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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON184 経団連って何するところ?その役割と国内雇用問題の本質

2007年10月19日

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 日本経団連 福田首相に8項目の政策要望
 野党4党 御手洗氏を参考人招致
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●経団連(財界)は、経済施策に焦点を当てた課題に取り組むべき


1日、御手洗冨士夫・キヤノン会長(日本経団連会長)は
社会保障と歳出入を一体にした改革など八項目の政策課題への
取り組みを新政権に要望しました。


※「日本経団連による福田首相への要望」チャートを見る


要望には、生産性の向上、道州制による分権改革、
大学改革の推進、子育て支援策の強化、環境対策としての
ポスト京都議定書の枠組み作りなどが含まれています。


それぞれの政策課題の重要性を否定するものではありませんが、


私は、常々、「経団連(財界)が取り組むべきテーマは
このようなものでいいのか?」と疑問を感じています。


「日米同盟の堅持」「政治資金の透明性向上」「環境対策」
「子育て支援の強化」なども、もちろん日本の重要な課題です。


しかし、経団連(財界)という立場からすると、
より直接的に「日本企業が世界の企業と対等に競争できる
ために必要なこと」に焦点を当てた課題に取り組むべきだと
思います。


例えば、法人税や所得税の税率改定、相続税の廃止、
外国語教育の徹底などが考えられます。


世界の国と比べて割高である法人税や所得税の税率は、
日本の経営者のモチベーションに影響を与える可能性が
あると思います。


また、グローバル化の一環として、特に英語習得の重要度が
高まっていることは、誰もが認識するところでしょうが、
相変わらず日本人の英語力は世界の中で低レベルのままです。


例えば、ドイツでは、米国企業を買収したドイツ企業の
経営者が、英語を習得していないと部長以上の役職に就けない
と発言した途端、一斉に家庭における英語教育への意識が
変わったという事例があります。


財界ができることというのは、まさにこういうことなのだと
感じます。


「うちはこういう人材しか採用しない」と明示すれば
世の中が変わると思うのです。



●国内雇用問題は企業の責任ではない。
                まず、法整備から始めるべき


2日、民主、共産、社民、国民新の野党4党は
衆参両院の国会対策委員長会談を開き、


御手洗冨士夫・キヤノン会長(日本経団連会長)を
衆参両院予算委員会に参考人招致すると決定したようです。


実態は派遣労働なのに業務請負を装う
「偽装請負」問題などを国政の場で追及する必要があるとの
判断をしたとのことですが、


私に言わせれば、
これは根本的に法律の整備に問題があることです。


つまり、政府は、どのように企業が高い日本の人件費に
対処するかを十分考慮していないことが問題なのです。


それを棚上げにして問題を追及されるなら、
「では、日本ではなく、海外に行きます」と、
企業は堂々と主張するべきだと思います。


キヤノンやトヨタ、リコーのような大企業が
こぞって海外へ出ると主張すれば、さすがの政治家でも
事態の本質に気づくでしょう。


政治ショーのために、本質的ではない議論に時間を費やすのは
もったいないことです。


では、具体的にどのような法律の整備が必要かというと、
例えば、「移民」についての法律が挙げられます。


ロボットによる労働の自動化も限界に達し、
海外に労働拠点も移さない、となると、国内雇用の確保の
ためには移民を受け入れる必要があります。


これは世界の例を見ても明らかです。


ですが、今の日本の法律では、いわゆる日系と呼ばれる
人たちへの優遇が強い制度になっていますが、


労働者を判断するためのより正確な基準を設けるべきだと
思います。


例えば、日本で働くために必要なスキルを習得できる
トレーニングや試験を受けていることを
就労ビザ発給要件にすることなどが考えられます。


経団連には、財界という立場から、
日本企業が世界で外国企業と競争できるための施策に
集中すれば良いと私は思います。


また、同時に政治家の方にも、経団連の役割を
再認識していただきたいところです。


                         以上


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