大前研一「ニュースの視点」Blog

KON560「ブラザー工業・IoT・日本マクドナルド~ラーソン氏に立て直しは期待できない」

2015年3月21日 Internet of Things IoT ブラザー工業 マクドナルド

本文の内容
  • ブラザー工業 英ドミノ・プリンティングを買収
  • IoT 防げサイバー攻撃
  • 日本マクドナルド 新会長にラーソン氏

堅実経営のブラザー工業の飛躍に期待


ブラザー工業は11日、ロンドン証券取引所に上場する産業用印刷機大手の英ドミノ・プリンティング・サイエンシズを買収すると発表しました。買収額は10億3千万ポンド(約1890億円)で、ブラザーとしては過去最大となります。

ブラザー工業と言えば、かつてはミシンを主力としていました。その後、ミシン市場が縮小し厳しくなった時、見事にプリンター市場へ転換しました。キャノンなどの競合がいる市場に参入しながらも、プリンター、FAX一体機などでシェアを獲得し、堅実な経営を続けてきました。

売上高の内訳を見ると、やはりプリンティング事業がけん引していて、ミシンでは工業用のものが主力です。ドミノ・プリンティングは売上高が約600億円で、今回の買収額は約1800億円になっています。
おそらく、昨年の値段なら買収額は半額以下でしょう。

売却時は数字を「ドレスアップ」するものですから、この数字をそのまま鵜呑みにすることはできません。しかし、売上も利益も順調で利益も500億円を超える規模になってきていますから、この先ブラザー工業が飛躍していくことを期待したいと思います。

 

ハッカーのサイバー攻撃は脅威


日経新聞は、10日「防げサイバー攻撃」と題する記事を掲載しました。

パナソニックが、自動車の電子制御システムをサイバー攻撃から守る技術の開発に乗り出したと紹介し、化学工場や発電所でも不正侵入に備えた各社の研究が始まり、あらゆるモノがネットワークでつながる「IoT」の時代にはすべての機器が脅威にさらされ、対策は新たな局面に入ったとしています。

確かに指摘の通りですが、パナソニックが「開発に成功した」のではなく「開発に乗り出した」という段階では発表するほどのことでもないでしょう。

「IoT」と言うと、あたかも新しい概念のようですが、一昔前の「Machine To Machine(マシン・トゥ・マシン)」のことです。機械同士の自動制御は、工場ではすでに欠かせない技術になっています。

しかし、これをもっと広い領域で使おうとすると、確かに悪意のある連中によってハッキングされることによるリスクは非常に大きくなります。実際、北朝鮮は韓国の原子炉のハッキングを試みていると言われています。中国、米国、ロシアなどはお互いにやりあっているでしょう。

非常に重要な問題だと思います。この問題が解決されないと、ハッカーが世界をコントロールすることになりかねません。イスラム国、北朝鮮のような存在を考えても、非常に大きな脅威になることが分かると思います。

 

日本マクドナルドは、日本コカ・コーラを見習え


業績が悪化している日本マクドナルドホールディングスは10日、25日付で会長を退任する原田氏の後任に、米マクドナルドのアジア太平洋部門の副社長を務めるロバート・ラーソン氏を充てると発表しました。

マクドナルドグループの在籍年数は40年を超え、米国のほか欧州やアジアなどで店舗運営に携わってきた人物で、豊富な経験を生かしてカサノバ氏をサポートすると見られます。

ラーソン氏は40年を超えるマクドナルド歴で、現在58歳ということですから、学生のアルバイトなどからマクドナルドに関わっている人だと思います。残念ながら、このような経歴の人では、今の日本マクドナルドを立て直すことは難しいでしょう。

というのは、これまでのマクドナルドでは「拠点戦略」に基づくオペレーションが優れていれば出世できたからです。しかし、今日本のマクドナルドが抱えている問題は根本的に全く異なります。

日本のマクドナルドの競争相手は、ハンバーガーショップだけではありません。その戦いにはマクドナルドは勝利しています。しかし、コンビニ、うどん、牛丼など、その他の業態の競合が日本にはたくさん存在し、そこに勝たなければならないのです。

米国ではマクドナルドの競争相手はぐっと少ない状態ですし、米国人は毎日マクドナルドを食べても平気かもしれませんが日本人はそうではありません。この問題の本質に、マクドナルド本社は気づいていないのでしょう。

日本のマクドナルドが置かれた状況を考えると、例えばマクドナルドでおにぎりをメニューに入れるのか?うどんをどうするのか?そんな発想を持って戦略を練る必要が出てくるでしょう。ラーソン氏にそれを期待するのは厳しいでしょう。

良い事例になるのは、日本コカ・コーラです。日本コカ・コーラは、米国本社とは全く違う日本独自の状況に合わせた戦略を展開してきました。

伊藤園に対抗して「お茶」を、UCCに対抗して「コーヒー」を、ポカリスエットに対抗して「アクエリアス」を展開しました。だからこそ、日本コカ・コーラは生き残れているのだと思います。

米国では炭酸離れ、コカ・コーラ離れが起こっていますが、米国本社は日本コカ・コーラのようなことは何一つやってこなかったために、今苦労しています。対策は簡単で、日本コカ・コーラの真似をすれば良いのです。

マクドナルドは、米国本社も売上が伸び悩み苦労しています。本社のベテランを送り込んだから日本を立て直せると思うのは、大きな勘違いです。日本を理解していない証拠でしょう。対前年比で25%落ち込むというのは、非常事態だと言えます。

日本の問題を理解し、日本コカ・コーラと同じくらいのことを実行しなければ、立て直すことはできないでしょう。

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※この記事は3月15日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています

 

今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は日本マクドナルドの企業動向をお届けしました。同社は、従来の拠点戦略に基づく取り組みではなく、日本市場における本質的問題に対する戦略立案が求められています。

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