- 本文の内容
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- ニコン 連結営業利益370億円
- ABCマート 連結営業利益400億円
- ドン・キホーテHD 時価総額で三越伊勢丹超えの衝撃
- カルビー 連結営業利益240億円見通し
厳しい状況が続くニコン/好調さを見せるABCマート
ニコンの2015年3月期の連結営業利益は前期比41%減の370億円前後となり、従来予想を約10億円上回ったとのことです。主力のデジタルカメラと半導体露光装置の販売台数は計画を達成しました。
円安や生産コストなどの削減も寄与したと報道されていますが、これは記事の書き方次第でしょう。売上は対前年度41%落ち込んでいますが、その下方予想よりは10億円上回ったというだけです。
ニコンの売上が4割落ち込むというのは、まさに業界そのものが厳しい状況にあることを示しています。
連結営業利益370億円というのは流石ニコンだと思いますが、スマートフォンにカメラを奪われてしまった今、これから先もカメラそのものを持ち歩かない人が増えていくでしょう。キヤノンも同様ですが、この流れは非常に苦しいと言わざるを得ません。
一方、好調さを見せているのが、ABCマートです。ABCマートの2015年2月期の連結営業利益は400億円程度と前期比17%増加、12期連続で過去最高を更新したとのことです。
「ニューバランス」など有力ブランドスニーカーの販売が好調で、都心部や観光地の店舗で、訪日外国人客が増えたことも追い風となった模様です。
いわゆるイオンモールのような場所に入っている新興小売業の代表格が、ニトリ、しまむら、そしてABCマートです。それぞれの特徴を見てみると、しまむらは売上高が大きいのですが、収益に陰りが見えます。
一方、ニトリは売上も利益も順調に伸びています。大塚家具は内紛を終えたばかりですが、外の敵であるニトリ、イケアは相当手強い相手だと思います。
ABCマートの特徴は、売上高はそれほど大きくありませんが、利益が大きいことでしょう。日本の靴は儲からないと言われてきましたが、まさに赤丸急上昇中という勢いです。
流通業に新機軸を打ち立てたドン・キホーテ/ペプシコとの提携で飛躍するカルビー
ビジネス情報サイト・ビジネスジャーナルは1日、「ドン・キホーテ、三越伊勢丹超えの衝撃」と題する記事を掲載しました。
これは、ドン・キホーテの2015年1月30日時点の時価総額は6783億円で東証1部の小売業の6位となり、百貨店業界首位の三越伊勢丹HDのそれ(同6635億円)を上まったと紹介。
カリスマ経営者の安田隆夫氏は、6月30日に開催される定時株主総会後に会長を退く方針で、好調を花道に引退するとのことです。
火事を起こしたり、様々な騒ぎを起こして話題になったこともありますが、安田氏が一代で流通業の中に新しい形態を確立したのは、見事と言うしかないでしょう。
ドン・キホーテの特徴は、売上も伸びていて、さらに収益性が高いことです。百貨店も今でこそ売上が回復してきていますが、どうしても利益率は低くなってしまいます。利益率が低いために、時価総額が上がりません。これはスーパーという業態でも同じ問題を抱えています。
結局のところ、すでに時代は「百貨」ではないということです。流通業のチャンピオンである三越伊勢丹が、ドン・キホーテに時価総額で追い抜かれるというのは、そういうことを示しています。
安田氏は会長を退き、引退するとのことですが、本当に他人に任せることができるのか?と言うと、なかなかそうはいかないとも感じます。
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カルビーの2015年3月期は、連結営業利益が前期比約2割増の240億円前後になる見通しです。従来予想を15億円ほど上回り、6期連続で最高益を更新します。
国内は朝食などに食べるシリアル「フルグラ」の増産体制を整えた成果が出るほか、米国や韓国など海外の菓子事業の伸びも寄与するとのことです。
カルビーは2009年に米ペプシコと提携しました。株式を20%保有してもらい、ペプシコからの経営陣の派遣も受け入れました。
また同年、元ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人社長の松本晃氏がカルビーの会長に就任し、アメリカ式の経営スタイルへ転換を図りました。
このように外資に対してオープンな態度をとるのは、CPG業界(Consumer Packaged Goods)では非常に珍しい事例です。
ペプシコと事業提携、そしてイノベーションとコスト削減など、ペプシコの良いところを取り込んだ結果、見事に売上も収益も伸ばしてきました。
「海外スナック」や「シリアル」が伸びているのは、ペプシコが持つカルビーと同様のポテト系スナックの全米No.1である「フリトレー」との連携が大きいでしょう。提携が実を結びつつあるとわかります。
役員構成も非常に特徴があります。代表取締役会長・CEOの松本氏は、伊藤忠入社後、ジョンソン・エンド・ジョンソン社長を歴任した人物です。
そして社外取締役に、キッコーマン取締役会議長の茂木氏、カゴメ相談役の富岡氏、一橋大学・IMD教授の一條氏、フリトレー・トルコ、ペプシコの幹部ユームラン・ベバ氏など、かなり多様な構成になっていると思います。
ペプシコの株式保有率は決して高くありませんが、この提携は非常に上手く機能しています。
日本では非常に珍しい事例であり、今後もカルビーの動きには注目していきたいと思います。
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※この記事は4月5日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週はニコンの企業動向について解説をお届けしました。
市場分析を行うに当たって重要となるのが、主要プレーヤーの動きを注意深くウォッチすることです。
主要プレーヤーを中心とした情報収集は、業界構造の全体像や市場動向の理解に役立ちます。
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