- 本文の内容
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- 中台関係 1949年の中台分裂後初の首脳会談
- 南シナ海 「航行の自由」作戦 米国側はどう報じているのか?
中国との首脳会談の定例化は、馬英九氏の最後の一仕事
中国の習近平国家主席と台湾の馬英九総統は7日、シンガポールで会談しました。両首脳は中国と台湾が不可分の領土であるとする「一つの中国」の原則のもと、経済・文化交流を拡大することを確認しました。
双方どちらも「1つの中国」を主張していますが、思い描いている「1つの中国」像は異なります。
中国:中華人民共和国(毛沢東)であり、台湾:中華民国(蒋介石)となります。
実際のところ、両者が1つの国になることがあるのか?というと、私は難しいと感じています。さらにいえば、今の中国に台湾を飲み込む資格がありません。
台湾は中国系の国家として初めて民主主義国家として国家元首を決める国になりました。人口2300万人、憲法、通貨、軍隊などの統治機構を持っており、国境も明確です。主権国家論でいえば、完全に1つの国として成り立っています。
中国は香港と同じように、掠め取ろうと画策するかも知れませんが、軍隊の強さや米国との関係性を見ても、完全に征服するのは至難の業だと思います。
また、中国では台湾を征服したところで、今の台湾を運営するノウハウがないので、経営が成り立たないでしょう。
台湾には危機感を抱えている人が多く、そのため語学の勉強に励み、米国への留学などにも積極的で起業をする人も多くいます。技術力、経営力は群を抜いています。北京語が話せる高スキルの人材です。
このような人たちが、資本主義について何もわからない中国に来てくれたことで、中国はかなり助けられています。鴻海は100万人の雇用を生み出しています。
中国と台湾の関係性は、「今まで通り」で何も問題がありません。ではなぜこのタイミングで両首脳会談が行われたのか?というと、私は馬英九総統の「最後の一仕事」だと思っています。
来年1月の総統選では蔡英文氏が台湾総統になることが、ほぼ確実と言われています。馬英九氏が今年から中国との首脳会談を再開し、「定例化」することで来年以降、蔡英文氏も中国との関係性を築きやすくなります。
そこを見据えて、馬英九氏が最後の台湾への貢献として実現させたのだと思います。
南シナ海問題に、日本は関係を持たないほうがいい
「南シナ海『航行の自由』作戦、米国側はどう報じているのか?」という記事が一部メディアに掲載されました。
戦略学者の奥村真司氏が米国サイトの記事を紹介・解説しています。領海と経済的排他水域の領有権について、国連海洋法条約の定義を示す一方、米国と中国でその解釈が異なると指摘しました。
現在の米国の行動はまだメッセージ性が弱いものの、我々は情勢を注視していく必要があるとしています。
米国も中々いい加減な国で、国連海洋法に基づいて12カイリに入っていると主張していますが、そもそも米国は国連海洋法を批准していません。慣例として守っているという形です。
一方の中国は国連海洋法を批准していますが、守っていません。中国は、かつて日本が沖ノ鳥島の周辺の岩礁を埋め立て、護岸工事を行った事例を参考にして「領土」として主張しているので、日本としてもあまり大きな批判はしにくいかも知れません。
米国というのは、常に自国の正当性を主張する国ですから、日本が一緒になってこの手の問題に絡むと非常に厄介だと思います。
私としては、今回の問題には関係を持たないのが一番得策だと思いますが、米国に要請される可能性はあるでしょう。何とか突っぱねて、米国に巻き込まれないようにしてもらいたいところです。
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※この記事は11月8日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は中台関係の話題についてお届けしました。記事中、大前は台湾の高スキル人材の存在に注目しています。
さて、グローバルな環境でも通用する人材の要件とは何でしょうか?その一つに挙げられるのが、論理的思考力です。
異なる文化や意見を持った相手を前にしたとき、論理的思考力は求められてきます。この力なくして、グローバルにおける活躍はあり得ません。
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