大前研一「ニュースの視点」Blog

KON569「コマツ・三井不動産・オフィス空室率・ソフトバンク~観察と仮説構築を考える」

2015年5月22日 オフィス空室率 コマツ ソフトバンク 三井不動産 仮説思考 観察

本文の内容
  • コマツ 「優等生」コマツを追い込んだ2つの"誤算"
  • 三井不動産 連結純利益1001億円
  • オフィス空室率 東京都新5区のオフィス空室率
  • ソフトバンク 連結純利益6683億円

優等生コマツでも、中国を読み違えた


東洋経済オンラインは、13日、「優等生」コマツを追い込んだ2つの"誤算"と題する記事を掲載しました。

世界2位の建設機械メーカー、コマツが2016年3月期の売上高で減収減益を予想するなど、苦戦を強いられている背景には、中国の景気減速と鉱山機械の需要縮小という2つの"誤算"があると紹介しています。

私に言わせれば、本当の原因は「中国」のみだと思います。誤算ではなく、中国の景気を読み違えてしまったということです。

コマツの建設機械・車両の地域別売上高を見ると、米国の売上高が日本を上回っています。キャタピラーの本拠地米国での結果ですから、大したものだと思います。

一方、中南米、アジアは伸び悩み、中国の影響を受けたオセアニアは減少しています。中国の影響を受けて苦境に立たされているのは、コマツに限りません。コマツ、キャタピラー、三一集団など、建設機械メーカーはどこも苦しんでいます。

コマツはその中でも、まだ利益が出ているので良い方でしょう。ただし、これまでは礼賛されるばかりでしたが、若干そこに陰りが見え始めたという印象です。


オフィス空室率は上がっていくのが普通


三井不動産が11日発表した2015年3月期の連結決算は、純利益が前期比30%増の1001億円となり、7期ぶりに過去最高を更新しました。

16年3月期も商業施設やオフィスビルの賃料収益が伸び、2年連続で過去最高益となる見通しです。賃貸も分譲も非常に調子がいいようです。ただし、不動産なので秋くらいになってくると落ち込んでくる可能性が高いでしょう。

また、オフィス仲介大手の三鬼商事が14日に発表した4月の東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィス空室率は、全体の平均で0.04ポイント上昇し、5.34%となったとのことです。

上昇するのは22カ月ぶり。港区や中央区で、新しく大型のオフィスビルが完成したことが影響したとの見解です。

私は少し意見が違っていて、今の日本の状況を見ると、オフィス空室率は「下がっていたのが不思議」であり、もっと上昇していくものだと思います。

今後、外資系企業が殺到してくるとも想像しづらいですし、政府の意向も地方拠点支援に向かっています。港区の一部などで賃料が上がっていますが、今後は空室率が上昇すると私は見ています。

私のオフィス近辺(千代田区)でも、マンション建設が盛んです。すごい勢いで都心に人が流れこんできているのがわかります。一昔前に比べると、認可も建築も早くなっているのも要因でしょう。それでも供給が勝る状態だと思います。

よほど日本の条件が改善し、外資系企業が戻ってくるとか、シンガポールで非常事態が発生して日本へ拠点を移すなどの流れがない限り、日本のオフィス空室率は上昇していくでしょう。


ニケシュ・アローラ氏を選んだのは、投資事業のため


ソフトバンクが11日発表した2015年3月期の連結決算は、純利益が前期比28%増の6683億円と、5期連続で最高を更新しました。

一方、孫社長は「これまでメインは国内、海外はサブだった。これからはグローバルな会社になる」として代表権のある副社長に米グーグルから引き抜いたニケシュ・アローラ氏を起用することを明らかにしました。

孫社長の意図するところは、「投資事業」へ力を入れるということでしょう。事業面では米携帯電話大手のスプリントを買収し、色々と尽力してきましたが、なかなか思うような成果に結びついていません。

想像以上に、ベライゾンやAT&Tの壁を厚く感じていると思います。そこで、売却までを含めたオペレーションなどよりも、どちらかと言えば、ウォーレン・バフェットのような方向性を考えているのでしょう。

巨大なソフトバンクグループを率いていくとすると、「投資」が重要です。実際、アリババ、ヤフーなどの成功事例もありますし、次世代を見据えてインドにも仕掛けています。これをソフトバンクのメインに据えるイメージだと思います。

これまでの実績を見れば、どこぞのベンチャーファンドよりも、さらに言えばウォーレン・バフェットをも上回っていると言えます。

しかし、孫社長個人の才能・力量に追うところが大きく、社内には目ぼしい人材が見当たらなかったため、今回ニケシュ・アローラ氏を招き入れたのでしょう。

数年間、一緒に仕事をした経験もありますし、孫社長の「勘」とも言える絶妙な投資判断に近い感覚を持ちえている人物として期待しているのだと思います。

孫社長はソフトバンクアカデミアを主催し、10年かけて後継者を育成するという試みを実施していますが、結局のところ、後継者は育てるものではなく、見つけるものだということでしょう。英語が堪能な経営者だと、後継者に外国人を選択する傾向がありますが、あまり成功する確率が高いとは言えません。

失敗の代表例でいえば、ソニーの出井氏が選んだハワード・ストリンガー氏でしょう。今回のニケシュ・アローラ氏は、一緒に仕事をした経験も踏まえて選ばれているので、そこまでの事態にはならないと思います。

ソフトバンクの事業を大きく、オペレーションとインベストメントにわける構想であれば、インベストメント分野はニケシュ・アローラ氏に任せても大丈夫でしょう。
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※この記事は5月17日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています


今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週はオフィス空室率に関して解説をお届けしました。三鬼商事の発表に対し、オフィス空室率が下がっていることがむしろ不思議であると大前は意見を述べています。

自分ならばどう考えるのか?

ニュースの情報をただ鵜呑みにするのではなく、それに対して自身の意見をもつことが「考える力」を養うことにつながります。

身の回りの観察や世の中のファクトから、仮説を構築すること。問題解決にあたっては、この仮説思考の精度が重要になってきます。

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