大前研一「ニュースの視点」Blog

KON585「マイナンバー・消費増税対策・ゆう活・安全保障関連法案~マイナンバーによって国民の生活はどう変わるのか?」

2015年9月11日 マイナンバー ゆう活 安全保障関連法案 消費増税対策

本文の内容
  • マイナンバー 改正共通番号制度
  • 消費増税対策 軽減税率の骨格まとめ
  • ゆう活 朝型勤務「ゆう活」大失敗
  • 安全保障関連法案 違憲と言わざるを得ない

マイナンバーによって国民の生活はどう変わるのか?を具体的に


税と社会保障の共通番号(マイナンバー)の利用範囲を拡大する改正マイナンバー法が3日、衆院本会議で可決、成立しました。今年10月から12桁の共通番号(マイナンバー)を記した「通知カード」が簡易書留で各世帯に送付され、来年の1月から利用がはじまるものです。

マイナンバーを導入することで、行政手続きが簡素化すると言いますが、もう1つ国民にとっての利便性が具体的にイメージできません。コンビニで住民票が取れる、予防接種の案内が来ると言われても、その程度のものかと感じてしまいます。

医療費控除で領収書は不要とのことですが、健康保険証が不要になるのかどうかも定かではありません。もうちょっと具体的に「国民にとっての」利便性を示すべきでしょう。

マイナンバーは銀行口座を紐付けて相続税などの管理もしっかりと行う予定とのことですが、あまりに複雑なシステム・ルールにしても運用が大変です。

政府は消費税率を2017年4月に10%に引き上げるのに合わせて一部の商品の税率を低く抑える軽減税率の骨格をまとめています。軽減税率の対象を広げつつ税収減を抑えるため、所得別の限度額を採用することやマイナンバーの仕組みを活用して還付することなどが盛り込まれていますが、これがあまりに複雑過ぎます。

私の理解で言えば、例えばコンビニで「煙草・ティッシュ・食料品」を購入した場合、食料品を分けて把握する必要があり、マイナンバーを提示しなければいけません。

そして、そうやって1年間で購入した食料品がマイナンバーに紐付けられていて、所得の低い人には後から還付すると言うことです。国民は食料品を買うたびにマイナンバーを提示する必要があり面倒ですし、高リスクです。

1年間紐付けられたデータから還付金を算出するのも複雑です。いくらコンピューターがあるからといって、こんな計算をさせる必要があるとは思えません。「エンゲル係数」は決まっているのですから、それを参考にして所得税で調整すれば良いと私は思います。

来年からマイナンバーを使いはじめるということですが、もっと何度もシミュレーションするべきことがあるはずです。国民の使い勝手はどうなのか、どんなシーンでどう使うのか、1年間使うと国民にはどんなメリットがあるのか。

おそらく国民は何も具体的に理解できていません。


安倍首相も高村副総裁も、もっと他に政治家としてやるべきことを


日刊ゲンダイは『朝型勤務「ゆう活」大失敗』と題する記事を掲載しました。国家公務員約22万人を対象に、7月1日からスタートした「ゆう活」が8月末で終了した、と紹介。

仕事時間を1~2時間ほど朝方勤務に前倒しして、その分、夕方は早めに切り上げて残業を減らそうという試みでしたが、発案者である安倍首相は安保法制を成立させるために、戦後最長となる95日間の会期延長を決断しました。

多くの公務員が夜遅くまで、閣僚らの答弁準備などに拘束されていたとし、これでは単に“ブラック企業”と同じとしています。

言い出したときには興奮していたのでしょうが、企画倒れでおしまいです。こんな制度よりもサマータイムを導入するほうがよほど効果的でしょう。

結局、「君たちだけ早く来い」で終わってしまい、何の反省もないという点では他の政策と同じです。

***

現在国会で審議をしている平和安全法制をめぐって、高村正彦副総裁が「憲法の番人は最高裁判所であり、憲法学者ではない」と発言したとことを受けて、元最高裁の山口繁氏が3日、共同通信の取材に応じ、安全保障関連法案について「集団的自衛権の行使を認める立法は憲法違反と言わざるを得ない」との見解を示しました。

これも私に言わせれば、高村副総裁の発言が不必要です。現在の憲法を読めば、紛争解決の手段としての軍隊を持たないのですから、自衛隊そのものの存在も憲法違反になります。集団的自衛権、自国の自衛権などと分けて考える余地はないでしょう。

今さら、山口氏が出てきて発言する必要もありません。

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※この記事は9月6日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今回はマイナンバー制度の話題をお届けしました。大前は、実施前にもっとシミュレーションすべきことがあるのでは?と指摘しています。

なぜそれを行うのか?どうやって運用されるべきなのか?そして国民にはどのようなメリットがもたらされるのか?

全体像を整理することで、事前に検討すべき項目は浮かび上がってきます。この項目が網羅化され、漏れのない状態になることで初めて、十分な検討を行えるようになります。

このように抜け漏れのない構造を描き考えることは、問題解決のアプローチにあたり必須となる手法です。

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