大前研一「ニュースの視点」Blog

KON607「ミクシィ・ニトリHD・キヤノン・シャープ~ゲーム業界は1勝14敗で成立する大相撲のようなもの」

2016年2月5日 キヤノン シャープ ニトリHD ミクシィ

本文の内容
  • ミクシィ 連結純利益590億円見通し
  • ニトリHD 白井俊之副社長が社長昇格
  • キヤノン 真栄田雅也専務が社長兼COOに昇格
  • シャープ 3000億円出資など柱の再建策提示

1勝14敗で成立する大相撲のようなもの


ミクシィは21日、2016年3月期の連結純利益が前期比79%増の590億円になるとの見通しを発表しました。

過去最高を見込んでいた従来予想(58%増の520億円)からさらに増益幅が拡大。世界の累計利用者数が3000万人を突破したスマホゲーム・モンスターストライク(モンスト)の課金収入拡大が寄与しているとのことです。

11年~14年にかけて利益が出ない時期が続き「ミクシィは終わったか?」と言われましたが、モンスターストライクで一発逆転満塁ホームランでした。純利益が590億円ですから、ものすごいホームランです。

今後、モンスターストライクに陰りが見え始めると、会社としてどうするのかを問われることになるでしょうが、次も狙うのはホームランしかありません。

この業界では、小さい当たりを出してもそれほど意味はありません。ホームランを当てられるかどうか。それがなかなか当たらずに空振りすることもあり、苦労するわけです。

任天堂の故・山内氏が「我が業界は、1勝14敗で成立する大相撲のようなもの」と言っていましたが、まさにその通りです。山内氏曰く、大企業は「8勝7敗」を目指すから失敗すると指摘していました。

とは言え、任天堂ですら最近は「(大当たりの)1勝」を当てるのが難しくなってきていますから、そう簡単なことではないのも事実です。


ニトリ白井氏が表舞台に/キヤノン御手洗氏は残るべきではない


家具小売り国内最大手のニトリホールディングス(HD)は26日、白井俊之副社長が社長に昇格する人事を発表しました。

創業者の似鳥昭雄社長は代表権を持つ会長に就きます。執行体制の若返りとともに、中核事業会社ニトリの社長を務める白井氏を両社のトップに据え、意思決定の迅速化を狙う考えとのことです。

似鳥氏が代表権を持つ会長なので、実質的にはほとんど何も変わらないと思います。ニトリは、似鳥氏と白井氏がずっと二人三脚でやってきた会社です。白井氏は大学卒業後にニトリに入社し、長年パートナーとして一緒にやってきました。

ニトリは自社で製造販売する収益性の高いビジネスモデルです。今日のニトリを創りあげた功労者が、似鳥氏と白井氏の2人です。似鳥氏が会長に残るため、実態はさほど変わらないとは思いますが、白井氏のような人が社長に就任し、表舞台に出てくるのは良いことだと思います。

* * *

キヤノンは27日、社長兼最高執行責任者(COO)に真栄田雅也専務が昇格する人事を固めました。御手洗冨士夫会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)は会長兼CEOとしてグループ全般の経営の指揮を執るとのことです。

私は御手洗氏が会長兼CEOに残ることに、賛同できません。一時期内田氏に社長を譲った時期はありますが、結局この10年間もほぼ御手洗氏が経営の舵取りしてきました。そして、その間の業績は低迷しています。

御手洗氏が居なくなると困ることもあるでしょうが、私に言わせれば最初に社長に就任した1995年から20年間の時間があったわけですから、自分が居なくても問題ない体制を作り上げておくべきでしょう。

真栄田氏はカメラ部門での功績が非常に高かったと言われます。現在、カメラはスマホに吸収されつつあり、将来の伸びは期待できません。

一方でセキュリティ関連事業など、まだまだ伸びると思います。この分野への進出などを考えても、御手洗氏が会長兼CEOとして残ることに疑問を感じます。


産業革新機構に経営力はない


官民ファンドの産業革新機構は、シャープ本体に3000億円を出資することなどを柱とする支援策を同社に提示しました。これには、高橋興三社長ら3首脳の退任を求めていることなども含まれています。

鴻海に6000億円で買収してもらえばいいものを、「技術の流出」などと言って、産業革新機構に任せるのは理解に苦しみます。産業革新機構など、経営力は全くありません。まるでLEGOでも組み立てるように、事業同士をくっつけようとするだけです。

太陽光なら昭和シェルと一緒に、等と言われても、企業として経営のやり方がまるで違うので、「ただくっつけただけ」で上手く行くはずがありません。その上、産業革新機構は税金を使っているわけですから、目も当てられません。

鴻海の郭台銘会長としては、シャープを買収することで自らモノを作るような「経営」にチャレンジしたいのだと思います。そこには、アップルの受注生産では得られないものがあるのでしょう。現時点で言えば、1兆円くらい失っても問題ない経営状態ですから、シャープを6000億円で買収しても全く問題はないでしょう。

---
※この記事は1月31日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週はミクシィの企業動向をお届けしました。

同社の増収増益に大きく寄与したモンスター・ストライク。大前は、ゲーム業界ではホームランを当てることが重要と解説しています。

自社が属する業界構造を理解することは、勝ちパターンの発見につながってきます。

業界の原理原則はどのようなものか?企業の成功要因は何なのか?

業界の勝ちパターンを発見するためには戦略的思考の体得が求められます。この視点を持って業界を理解することが、問題解決において必要なのです。

★ 問題解決のプロフェッショナルが登壇!スプリングセミナー2016開催(東京・大阪)
http://tr.webantenna.info/rd?waad=xBLMribY&ga=WAAAAk-1

問題解決力トレーニングプログラム

問題解決力トレーニングプログラム

大前研一 ニュースの視点 Blogトップへ

  • メルマガ

    ニュースの視点メルマガ登録

最近の投稿記事

ニュースの視点メルマガ登録

ブログの更新情報

バックナンバー

  • facebook
  • twitter

各種ソーシャルメディアで様々な情報をお届けしております。

大前研一 ニュースの視点