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〔大前研一「ニュースの視点」〕KON179 小手先の改善では意味がない。年金制度は全面的に一新すべきだ。

2007年9月14日

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 国民年金未納 4年ぶりに増加
 06年度納付率66.3%
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●現状の年金制度の問題点とは?


2006年度の国民年金保険料の納付率は、前年度比で
0.8ポイント低い66.3%でした。


これを受けて、社会保険庁は2009年度以降の
目標値・納付率80%を再検討するとのこと。


納付率は2003年度から徐々に回復していましたが、
相次ぐ社会保険庁の不祥事がひびき、
4年ぶりの低下となりました。


これだけ社会保険庁の不祥事が明るみに出てくれば、
納付率が低下するのも当たり前です。


窓口で「また横領するつもりじゃないのか」と言われたら、
何も言い返すことができないというのが現状だと思います。


国民の怒りは「年金なんか払ってたまるか」という心情に
発展しています。


年金制度の改善を考える際、この心理的な問題を
無視できないこと、


また、年金保険料の支払いを強制することも
難しいということを認識するべきでしょう。


今回は、社会保険庁の不祥事により年金未納問題へと
発展しましたが、そもそも年金制度のシステムにも
問題があると私は考えています。


例えば、2001年10月に導入された確定拠出年金(日本版401k)
ですが、


企業が拠出できる金額に比べ、個人が拠出できる金額が少なく、
また、運用成績についても利回りが悪くなっているのが現状です。


さらに、「年金口座はあくまで自分のもので、
会社を辞めても、転職先で継続することができる」という
建前はあるものの、手続きが面倒な上に利回りが悪いために、


手続きを忘れて支払ったお金が宙に浮いた状態に
なっている人が約8万人(2006年度、国民年金基金連合会調査)
もいるのです。


●小手先の改善ではなく、全面的に新制度へ移行すべき


かつて米国は、今の日本と同じく、大きな政府になり
過ぎてしまったという問題を抱えていました。


それを乗り越えるための施策の1つが、米国版401kでした。


米国版401kで重要なのは、年金の運用・管理を
国が行うのではなく、個人による拠出が基本で、
企業はそれに上乗せ拠出が行えるような体制が整えられて
いることです。


転職をして企業が変わっても、自分の年金口座を引き継いで
いけるようになっています。


今後、日本の年金制度の体制を考える際に、非常に参考になる
事例だと思います。


現状において混乱の極みに達している今の年金制度のままでは
らちがあきません。


日本も新しい年金制度を作って、全面的に移行させるべきだと
思います。


「誰が納付していて、誰が納付していないか」分からない
部分については、今からはっきりさせることは不可能だと
思います。


それよりも国がこの責任についてきちんと謝罪すると共に
社会保険庁を解体、


一連の不祥事に関与した同庁関係者の責任を追及し、


その上で新しい制度への移行を考えるのが
建設的な考え方だと思います。


今の年金問題を解決するには、小手先の改善ではもはや手遅れです。


どこへ行っても記録がはっきりしているという
システム基盤を先に作り上げ、その上で新制度を運用する
以外に道はないと私は感じています。


                              以上


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