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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON181 ≪サブプライム問題≫○○が米国以上に危険をはらんでいる

2007年9月28日

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 米金利 FRB政策金利を0.5%引き下げ
 住宅ローン救済策を可決
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●米サブプライムローン問題は、
        金利の上げ下げだけで解決できるものではない


18日、米連邦準備制度理事会(FRB:The Federal Reserve Board)
は、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の
誘導目標を0.5%引き下げました。


サブプライムローン問題を発端とする金融不安が収まらず、
米国経済全体が悪化するリスクが高まったことへの
対応とのことです。


ここ数年の米金利の推移を見てみると、04年から
かなり小さく段階的に金利を上昇させてきたことが分かります。


これまでの上昇率からすると、今回の0.5%の引き下げは
予想を超えて大きく下げたと感じる人も多いでしょう。


※「日米欧の政策金利の推移」チャートを見る


また、FRB議長のバーナンキ氏は、今後の更なる金利引下げの
可能性も示唆しています。


実際には、さらに金利を下げることはないと
私は見ていますが、このバーナンキ氏の態度は市場への
牽制としては十分な効果があると思います。


ただ、FRBが何をやったところでサブプライムローン問題
そのものが収まっていないという事実は変わりませんし、
簡単に収まるものでもありません。


ビジネスウィーク誌(2007年9月17日号)によると、


2007年8月までに表面化した金利の上昇により返済に懸念のある
住宅ローンの総額は2,630億米ドル(約30兆円)に達し、


2008年12月までに7,000億米ドル(約80兆円)相当の
住宅ローンに返済の懸念が生じるであろうと
一部では報じられています。


金利の引き下げだけでは到底対応できるものではなく、
最終的に経済への破壊的な影響が大きくなるなら、
徳政令のような形で国が関与しなければ問題は解決できない
でしょう。


その際、注意しなければならないのは、日本の90年代に
行われたような破綻を伴う処理方法を採用しては
ダメだということです。


抵当権を行使し、競売物件が大量に市場に出回れば、
住宅価格は急落し、健全なプライム部分にも影響が出てきて、
収拾がつかない状況に追い込まれる可能性が高いからです。


この部分をどのように対処するかということが、
思案のポイントだと思います。



●潜在的に米国以上の危険性をはらんでいる英国の不動産市場


米国ばかりが注目を浴びているサブプライムローン問題ですが、
実は英国の方が深刻な事態になる可能性があるという点を
見落としてはいけません。


実際、米国と英国において、可処分所得に対する家計の負債を
比べると、米国の127%に対して、英国は166%となっています。


また、英国の住宅価格の上昇率は、米国よりも高い数値を
示しています。


この点から見ても、住宅価格が上昇する前提で借金をしていて、
住宅価格の下落により大きな被害を被る構図は、
英国にとってより深刻な問題になる可能性が高いと
言えるでしょう。


今、英国ではイングランド銀行が、ノーザン・ロックへの
救済対応について世界から批判を浴びていますが、


私はこの問題そのもよりも、これが英国の不動産市場へ
悪い形で影響を及ぼすことがないかを心配しています。


現在、英国は17年連続で経済成長を続けていて、
非常に景気が良い状態ですが、この経済成長は住宅価格の
上昇が大きな要因になっていると思います。


もし、英国の不動産市場に眠る潜在的なリスクを
呼び起こしてしまったら、信用不安に陥り、
継続してきた英国の経済成長が落ちこむ可能性があるという
危機感を感じることが大切ではないでしょうか。


                           以上


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