大前研一「ニュースの視点」Blog

KON551「マカオカジノ・ベネズエラ経済・米シェール企業~データの背景にある因果関係を考える」

2015年1月16日 カジノ シェール企業 ベネズエラ経済 マカオ

本文の内容
  • マカオカジノ 2014年の賭博業収入
  • ベネズエラ経済 中国から財政支援で合意
  • 米シェール企業 米WBHエナジーが破綻

低欲望社会に順応した日本の課題


マカオ政府は、2014年のカジノ総収入が3515億パタカ(約5兆3000億円)で、前年比2.6%減少したと発表しました。マカオのカジノ産業が02年の新規参入許可で拡大して以来、総収入が前年比でマイナスになったのは初めてとのことです。

私は以前からマカオのカジノはいずれダメになると伝えてきましたが、その通りの状況になってきました。今のところ、前年比2.6%減少という程度ですが、今後はさらに拡大していくのではないかと見ています。

マカオのカジノ産業は、中国の贈収賄によるマネーロンダリングに依存していました。収入の内訳を見ても、VIPバカラが大きく割合を落としているのは、まさに中国のマネーロンダリングが減少しているからです。

中国人はカジノでマネーロンダリングに成功すると、そのままお金を中国に持ち帰れないため、そのお金で周辺地域のマンションを購入していました。定期預金代わりに使っていたのでしょうが、今はこれも暴落しています。

日本でカジノを推進しようとする人も、闇雲に進めても失敗するのがオチですから、マカオの事例を見ながら研究するべきでしょう。

カジノとは少し業界が異なりますが、パチンコ業界の苦戦を見ると、日本という国がどのような状況にあるのか、感じ取ることができます。

一言で言えば、今の日本は「低欲望社会」です。パチンコに限らず、競馬、ボートレース、競輪など、全て同じです。そんなに無理してお金儲けしなくてもいい、面倒くさいじゃないか、と感じる若者が増えているのです。基本的に将来に対して「希望・望み」を持たない人が非常に多くなっています。

これには2つの大きな原因があると思います。1つは、彼らが10代を過ごした時期、日本がずっと低成長社会であり、そういう体験しか知らないからです。

将来像として描くのは、自分たちの親くらいであって、かつて松下幸之助氏や本田宗一郎氏などが「世界」を目指していた時代とは、上を見る感覚が違うのでしょう。

もう1つには、日本社会がデフレに対応したため、頑張らなくても「何とか食っていける社会」になっているからです。低成長にスライドした日本社会の中にあって、成長しようという意欲が失われたのだと感じています。

一方でスポーツの世界などでは、高梨沙羅氏、羽生結弦氏、錦織圭氏など、これまでは考えられないほど世界のトップレベルに達する人も登場しています。

これは「世界のトップ」が「見える化」しているからだと私は思います。企業においても、日本社会を活性化するためには、「世界のトップの見える化」が重要ではないでしょうか。

 

サウジアラビアが、米国のシェールオイルを破綻に追い込む狙い


ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は、中国北京で習近平国家主席と会談し、中国から200億ドル(2兆4000億円)の財政支援を受けることで合意しました。

輸出の9割を原油に依存するベネズエラは、原油価格が1ドル下落すれば歳入は年間7億ドル(830億円)減る構造で、大統領は対立してきた米国とも関係改善を探る動きを見せています。ベネズエラは反米国の立場でキューバに加担していましたから、キューバ問題にも波及していくと思います。

産油国それぞれの生産採算ラインと国家予算などを比較してみると、今の原油価格が続くと、様々な影響が出てくるのがわかります。

ロシアは生産採算ラインは30ドル程度ですが、国家予算維持には110ドル必要なので、予算を削るなどの工夫が必要でしょう。

ベネズエラは国家予算維持のためには、160ドル必要というほど「油に依存しきっている」状態ですから、相当に厳しい状況です。すでに市場はベネズエラは国家破綻するものと判断しています。

サウジアラビアの国家予算維持のためには、原油価格は90ドル程度必要になりますが、これまでの蓄えもあるので、しばらく現状の40ドル~50ドルでも持ちこたえられます。

ゆえに、サウジアラビアとしてはこのままの状況を継続させることで、生産採算ラインが100ドルを超える競争力が乏しい米国のシェールオイルを破綻させる狙いだと私は見ています。

先日、テキサス州でシェール開発を手掛けるWBHエナジーが7日までに米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請し、経営破綻しています。

おそらく米国シェールオイルの半分くらいがダメになると思います。今後も、生産採算ラインが80ドル~90ドル程度の企業が続々と破綻に追い込まれていくでしょう。

---
※この記事は1月11日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています

 

今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今回はマカオのカジノ産業について解説をお届けしました。

前年比でマイナス収入となったカジノ産業。大前は中国のマネーロンダリング減少に着目しています。

現象の背景では何が起こっているのか?

データを集めるだけでなく、その裏にある因果関係まで考えることが、原因を明らかにするために必要となります。

情報から仮説を考え、検証していくこと。このようなプロセスが、効率的な問題解決実行につながっていきます。

★2月1日受講スタート。最大10万円が還付される「奨学還付制度」実施中!
問題解決力トレーニングプログラム(大前研一総監修)
http://tr.webantenna.info/rd?waad=APlAjXMU&ga=WAAAAk-1

問題解決力トレーニングプログラム

問題解決力トレーニングプログラム

大前研一 ニュースの視点 Blogトップへ

  • メルマガ

    ニュースの視点メルマガ登録

最近の投稿記事

ニュースの視点メルマガ登録

ブログの更新情報

バックナンバー

  • facebook
  • twitter

各種ソーシャルメディアで様々な情報をお届けしております。

大前研一 ニュースの視点