大前研一「ニュースの視点」Blog

KON576「中国経済・海外M&A・米石炭火力発言規制~中国小売業の苦悩とEコマース」

2015年7月10日 Eコマース M&A 中国経済

本文の内容
  • 中国経済 先進国銀行による中国融資急減
  • 中国小売市場 百貨店・スーパー苦戦
  • 海外M&A 中国企業の成功例少なく
  • 米石炭火力発言規制 環境保護局の規制は「不適切」
  • 英BP 米政府、メキシコ湾岸5州と和解

党主体の人為的な経済では、もはやごまかしきれない


日経新聞は、先月29日、先進国銀行による中国向け融資が2014年10~12月期に急減したと報じました。減少額は510億ドル(6兆2000億円)で、四半期としてはリーマン危機後の08年10~12月期に次ぐ大幅なものになります。

また、3日の上海株式市場では、上海総合指数が下げ幅を拡大。前日比5.77%安の3686ポイントで取引を終了。上海総合指数は昨年7月から急騰し、6月12日には約7年ぶりの高値をつけましたが、その後約3週間で29%急落しています。

かつて中国は海外からの直接投資ができませんでしたが、香港経由ならば可能になりました。その結果、多くの外国企業が香港経由で中国への投資を開始しました。

外国企業が融資をしてくれるのはありがたいことですが、一方で「逃げ足」が早いというのが難点です。

上海市場もこの一週間だけでも12%下落するという勢いです。経済成長の末期にありながら党利党略のために無理矢理に株式市場を高めていこうとした結果でしょう。これは日本も他山の石とすべきでしょう。

中国政府は自らがコントロールできる国内の金融機関に買い支えの指示をしているようですが、実質経済がおかしくなっている以上、党主体の人為的な経済ではもはやごまかしきれないでしょう。不動産を中心としたバブル崩壊の現象、銀行からの融資が滞りノンバンクが暗躍しているという状況です。

このような状況を中国共産党が経済を含めて牛耳っていけるのかどうか、私は疑問に感じています。


中国小売業の苦悩とEコマース/海外M&Aはかつての日本と同じ失敗


また中国ではネット通販の台頭により百貨店・スーパーが苦戦しています。インターネット通販が小売市場全体の1割を占めるまでに急成長し、実店舗を抱える小売店の競争が激化しているとのことです。

中国ではモールや百貨店の建設が早く、実際テナントが入っていない「ゴースト化」しているものが多く見られます。さらにアリババのようなEコマースが増えたこともあり、ネット通販が主流になってきています。

先進国の場合にはEコマースが普及する前に、モールや百貨店が建設されましたが、中国やインドではEマースが同時に普及しています。これがモールや百貨店のゴースト化を助長しています。

このような背景もあり、中国では不動産が活性化しない可能性が高いでしょう。それよりも、配送業等が伸びてくるかも知れません。

これまでとは大きく事情が変わりつつあり、中国の小売業にとっては大きな悩みになっています。

* * *

日経新聞は1日、「中国企業の海外M&A、成功例少なく」と題する記事を掲載しました。

それによると、中国企業が海外で実施した企業買収の総額は2008年の約100億ドル(約1兆2000億円)から14年に570億ドルに膨らんだ一方、期待する効果を発揮できていないと報じています。

どこの国でもM&Aが成功する確率は高くありません。中国だけ「奇跡」が起こるはずもありません。高値掴みしすぎていますし、母国における経営力も十分に養われていません。

これは日本企業が30年前に味わった失敗です。中国企業もその塗炭の苦しみを味わう時がきたということでしょう。「お金があるから買う」だけでは上手くいきません。中国はかつての日本と同じ道を歩んでいます。


米国のエネルギー産業の状況/英BPにとって2兆3000億円の和解は大成功


米連邦最高裁判所は29日、環境保護局(EPA)が2012年に実施した石炭火力発電所への環境規制について、電力業界の対策費用を考慮していないとして「不適切だ」との判断を下しました。

これは普通の国の規制とは逆になっています。米国の場合は石炭がメインになっているため、ここに規制をかけると対策費用だけで1兆2000億円規模になり、コストが大き過ぎると判断されたということです。

米国では、シェールガスなどの割合も増えてきていますが、一方でスリーマイル原発事故があっても原子力発電は2割をキープしています。ここは注目しておくべき点だと思います。

* * *

英BPは2日、2010年4月にメキシコ湾で起こした原油流出事故を巡り、米連邦政府やメキシコ湾岸の5つの州と総額で最大187億ドル(約2兆3000億円)を18年間にわたって支払うことで和解しました。

これはBPにとって非常に素晴らしい和解でしょう。経営破綻に追い込まれてもおかしくない事故でしたから、和解がなければ経営的に厳しい状況でした。

2兆3000億円を18年払いはBPにとって現実的な数字です。事故の処理がおさまってきて、比較的穏便に交渉が進んだ結果だと思います。
---
※この記事は7月5日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は中国Eコマースの話題をお届けしました。

小売り市場全体の1割を占めるまで成長したネット通販。百貨店のゴースト化の助長など従来の小売業にとって大きく事情が変わりつつあります。

自社の業界を取り巻く環境はどうなっているのか?変化の激しい時代においては、この視点を持ち、常にアンテナを張ることが重要です。

まずは業界を知り、自社の置かれている状況を知ること。問題解決のアプローチにおいて、最初に押さえるべきポイントです。

★東京(8/2)・大阪(7/26)で、大人気教授によるセミナーを再び開催!
元マッキンゼー人材育成責任者が教える「問題解決者の条件」
http://tr.webantenna.info/rd?waad=uYfRCWJv&ga=WAAAAk-1

問題解決力トレーニングプログラム

問題解決力トレーニングプログラム

大前研一 ニュースの視点 Blogトップへ

  • メルマガ

    ニュースの視点メルマガ登録

最近の投稿記事

ニュースの視点メルマガ登録

ブログの更新情報

バックナンバー

  • facebook
  • twitter

各種ソーシャルメディアで様々な情報をお届けしております。

大前研一 ニュースの視点