- 本文の内容
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- 少子化問題 2015年版「少子化社会対策白書」を決定
- 耕作放棄地問題 放棄地確認「毎年せず」9割
- 成長戦略 日本再興戦略素案まとめ
少子化対策として、難民、移民の受け入れ体制を整えることが必要
政府は22日の閣議で2015年版「少子化社会対策白書」を決定しました。
女性の平均初婚年齢は13年時点で29.3歳、第1子出産時の平均年齢は30.4歳といずれも1980年からの30年間あまりで約4歳上昇。若年層の所得の伸び悩みや出産後の女性の就労継続が厳しい状況が晩婚化・晩産化の背景にあると指摘しています。
初婚年齢、出産時年齢の上昇と言っても、この年齢が上がり続けることはないでしょう。現実的に出産できる年齢には上限がありますし、また「結婚しない、恋人を欲しくない」という人の割合が3分の1も占めているからです。
少子高齢化問題を考えるとき、「少子化」については抜本的なところから考えていく必要があります。その際には、他の国の事例も大いに参考にするべきでしょう。
例えば、フランスやスウェーデンは、事実婚が社会的に認知され、法的な保護も与えられています。今の安倍政権は、伝統的な結婚観に手を付けたくないと、この問題を避けているのが見え見えです。
また最近、日本の難民認定率(0.2%)が低すぎると世界から批判を受けていますが、これを実現するためには、着実なプロセスを構築する必要があります。
例えば、オーストラリアでは、オーストラリア本土ではなく、難民を周辺の島国などに送り、難民認定後もそこに定住させる政策を実施してきました(中断した時期もあり)。
このオーストラリアのプロセスが良いかどうかは別として、日本でも難民を受け入れる何かしらのプロセスが必要でしょう。例えば、どこかの島などで難民を受け入れ、そこで2年間ほどで義務教育、社会化教育をほどこします。
もちろん、母国でのデータと照合し、犯罪歴などがないことを確認した上で、最終的に日本で働くことが出来るグリーンカードを発行します。
もし本気でやるのならば、毎年5万人くらい受け入れる体制を作るべきだと思います。日本の人口減少を避けるためには、年間30万人の受け入れが必要ですから、足りない分は移民で補うしかありません。
しかし、30万人のうち10%だと多すぎるので、数%程度を難民で受け入れるのが良いでしょう。それが先進国としての日本の役割の1つだと私は思います。
農地に対する課税を公平に行うべき
耕作放棄地の多い100市町村の9割近くが、税法が定める毎年の土地利用状況の確認調査を行わず、適正に課税できなくなっていることが日本経済新聞の調査でわかりました。
実態を把握できないため耕作放棄地も課税上は固定資産税が軽い農地と見なされ、持ち主が土地を手放さないケースが多く、農業の生産性を高める大規模化を阻む一因となっているとのことです。
都市型サラリーマンは資産を全て把握されて、固定資産税も含め現実的に課税されているのに対して、これは非常に不公平であり是正されるべきです。
耕作放棄地は40万ヘクタール(滋賀県とほぼ同じ面積)もあると言われています。ヘリコプターを飛ばせば、税法通り毎年調査ができるはずですが、3年に1度の調査、あるいはそれすらも実施されていないのが実態です。
本来、農地の種類別に固定資産税の算出が異なります。一般農地だと「千円/10a(アール)」という課税イメージですが、市街化区域農地だと「数千円/10a(アール)」~「数十万円/10a(アール)」にもなります。これらを把握できておらず、農地の実態とおりに課税できていません。
おまけに農地は相続税の猶予があります。都市型サラリーマンとの差がこれ以上拡大すると、税務署に対する大きな批判になっていくと思います。税務署としては、この格差の是正は命がけで取り組むべき課題です。
さらには、正しく把握して農地課税するとなると、課税負担に耐えかねて、農地を手放す選択をする人が増えるはずです。
これが大規模農地化や企業の農業参入につながっていきます。あるいは、その他の土地活用にもなるでしょう。
結局、70歳を超えるような高齢の人が農地として持っているだけで、何もせず放置している状態が一番良くないのです。
この状態を放っておいたのは、農水省、財務省、各都道府県、全ての怠慢であり、この怠慢の連鎖を断ち切ることが重要だと思います。
ロボット、ビッグデータなどキーワードを並べただけでは無意味
政府は22日、構造改革を進めて日本の生産性向上を狙う成長戦略「日本再興戦略」の素案をまとめました。
それによると、ロボット開発やビッグデータへの投資を企業に促すほか、地方経済や中小企業にも改革を求めるとのことですが、これはあまりにひどい内容です。
これまでに発表された成長戦略も実現性が乏しく褒められたものではありませんでしたが、今回のものは、「ロボット」「ビッグデータ」などキーワードを並べただけで、誰が読んでも「弾不足」に過ぎます。
日米安保に意識を向けている安倍首相はもはや、アベノミクス、成長戦略に興味がなくなっているとさえ感じます。マーケットも同じような懸念を感じ始めています。適当に聞きかじった言葉を並べても何の意味もありません。1つ1つの施策についてもっと真剣に議論すべきことは沢山あります。
「生産性を高める」と一言で言っても、色々と考えるべきことはあります。日本で最も生産性が低い産業はサービス業で、米国の生産性の約50%程度です。
一方で、就業人口の70%はサービス業という事実もあります。ということは、もし米国並みにサービス業の生産性を高めると、「日本では30%の失業者が出る」ということもあり得るのです。
この実態を考慮しながら、失業する人たちのスキルを高度なものにする再教育機関を準備しなければいけないでしょう。
最低限、このくらいの事実を踏まえて対応策を考えるべきです。取ってつけたように、「ロボット」や「ビッグデータ」といった最近話題のキーワードを並べ立てているだけでは、全くお話になりません。情けないとしか言えません。
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※この記事は6月28日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は成長戦略について解説記事をお届けしました。
大前は、日本のサービス業の生産性を米国並みに高めた場合、30%の失業者が出る可能性があると指摘しています。新しい打ち手を考える際は、ネガティブインパクトの影響まで意識する必要があります。
この点が考慮されていない打ち手にはリアリティがなく、実行に移すことは難しくなってしまいます。
考えの幅を広げ、起こりうるであろう様々な影響を検討しつくすこと。これは、問題解決における基本的な思考方法です。
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