティ投資ではここまで教えてくれないでしょうから、自分で勉強してぜひ身に付けてもらいたいと思います。
そして、それ以上に大切で最も投資効果が高いのは、「自分の頭に投資」することです。どんなに時代が変化しても、お金を稼げる自分になっていることが最も重要だと私はいつも思っています。
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※この記事は3月20日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週はキャッシュフローモデルについての話題をお届けしました。
記事中、時代が変化しても稼ぐことができるよう、"自分の頭"に投資することが重要であると、大前は解説しています。
変化のスピードが速い現代のビジネス環境。過去の前例にとらわれずに、自分で答えを創り出していく力、すなわち"問題解決力"がすべてのビジネスパーソンに求められています。
このサバイバルツールを身につけ、自ら未来を切り開く姿勢と考え方を持つことが、確かな成果を出す上で必要不可欠です。
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