大前研一「ニュースの視点」Blog

KON597「国内経済・アベノミクス・国内企業業績・内部留保課税~政府はまったくもって経営・経済を理解できていない」

2015年11月28日 アベノミクス 内部留保課税 国内企業業績 国内経済

本文の内容
  • 国内経済 7-9月期GDP
  • アベノミクス 息切れしている~ウォール・ストリート・ジャーナル~
  • 国内企業業績 経常利益率6.6%で9年ぶり過去最高
  • 内部留保課税 財務省内での検討を否定

アベノミクスは最初から方向性を間違えている


内閣府が16日発表した2015年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.2%減、年率換算では0.8%減になりました。企業の設備投資は1.3%減と、2四半期連続の減少。輸出や個人消費も力強さを欠き、景気の足踏みが長引いています。

安倍首相の演説を聞いていると、「あれも伸びて、これも伸びて」と順調そうに聞こえますが、実質GDP成長率の推移を見れば、明らかに間違っているとわかります。安倍首相が就任してからのGDPの内訳を見ると、公共投資を一部伸ばしたり、直近では輸出が伸びたりしていますが、もっとも重要な民間消費支出を伸ばせていません。

この厳しい事実が突きつけられているにも関わらず、未だに黒田バズーカーに期待しているのは日本だけでしょう。

米ウォールストリート・ジャーナル紙は17日、安倍政権の経済政策について「アベノミクスが息切れしている(Abenomics Sputters in Japan)」と題した社説を掲載しました。アベノミクスの財政出動で「日本の借金は国内総生産(GDP)の250%に近づく一方、銀行の貸し出しが増えず、デフレが続いている」と指摘しています。

このようなことは、私が数年前から一貫して指摘している通りです。安倍首相は反論したそうですが、誰がどう見ても「事実の数字」を見れば日本経済は休止しています。当初の予定では、2年後に物価上昇率と言っていたのに、未だ達成できていません。

もっと謙虚になって、経済が伸びない原因を分析するべきです。経済学者もいい加減な姿勢で安倍首相にアドバイスするのではなく、きちんとした分析をして国民に説明しないと恥ずかしいでしょう。

私に言わせれば、原因の分析もせず、ただ同じ対策を繰り返すというのは理解に苦しみます。息切れするのも当然でしょう。

20世紀の古い経済学を振りかざして「もう1発、黒田バズーカー」などと言っている場合ではありません。今の日本経済が停滞している理由は、何度も私は説明していますが、「低欲望社会」だからです。この社会構造において、GDPを伸ばしていくのは容易ではありません。

日本のように低欲望社会が進むと、20世紀の経済学を使っても「全くお金が経済に吸収されない」のは実証済みです。日本の「低欲望社会」の原因を究明し、野心と欲望を国民が持つようにすることが、今最も求められている対策です。


内部留保を「設備投資」「給与」に回せというのは、全くのお門違い


政府は、いまだに「低欲望社会」に陥っている日本経済停滞の根本原因を理解しておらず、約320兆円もある企業内部留保の資金を「投資に回せ、給与に回せ」と主張していますが、全くの的外れです。

確かに、企業業績は好調です。日経新聞は、15年4~9月期決算を終えた3月期企業1530社(金融など除く)の今期見通しを集計しました。経常利益率(原則連結)は6.6%と、金融危機前の07年3月期の6.5%を上回り、経常利益の合計額も今通期で34兆887億円と、過去最高だった前期から6.9%増える見通しです。

業績が好調だからといって、政府が求めるように「設備投資」「給与」にお金を使うのは現実的な経営の観点からすれば、あり得ません。海外での設備投資なら需要があるでしょうが、日本国内には「実際にやりたい設備投資」はないでしょう。

政府は全くもって経営・経済を理解できていないと言われても仕方ないレベルだと思います。政府は、法人税減税を理由に「設備投資」「給与の引き上げ」を経団連に要求しているようですが、「法人税を引き下げて残るのは何か?(内部留保と配当)」ということすら分かっていない証拠です。

また一部では、企業の内部留保に課税する動きもあると言われていますが、さすがにそれに対しては麻生財務相も菅官房長官も否定的な見解を示しています。

* * *

麻生財務相は20日、自民党内で企業の内部留保への課税を検討する動きがあることに関し「二重課税になり得るのはいわずもがなの話だ。内部留保課税の話を(財務省内で)検討させているという事実はない」と述べました。

また菅官房長官も内部留保課税について「そこまでしなければ経済界のマインドが変わらないのか、政策的な議論を深めることが先決だ」と、慎重な姿勢を示したとのことです。二人とも内部留保課税に否定的な考えを示す一方で、現在の企業姿勢には疑問符をつけ、企業が内部留保せずに「設備投資」「給与」にお金を回すようにすべきとの見解を示しています。

結局、麻生財務相も菅官房長官も、大切なことを理解できていません。政府が経営のことをわかりもしないで、思いつきレベルの提言をするのはいい加減やめてほしいと思います。

またアドバイザーを求めるなら、政府は経済学者ではなく、実際に経営経験を積んだ人に依頼するべきです。いずれにせよ、今の政府の動きはあまりにお粗末に過ぎます。

的外れの経営指南をしている場合ではなく、基本的な「アベクロ経済政策」が機能していないのですから、まずは謙虚になって徹底的に原因を究明し、対策を立て直すべきでしょう。

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※この記事は11月22日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


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今週は国内経済の話題をお届けしました。経営を理解していない政府。大前は、学者ではなく経営経験を積んだ実務家にアドバイザーを依頼すべきと指摘しています。

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