大前研一「ニュースの視点」Blog

KON577「中国ガス田開発・尖閣諸島問題・上海協力機構~中国ガス田開発に目くじら立てる必要は全くない」

2015年7月17日 上海協力機構 中国ガス田開発 尖閣諸島問題

本文の内容
  • 中国ガス田開発 軍事拠点化の可能性に言及
  • 尖閣諸島問題 日本の領土と認識の文書公開へ
  • 上海協力機構 「ウファ宣言」採択し閉幕

中国ガス田開発に目くじら立てる必要は全くない


中谷防衛相は10日、中国が東シナ海に建設している新たな海洋プラットホームが軍事拠点化される可能性に言及し、日本の安全保障にとって新たな脅威になるとの認識を示しました。

東シナ海のガス田開発をめぐり、中国が2013年6月以降、日中中間線の中国側海域でプラットホームの建設を拡大しており、菅官房長官も記者会見で「中国側の動きを注視し、引き続き警戒監視をしっかり行っていきたい」と牽制しています。

私に言わせれば、中国がガス田を掘りたいなら好きなようにさせれば良いのです。私はボーダレス経済の提唱者です。もし中国がガス田を掘り当てたのなら、安い国際価格で買ってあげればいいだけです。

オホーツク海で「流し網漁」が禁止された時にも騒がれていましたが、あんな危険な海で漁業をするのはロシアに任せて、収穫されたものを購入すればいいのです。どうしても「日本がやらなくてはいけないこと」ではないのなら、目くじらを立てる必要はないと思います。

軍事拠点としての活用に懸念しているというのも、私には不思議です。もし本当に中国が軍事拠点を置くのなら、もっと尖閣諸島に近い場所のほうが良いでしょうし、あえてこの場所を選択しないと思います。

仮にその可能性があっても、採掘に利用されるリグを破壊するのはそれほど難しいことではないでしょう。

また、根本的に今回の中国ガス田に関して言えば、採算がとれる可能性は非常に低いと私は見ています。同じような事例を見ても、深いところまで掘ってみたものの採算コストがかさんでしまい、黒字にならない場合がほとんどです。

中国は経済の成長が止まってしまっていますし、このガス田も下火になっていくと思います。


尖閣諸島問題について、中国側は派手に議論したいわけではない


政府は沖縄県石垣市と連携し、中国が同県・尖閣諸島を日本の領土と認識していた根拠となる1920年の中華民国から日本人への感謝状を2015年度内にも公開する予定。

これは1920年、尖閣沖で遭難した中国漁民を救助したことに謝意を示す中で、漁民の漂着場所を「沖縄県八重山郡尖閣列島」と明記しているとのことです。このような「証拠」を出そうと思えば、いくらでも出てくるでしょうが、中国側が納得するかは疑問です。

そもそも中国側は帰属の議論は棚上げにしつつ、日本の実効支配を認めていました。そのような状況において、石原慎太郎氏がお金を集めて民間で買い取ると言い出した結果、歴史的な背景や経緯を知らない当時の民主党政権が国有化してしまったのが問題でした。

現状で言えば中国側も所有権について分が悪いのは百も承知でしょうが、歴史的に見れば、尖閣諸島は「明」に帰属していた時代もあれば、「沖縄」に帰属していた時代もあれば、どの時点で考えるのかによって変わってしまいます。

中国も日本も「現状のまま変更せず放っておく」という暗黙の了解があったにも関わらず、事前説明もなく、突然日本が国有化に踏み切ったことに対して中国は怒りを感じているのでしょう。


抗日戦勝70年記念式典と称する歴史認識の間違い


ロシア、中国、中央アジア4カ国で構成する上海協力機構(SCO)は10日、首脳会議を開き、「ウファ宣言」を採択して閉幕しました。

ロシアのプーチン大統領は中国が9月に開く抗日戦勝70年記念式典にSCO加盟国の首脳がそろって出席すると表明しています。インドとパキスタンの加盟手続きを開始することも決めたとのことです。EU、米国、日本が手を組んでロシアに対抗しているということを受けて、上海協力機構が「政治運動化」してしまっている状況だと思います。

インドとパキスタンにも上海協力機構の正式メンバーとして声がかかっており、両国は抗日戦勝70年記念式典にも招待されているそうです。

驚くべきは、抗日戦勝70年記念式典には日本の安倍首相も招待されていることです。さすがに安倍首相が出席するとは思えませんが、数日ずらして近くまで行くという話も聞きます。

飛んで火に入る夏の虫にならなければ良いのですが、安倍首相としては国内が不安定な状況が続いているので、中国との関係性を改善し、良い材料にしたいのでしょう。

それにしても、今回の「抗日戦勝70年記念式典」というのはおかしな話です。もし「抗日戦勝」というのなら、蒋介石に敬礼し、馬英九氏を呼ぶべきだと私は思います。

終戦時の中国は国民党政権であり、今の中国共産党が「戦勝」したわけではありません。実際に勝った人とは違うのですから、私ならそんな人から招待されても絶対に出席しないでしょう。

むしろ、世界に対して「中国共産党は当事者ではなかった」という事実を知らしめるべきだと思います。

中国共産党にとっては存立基盤に触れることですから、彼らは激怒するでしょう。しかしそれこそ、歴史を直視し正しい歴史認識を持つのなら、事実を認めるべきだと思います。

---
※この記事は7月12日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は中国のガス田開発について解説をお届けしました。大前は記事中、日本がやる必要がないことであれば、他国に目くじらを立てる必要はないと言及しています。

皆さんは「やるべきこと/やらなくても良いこと」を分けて考えられていますか?複雑なビジネス環境において、やるべきことは一見するとたくさんあると思われがちです。

しかしリソースが限られている中では、どの課題に取り組めば効率的に問題解決できるかを考えることが大切です。

闇雲にあたるのではなく、勘所をつけてから動き始めること。より大きなインパクトを出すために必要な、問題解決の考え方です。

★受講料10%オフ!夏の学習応援キャンペーン実施中です。
問題解決力トレーニングプログラム(大前研一総監修)
http://tr.webantenna.info/rd?waad=ySlRyTJX&ga=WAAAAk-1

問題解決力トレーニングプログラム

問題解決力トレーニングプログラム

大前研一 ニュースの視点 Blogトップへ

  • メルマガ

    ニュースの視点メルマガ登録

最近の投稿記事

ニュースの視点メルマガ登録

ブログの更新情報

バックナンバー

  • facebook
  • twitter

各種ソーシャルメディアで様々な情報をお届けしております。

大前研一 ニュースの視点