大前研一「ニュースの視点」Blog

KON583「グーグル、テスラモーターズ、アマゾン、バークシャー・ハザウェイ、ソフトバンク ~孫氏とアローラ氏の"怪しい動き"」

2015年8月28日 グーグル ソフトバンク テスラモーターズ バークシャー・ハザウェイ

本文の内容
  • 米グーグル 経営組織を大幅再編
  • 米テスラモーターズ 1台売って4000ドル赤字を出すテスラの苦悩
  • 米アマゾン・ドットコム アマゾン本社は壮絶なブラック企業?
  • 米バークシャー・ハザウェイ 米プレシジョンを買収
  • ソフトバンク 米携帯契約件数でスプリントが4位転落

グーグル、検索以外の事業に注目/イーロン・マスクの正念場/AWSをアマゾンの新しいカルチャーに


米検索大手グーグルは10日、経営組織の大幅な再編を発表しました。持ち株会社「アルファベット」を新たに設立し、主力のネット検索・広告事業とドライバーレス(無人運転)カーなどのベンチャー事業を分離して新会社の傘下に収めるとのこと。

ラリー・ペイジ最高経営責任者(CEO)が新会社のCEOとなり、グループ内で最大事業部門となるグーグルのCEOには上級副社長のサンダー・ピチャイ氏が就任します。

実態としては持株会社を作って、現在それぞれの事業を担当している人のポジションが上がる形ですが、本質的にはあまり大きな変更ではないでしょう。

あえて言えば、それぞれの責任が明確化することでしょうか。グーグルがネット検索以外の事業について、どこまで気合が入るのか?を注目してみたいと思います。

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東洋経済オンラインは、「1台売って4000ドル赤字を出すテスラの苦悩」と題する記事を掲載しました。

テスラは、第2四半期決算で赤字幅が拡大。営業経費と研究開発費が増大した一方で、売上が低価格モデルにシフトし、海外の売上高がドル高の影響を受けて減少したことが響いたとし、「いずれかの時点でテスラが資金調達を行う可能性は非常に高い」とする証券アナリストの分析を紹介しています。

イーロン・マスクにとっても正念場を迎えつつあるようです。600万円の車を売って50万円の損失が出るという状況をイメージすると、確かにそのような自体はあり得るかもしれません。

テスラは充電インフラを全米に広げようと作っていますが、こちらの資金もかなりかかっています。充電インフラが十分に整備されていないために、次世代モデルが売れず、仕方なく安いモデルを販売するという悪循環です。

もっと早い時点で資金調達をしておくべきだったかも知れません。テスラは本体価格の45%を買取保証なども打ち出しており、見えない負債額も大きいと思われます。

こうなってくると、さすがのイーロン・マスクでも資金調達が難しいかも知れません。電気自動車では唯一の成功事例と言われてきましたが、まだその橋は渡りきっていないようです。

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ギズモードは「アマゾン本社は壮絶なブラック企業?」と題する記事を掲載しました。これはNYタイムズの記事を掲載したもので、元・現従業員100人以上の企業へインタビューした結果、アマゾンにはただひたすら会社のためにロボットのように働く人材のみが生き残っていくという事実が明らかになったと紹介しています。

ジェフ・ベゾス氏自身はこの記事に大いに反発していますが、彼の1点集中する性格を鑑みるとこういうところもあるのかも知れません。いずれにせよ、こういうことが発表されると、その企業は今後改善されていく可能性が高いので期待しても良いでしょう。

現在、アマゾンはAWSというクラウドコンピューティングでも収益を上げてきています。現在の主力であるEコマース事業に比べて、こちらは事業の特性を考えても新しいカルチャーができつつあるのではないかと私は見ています。

Eコマース側は、まだジェフ・ベゾス氏のようなカリスマ的な存在が先導して引っ張って行かなくてはいけない時期ですから、現在の状況も仕方ないと私は感じます。

ゆえに可能ならば、Eコマース側はジェフ・ベゾス氏が担当し、AWS側は別の人間が担当していくべきでしょう。


バークシャー・ハザウェイは米最強最大のコングロマリット/ソフトバンクの怪しい資金の動き


著名投資家のウォーレン・バフェット氏が率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイは10日、航空・エネルギー業界向け金属部品製造の米プレシジョン・キャストパーツをおよそ320億ドル(約4兆円)で買収すると発表しました。

これまでもすでに株を保有していましたが、今回全ての株を保有することになりました。

これを受けて、格付会社はバークシャー・ハザウェイの格下げを検討するなどと発表していますが、現状、バークシャー・ハザウェイはコングロマリットとして米国最強かつ最大を誇る企業になっています。

今回の買収対象であるプレシジョン・キャストパーツは、基本的には金属部品を作っている会社ですが、その中でも航空分野が7割を占めています。

クライアントは、GE、エアバス、ロールスロイス等の大手で、合金技術・加工技術が優れた会社です。収益の推移を見ると、年間1500~1600億円になっていて、この数字を見ると確かに4兆円は高すぎると言う人もいるでしょう。

巨大企業がひしめく業界なので航空宇宙防衛企業の売上高ランキングを見ると、三菱重工と同じくらいで小さい部類に入ります。但し、部品会社としては大きい規模だと言えると思います。

バークシャー・ハザウェイの事業を見ると保険がメインですが、製造業の売上でも4~5兆円の利益を出しており、さらには数年前に買収した鉄道分野での収益も高くなっています。

当時、鉄道会社を買収した際には、「時代錯誤」だと批判を受けましたが、この数字を見ると見事としか言えません。

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ソフトバンクグループ傘下の米携帯大手スプリントの6月末時点の総契約件数は5766万件となり、4位のTモバイルUS(5890万件)に抜かれました。一方で、20日の東京市場でソフトバンクの株価は一時前日比4%高い、7772円まで上昇しています。

この背景には色々な動きがあります。孫氏はスプリントの立て直し策がわかったということで、109億円分の0.58%の株を買い増していますが、これは孫氏特有の「トリック」だと私は見ています。

もし本当に立て直し策がわかったのなら、黙って静かに実行すれば良いだけですから、0.58%株を買い増しても意味はありません。おそらく、株価維持のためにこのような動きをしたのではないかと私は見ています。若干、怪しい動きです。

また先日、ニケシュ・アローラ副社長が約600億円で自社株を購入すると発表しましたが、これも怪しい動きです。同氏は「コミットメント示す」とのことですが、私に言わせれば、そもそも600億円の資金はどこから出てきたのか?不思議です。

アローラ氏がサインアップボーナスのような形でソフトバンクから650億円の報酬をもらい、そのうち600億円を使ったという説明のようですが、日本の税制では650億円のうち手元に残るのは半分以下です。資金の出処が何とも不透明です。

さらに言えば、アローラ氏は「無限の信頼」などと言っていますが、私が知るこういうタイプの人は、取締役をやめたらさっさと持ち株を売ってしまいます。

アローラ氏が株を売る動きを見せていないかを監視するほうがよほど重要かも知れません。

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※この記事は8月22日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は各企業の動向をお届けしました。一時、前日比4%まで高くなったソフトバンクの株価。大前はこの現象について、自社株を買い増した孫氏とアローラ氏を「怪しい動き」であると解説しました。

ニュースなどから情報を得る際、事実をそのまま鵜呑みにしてはいけません。なぜそうなったのか?背景では何が起こっているのか?という視点を持ち、情報を読み解いていこうとすることが重要です。

このことを意識することで「考える」習慣は徐々に身についていき、正しく物事を理解することにつながります。

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問題解決力トレーニングプログラム(大前研一 総監修)
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