大前研一「ニュースの視点」Blog

KON581「三菱重工業・ベトナム原発建設・福島第一原発事故~何をもって「事故原因」と定めるべきか?」

2015年8月14日 ベトナム原発建設 三菱重工業 福島第一原発

本文の内容
  • 三菱重工業 米サンオノフレ原発
  • ベトナム原発建設 三菱重工-仏アレバ連合の新型炉を推奨
  • 福島第一原発事故 東電旧経営陣3人を「起訴すべき」

三菱重工の受けた損害賠償9300億円はあまりにも痛い


三菱重工業は先月28日、米カリフォルニア州のサンオノフレ原子力発電所で、三菱重工業製の主要装置が破損し廃炉になった問題で、納入先のサザンカリフォルニアエジソン社などから75億7000万ドル(約9300億円)の損害賠償を請求されたと発表しました。

三菱重工が納めた蒸気発生器が壊れ、結局、廃炉になってしまいました。サンオノフレ原発はロサンゼルスからサンディエゴに向かう海岸にぽつんとある原子炉で、防波堤もなく地震や津波が襲ってきたら、かなり危険な状態でした。

蒸気発生器のトラブルで損害賠償9300億円ということですが、保険に加入しているわけでもないでしょうし、さすがにこの金額になると三菱重工にとっても痛いでしょう。

選択と集中を考えるにも大きな制約になると思います。一部、日立と手を組んでいる分野もありますが、原子炉ということで考えるのなら仏アレバ社と提携するのもアリでしょう。

***

先日、日本勢が建設することで政府間合意しているベトナムの原子力発電所の建設計画で、日本政府がベトナム政府に三菱重工業―仏アレバ連合の新型炉を推奨していることが明らかになりました。

日立-GE、東芝-ウェスティングハウスとなると、三菱重工は仏アレバと手を組むというのは自然な流れとも言えます。

ベトナムへ納品する原子炉は2基で、総額は1兆円規模になる見込みです。これ自体は非常に良い話ですが、だからこそ9300億円の損害賠償は返す返す残念です。

トラブルで売上がたたないばかりか、損害賠償で9300億円を負担するのはあまりにも大きいと言わざるを得ません。


福島第一原発事故の責任を東電のみに押し付けるのはおかしい


東京電力福島第1原子力発電所事故をめぐり、東京第5検察審査会は31日、東電の勝俣元会長ら旧経営陣3人を業務上過失致死傷罪で起訴議決を公表しました。

これは非常に難しい問題です。何をもって「事故原因」と定めるかは色々な見方ができます。

判決としては、津波は「予知可能」だったものとし、それに対する「備え」を怠ったという理由で勝俣元会長ら旧経営陣を被告としています。とは言え、同じ論法で言うならば、他の原子力発電所も「予知と備え」を怠っていることは間違いありません。

福島第一原発を襲ったレベルの津波に他の原子力発電所は耐えうるのか?と問われれば、答えはノーでしょう。

私に言わせれば、東電のみに責任を負わせるのではなく、同時に経産省や保安院も対象にすべきだと思います。

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米国は9.11テロの後、テロリスト・テロ行為への対処としてステーション・ブラックアウト(全電源消失)への対応をしてきました。

福島第一原発の例を見ても、全電源消失になっても非常用電源が1つでも残っていれば何とかなったことは明白です。

9.11テロ後、私は日本政府にも米国と同じように、全電源消失への対応をするべきだと進言しました。しかし、役所も含め誰も本気で受け止めて対処した人はいません。

東電も対処を怠ったのは確かですが、東電を指導する立場にある役所である経産省や保安院も、見て見ぬふりをしたのですから同罪でしょう。

福島第一原発事故を感情的に見てしまうと、当事者である東電に対して厳しくあたってしまうのかも知れません。しかし、経産省や保安院が「日本という国」として対処すべきことを怠ったという事実を私は見逃してはいけないと思います。

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※この記事は8月2日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


業務上過失致死傷罪で起訴議決となった東電旧経営陣。これに対し大前は、事故原因については色々な見方が出来ると指摘しています。

今回の話題に限らず、立つ視点によって物事の捉え方は全く異なります。一つの事象に、複雑なステークホルダーの利害関係が関わってくることがあります。

重要なのは、物事の一部分だけを見て判断をしないことです。感情ではなくロジックに基づいて「最も確からしさ」のある解を導いていくことが、ビジネスシーンにおいても求められています。

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