- 本文の内容
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- 米ベンチャー企業 CEO、経営力より創造力
- ツイッター 苦境に立つツイッター
- 米アマゾン・ドット・コム 商品配送を「一般市民に依頼」へ
- 欧州流通大手 非中核事業の売却を加速
専門の経営者を連れてくるのではなく、創業者を育てる重要性
日経新聞は16日、「CEO、経営力より創造力」と題する記事を掲載しました。
米有力ベンチャーキャピタルの創業者のベン・ホロウィッツ氏に現在のシリコンバレーとそこから次々と誕生しているベンチャー企業についてインタビューし、「今はアマゾン・ドット・コムのクラウドサービス『AWS』と数人のエンジニアとノートPCがあれば起業できる。CEOに求められるのは経営の経験や巧みさよりイノベーションを生み出す創造力だ」と指摘しています。
ホロウィッツ氏といえば、ネットスケープの創業者です。ネットスケープ自体は失敗に終わりましたが、AOLへの売却を経てベンチャー投資家に転じました。
今では米国でもトップのベンチャーキャピタルを経営しています。投資先には、エアビーアンドビー、ツイッター、スカイプなどそうそうたる名前が並びます。
そのホロウィッツ氏は「専門の経営者を求めない」ことの重要性を述べています。
ベンチャー企業を立ち上げた人は、創業時には良いものの、会社の規模が大きくなるとマネジメントに課題を抱えるというのが、これまでの典型的なパターンでした。その場合、IBMなどの大きな会社のマネジメント経験がある人を連れてくるのが常識になっています。
しかしホロウィッツ氏は、そのような人物を連れてきても「イノベーションを起こさないため」さらに停滞することになると指摘しています。企業がさらに革新していくためには、創業者に経営の勉強をさせて、彼らをプロの経営者に育てることが重要だと。
たしかに頷ける話だと思います。最たる例はアマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス氏でしょう。破壊的なパワーを持ち続けるジェフ・ベゾス氏が経営者として舵をとっているからこそ、アマゾンは革新を続けているのだと私も思います。
一方、ホロウィッツ氏の投資先でもあるツイッターは苦境に立たされています。
わずか2年前、フェイスブックに次ぐ圧倒的存在感を誇ったツイッターですが、もはや米国では上位20位圏外のアプリになった、とフォーブスの情報サイトが紹介しています。
動画やメッセージングの要素が足りないなど、変化のスピードの遅さが主な要因だと指摘しています。
米国人が利用しているメッセージアプリの上位を見ると、今のところツイッターはフェイスブックに次ぐ2位ですが、Google+、インスタグラム、ピンタレスト、リンクドイン、スナップチャットなど、いずれも手強い競合が追いかけてきています。
また、米国人が利用しているSNSというアンケートでは、フェイスブックメッセンジャー、スナップチャット、iMessage、Googleハングアウト、WhatsAPP、Viber、Lineといった名前が並びます。
Lineは日本とアラビア語圏が中心と言われていましたが、英語圏でも意外とユーザーを獲得しているようです。
アマゾンの配送サービスは、アイドルエコノミーの良い事例
16日付ウォールストリート・ジャーナル紙が報じたところによると、米ネット通販大手アマゾン・ドット・コムは、配送専門会社ではなく一般の人々に所用の目的地に向かう途中でついでに商品を届けてもらい、代金を支払うことが可能になるモバイル端末のアプリを開発していることがわかりました。
さすが、アマゾンだと思います。これは私が言うところの「アイドルエコノミー」の非常に良い例です。
以前、「エブリデイドットコム」というネットスーパー事業を展開していたとき、パンを配達する会社を買収しました。またパン以外にも、忙しい母親のために家族の弁当や総菜などを早朝届けるサービスを展開しました。
このとき配達をやってもらっていたのが、通勤前のサラリーマンです。会社に出かける前の2時間ほどを使ってもらい、配達を依頼しました。配送料は宅配専門業者よりもかなり安くなりました。
一昔前なら牛乳配達くらいしか選択肢がなかったサラリーマンの朝の「余剰時間」を活用した事例です。
これをさらに発展させたのが、今回のアマゾンの例です。堀江貴文氏も自身のメディアで「これは面白い発想だね。ついにここまできたか、という感じ。一度体験してみたい」とコメントしていますが、彼にはこの価値がよくわかっているのでしょう。
アマゾンが流通革命を起こしつつある一方で、既存の流通大手の苦戦が見て取れます。
欧州流通大手が非中核事業の売却を加速しています。独メトロは15日、百貨店事業を28億2500万ユーロ(約3920億円)でカナダの流通大手に譲渡すると発表し、また英テスコは韓国事業売却の検討を始めたとのことです。
流通業は国際化にチャレンジしてもほとんど上手く行きません。テスコも韓国で成功していると言われていましたが、実態は違ったようです。テスコの最終利益の推移を見ると、どんどん落ちてきています。
約2年前米ウォルマートの新CEOに就任したダグ・マクミロン氏も、1000万点の配送を手がけると力を入れているようですが、難しいかも知れません。
既存店の売上を見ると地を這うような状況ですし、追撃してくるアマゾンの流通業の伸びを見ていると圧倒的な差を感じます。
ウォルマートにしてみれば、「何かやらなくては」という気持ちもわかりますが、海外に出ても上手くいかず非常に難しい状況に置かれています。
かつて向かうところ敵なしの状態だったウォルマートも、苦境に立たされています。
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※この記事は6月21日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週はアマゾンの新しい配送サービスについて解説をお届けしました。
余剰時間を活用したサービス。大前はこのような事例をアイドルエコノミーと呼んでいます。
慣習や既存の価値観にとらわれたままでは普段と同じ見方しかできません。
今までになかったような新しいモデルを発見するには、ゼロベースの観点で様々な切り口を試してみることが重要です。幅を広げた検討が、斬新な解決策を導くことにつながります。
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