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     週刊 大前研一 『 ニュースの視点 』
                        2005/09/09#80
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■□大前研一ニュースの視点□■

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「ロウアーミドル」クラス マーケットの現状(前編)


戦後、日本人は総じて豊かさを求め、ほとんどの人が自らを「中流(ミ
ドルクラス)」と位置づける社会となった。しかし現在、さまざまな要
因により伝統的ミドルクラスは崩壊しつつある。

産業構造も変革を求められる一方で、日本人が持つ「中流意識」そのも
のが、人々の足枷になっていることに気がつかなければならない。

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 ●伝統的ミドルクラスが減少し、「M字型」の構造が生まれる●

戦後一貫して、日本は「ミドルクラスをつくること」に集中してきまし
た。学校を出て就職。給与はロウアーからスタート。昇進と昇給を定期
的に経て、アッパーミドルでサラリーマンキャリアを終える。ミドルク
ラスの中を駆け上がるパターンが、日本社会の主流だったといえます。

産業構造やメーカー、サービス提供者の商品もミドルクラスへ向けられ
た結果、国民の大半が「自分は中流」と思う状況が生まれました。しか
し現在、この状況に変化が起こっています。アメリカの例を紐解いてみ
ましょう。

アメリカも戦後まもなくは、郊外のデビッドタウンに住み、往年のハリ
ウッド映画にみられるような「中流ファミリー」的な通念がアメリカ全
体を覆っていました。就業スタイルも、一人生につき一社。一社に骨を
埋めるスタイルです。

変化が訪れたのが20数年前。ヘッドハンティング、ジョグホッピングと
いう概念が生まれるとともに、古い概念が崩壊。そこで生じた変化が「
ミドルクラスの枯渇」。つまり、アッパークラスとロウアークラスそれ
ぞれにピークがある「M字型」の構造です。

事実、アンケートなどをとっても日本のように「自分はミドル」と思う
層が肥大しておらず、自らロウアー、アッパーとドライにみなす層が存
在しています。

こうした「M字型」の兆しが、今の日本でも顕在化。伝統的ミドルクラ
スが崩壊し、収入の格差が広がっています。

上場企業の年収の統計をみると、職業や企業規模により格差がある点が
目につきます。もっとも高年収なのはマスメディア。大手企業だと平均
年収が1千万円を超えますが、上場企業全体の平均はおよそ600万円です。
ここを境に、下がロウアーミドル、上がアッパーミドルとなるわけです。

収入格差をみると、90年代後半より個人の給与所得の格差が顕著になっ
ています。先ほど述べた600万円以下のロウアーミドル層は、全体の42%。
300万円以下のロウアー層はこのところ急激に増えて36%。ロウアーミド
ル層とロウアー層を合わせると80%。これは大きな市場です。

一方、600万円以上のアッパーミドル層は減り続け、16%。冒頭に述べた
「キャリアはアッパーミドルで終えたい」というサラリーマンの願いは
砕かれ、ロウアーミドルのまま定年を迎える人が急増することでしょう。
このことに人々が気づきはじめたのは、ここ1、2年です。

さらに小さいのは1千万円以上のアッパー層。10年前とほぼ横ばいで5%
です。ただし今後はアッパー層もさらに富裕化するでしょうし、ロウアー
層は昨今のデフレによってさらにロウアー方向へずれ込んでいます。両
極が離れ、くぼみの大きい「M字」の構造が今後も進んでいくと思いま
す。


 ●社会構造は変わっても、変わらない日本人のライフスタイル●

平均年収は、毎年下がりつつあります。その要因のひとつが、雇用形態
の変化。全体雇用は横ばいですが、10年前をピークに正規社員が減り続
け、非正規社員が増加。現在およそ1500万人いる非正規社員の平均年収
は、500万円以下が64%にも上ります。非正規社員が増え続ける以上、平
均年収は今後も下がっていくことでしょう。

こうした中で日本人の意識はどう変わったのか。まず20〜40歳代のサラ
リーマンのほとんどが、給料の伸びが見込めず、景気が悪いと感じてい
ます。裏を返せば、景気が良くなったら給料が上がるだろうと踏んでい
る。こういう素直な発想をするのは日本人をおいて他にはいません。自
分で上げるという発想が希薄です。

さらに「ゆとり」について聞いたところ、「ある程度ゆとりがある」と
答えた人が10年前は51%だったのに対し、現在では42%。確実に減って
きています。その原因の本質は給与ではなく「意識を変えていない」こ
とです。

ゆとりがない人の理由としては、「住宅ローン負担が重い」「自動車な
どの借金返済が辛い」「塾など子供の教育にお金がかかる」などが挙げ
られます。これらは、今の世の中において本当に必要不可欠な要素なの
でしょうか?

私にしてみれば、これら住宅、自動車、教育などに対する価値観は、す
べて伝統的ミドルクラスが存在していた時代の産物です。つまり、平均
収入が落ちているにもかかわらず、日本人はライフスタイルを変えてい
ないのです。

でも、どこかでやりくりをしていかなくては立ち行かない。そこで削る
のは、衣食住に関する基礎的支出です。逆に増やしたいと考えているの
は娯楽、そして貯蓄。しかし日本人の貯蓄は10年前、可処分所得の中で
25%を占めていたのに対して、現在では5、6%に落ち込んできています。
その一方で、住宅ローンには可処分所得の1/5を割いている現実がありま
す。

今の日本人にとって必要なのは、人生の設計そのものを変えることです。
ドイツでは20年ほど前から「ライフタイムフィナンシャルマネジメント」
の概念が一般化し、ほとんどの人が充分な時間と思考を注いで設計に取
り組みます。

私の試算では、日本の一般的なサラリーマンが住宅、自動車、教育など
旧来の概念を取り払い、フィナンシャルマネジメントを行えば、生涯で
5000万円の余裕が出ることになります。キャッシュフローはまだまだ良
くなるのです。

アメリカは、「必要なときだけ使う」発想、つまり「所有」ではなく「
レンタル」の発想がいち早く広まりました。レンタカー産業も巨大化し
ましたが、日本においては産業規模から実際の台数まで、非常に規模が
小さい。公共交通がこれほど発達した現在でも、月3万円近くも駐車場代
を支払い、車を所有する。地域によっては足代わりとして不可欠でしょ
うが、首都圏において本当に車が必要かどうかは疑問です。

アメリカ人の住宅に対する意識は「家が買えないならば賃貸でいいや」
とみなす傾向があり、日本のようにエンゲル係数を削ってまでも家を買
い、定年後10余年も払い続けるといった無茶な発想はありません。

また教育についても、アメリカでは高校を卒業した後、親が学費を払う
といったことはほぼ皆無。学生自らがローンを組み、卒業したのちに自
己責任で返却。大学卒業後6年で返済、といったパッケージがあったり、
スタンフォード大学などは学校の入り口にローンを組める銀行があるな
ど、システム化されています。

ただ今後の予測として、日本がこのままアメリカ型の発想になるとは思
えません。社会的抵抗が強いはずです。そこで現在の企業がすべきこと
は、一方でアメリカにならい、一方で日本の固定観念を破壊しながら需
要を作り出していくことです。

次回は、ロウアー・ミドルクラスが肥大する日本で、企業がとるべき開
発や戦略について実例を交えながら述べていきたいと思います。


                         −以上−
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今回配信いたしました「大前研一ニュースの視点」は、大前研一アワー
(スカイパーフェクTV ! 757ch)を抜粋・編集し、本メールマガジン向
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 ◆発行・編集 株式会社ビジネス・ブレークスルー LTE事業部
        『問題解決力トレーニングプログラム』事務局
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