大前研一「ニュースの視点」Blog

KON580「自動運転車、ゼネラル・モーターズ、アマゾン、アリババ~アマゾンの時価総額を押し上げた要因とは?」

2015年8月7日 アマゾン アリババ ゼネラル・モーターズ 自動運転車

本文の内容
  • 自動運転車 自動車ハッキング、米欧で対策着手
  • 米ゼネラル・モーターズ インドに約1250億円を投資
  • 米アマゾン・ドットコム 純利益約113億円
  • 中国アリババ集団 大企業クラウド顧客

自動運転車の課題は大きい/天下のGMとして気構えを見せてほしい


日経新聞は、先月24日、「自動車ハッキングへの対策着手 クライスラーやBMW」と題する記事を掲載しました。

米国の著名ハッカーが、つながる車の脆弱性を訴える目的で、米専門誌と協力し、運転中の車を遠隔操作して乗っ取る映像を公開したところ反響が広がったと紹介。

車の製造元の米FCAUS(旧クライスラー)が22日、対応策を発表し、独BMWも遠隔操作に対抗するためソフトウェアを更新したと発表しています。

つながる車の自動運転どころか、運転しているのは「別の誰か」というおそろしい状況が再現されたようです。

これは相当、危険な状態です。つながる車のソフトウェアに問題があったということで、FCAUS社は約140万台をリコールします。これまでは、「いかにセンサーに忠実に反応できるか?」だけを考えて開発してきたため、ハッカー対策にまで手が回っていなかったのでしょう。

原発と全く同じ問題を抱えているといえます。年初に韓国の原発がハッキングを受けてニュースになりました。北朝鮮は関与を否定しましたが、実際に韓国の原発が北朝鮮に乗っ取られたら一大事です。

自動運転車には同じようなリスクがあるということです。140万台全てを乗っ取られるという想像するにおそろしい可能性すらあり得ます。あまりにリスクファクターが大きく、前途多難と言わざる得ない状況だと思います。

***

米ゼネラル・モーターズ(GM)はインドに10億ドル(約1250億円)を新たに投資する計画を明らかにしました。メアリー・バーラCEOによれば、インドに工場を集約し、新しく10車種ほど投入する考えも示しています。

しかし私に言わせれば、「天下のGMがやることか?」と思います。

現在、インドにおけるGMのシェアはわずかに1.6%に過ぎません。トップのスズキが36.4%、2位のタタ・モーターズが14.1%、3位の現代自動車が13.1%です。仮にGMがシェアを2倍にしたところで、4%に満たない状況で、トヨタにすら届きません。あまりの望みの低さに驚いてしまいます。

せめて4位のマヒンドラ・アンド・マヒンドラ(シェア11.8%)を買収するくらいの意気込みを見せてほしいところです。中国では圧倒的な強さを見せつけたGMですから、インドでもそれを再現するくらいの気持ちがあっていいと私は思います。

「シェア4%を目指します」では、天下のGMとしてはさすがに物足りないと感じます。


アマゾン時価総額はクラウドコンピュータ/アリババもアマゾンと同じ路線へ


米アマゾン・ドット・コムが、先月23日発表した第2四半期決算は、売上高は19.9%増の231億9000万ドル。純利益は9200万ドルと黒字に転換し、大幅に改善しました。

ジェフ・ベゾス氏は創業時に「世界一の小売屋になりたい」と発言していました。その言葉通り、今回時価総額ではウォールマートを上回り、小売のトップになったと言えます。

表面的には祝福の言葉をかけたい気になりますが、内情を見るとやや状況が違うとわかります。実は、小売部門の利益改善はそれほどでもなく、利益を出しているのはクラウドコンピュータ部門です。当然、時価総額を押し上げる要因になっているのも、この部門です。

日本でもアマゾンのクラウドコンピュータに対する関心は非常に高くなっています。時価総額30兆円に達し、ウォールマートを抜いて小売のトップに踊りでたわけですが、時価総額が高くなった本当の理由はクラウドコンピュータであり、小売事業そのものではありません。

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日経新聞は、先月25日、中国の電子商取引(EC)最大手、アリババ集団がクラウド事業の強化に動き出したと報じました。これまで自社の仮想商店街へ出店する個人・中小企業向けの付帯サービスが中心でしたが、今後は大手企業向けに展開するとのことです。

アリババもアマゾンを見ていて、クラウドコンピュータ事業の魅力に気付いたのかも知れません。ECも非常に難しい事業ですから、そこからクラウドコンピュータやアプリケーションの方向へ大きく舵を切ったということでしょう。

ジャック・マー氏の言葉を借りれば、「ITからDT(データ・テクノロジー)へ」ということになります。

また、アリババのライバル・テンセントが急成長を見せています。利益も5000億円規模に達し、2005年~15年の年率でみると、株主へのリターンは1年で61.8%という驚異的な数値を示しています。

おそらく1年~2年のうちには、フォーチュン500に入ってくると思います。ソフトバンクのように、自ら使い切れない資金は積極的に投資していて、それも功を奏しています。

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※この記事は8月2日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


時価総額でウォールマートを抜いた米アマゾン。しかし大前は内情に注目し、小売部門の利益改善はそれ程でもないと指摘しています。

分析の基本は、分けて比較することです。ただ単に数値を眺めていては意味合いを見出すことはできません。その要因は何か?という疑問を持ち、要素分解しながら考えることが重要です。

このような分析を繰り返すことで、因果関係は徐々に明らかになっていきます。これは、本質的問題発見における基本的なアプローチです。

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