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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON185 世界経済の潮流から独り取り残される日本経済

2007年10月26日

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 世界の海外直接投資
 06年は、1兆3059億ドル(約152兆円)
 世界的M&Aブームを背景に、3年連続で拡大
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 ●クロス・ボーダーM&Aを背景とした直接投資の増加、
  途上国・ソ連圏の台頭。


 世界的なM&A(合併・買収)ブームを背景に3年連続で
 海外直接投資が拡大しています。


 16日、国連貿易開発会議(UNCTAD)が発表した
 2007年版世界投資報告によると、06年の世界の海外直接投資は
 前年比38%増の1兆3059億ドル(約152兆円)に上り、
 過去最高だった00年の1兆4110億ドルに迫る勢いになったことが
 分かりました。


 世界全体の海外直接投資額の推移を見ると、
 ITバブルが崩壊した00年をピークに下がり始め、
 04年から徐々に回復してきていることが分かります。


 ※「世界全体の海外直接投資額推移」チャートを見る


 06年と00年を比較すると、旧ソ連圏や途上国の占める割合が
 拡大していることが見て取れます。


 これは、先進国だけではなく、その他の国々も経済上重要に
 なっているという、大きな世界経済の特徴を示していると
 私は思います。


 クロス・ボーダーM&Aの増加を背景とする直接投資の増大
 という世界の潮流もあり、最近では海外で講演する際、


 私は「グローバリゼーション」という言葉の生みの親
 として紹介されることが増えてきました。


 こういった紹介を受けるのは大変光栄ですが、
 80年代には世界で最も活動的だった日本企業による投資が
 今では見る影もないほどに消極的なために、


 近年のグローバリゼーションの事例として日本を紹介できない
 のは非常に残念な限りです。


 ●世界経済から独立独歩の日本


 海外直接投資受入額の上位を見てみると、
 米国、英国、フランス、ベルギー、中国と続きます。


 ※「海外直接投資受入額上位13カ国と日本」チャートを見る


 海外直接投資受け入れ額は先進国、発展途上国、旧社会主義圏の
 いずれでも増加しています。


 先進国向けが8割を超えていた00年に比べると、
 途上国向けの割合は29%、旧社会主義圏向けも5%に上昇し、
 
 直接投資の波が世界各地に広がっていることを裏付けた結果
 となっています。


 ところが、驚くべきことに日本は先進国として上位に位置するどころか、
 投資の流出が流入を上回っており、


 投資受入額はマイナスになっています。


 
 世界経済の動きからすると、
 日本だけ世界の他の国と全く違う動きをしているのです。


 ここまで異なる動きをしてしまうのは、不思議でなりません。


 世界の資金の流れは非常に敏感です。
 世界の資金が日本に流れてこないという事実そのものに、
 日本経済が抱える問題の一端が垣間見られます。


 他方で、投資をする側としても最近の日本は精彩を欠いています。
 今日、日本企業が、80年代のように活発に世界中で投資をすることは
 難しくても、少なくとも世界経済の潮流に対応可能な体制で
 いてもらいたいところです。


 バブル崩壊の後遺症か今の日本経済は、
 まるで「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」
 ように消極的に過ぎると感じてしまいます。


                         以上


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